ネクオロでした
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〝零の使い魔。〟 第三話
2007-06-13 Wed 23:47

人が持っている物を持っていないだけで苛められる。


子供の頃によくあるイジメは、どうやらこの国でも現存していたらしい。


なにかある度に傘を隠された俺としては、彼女の気持ちが痛いほどわかった。


だからこの言葉を送ろう。


無茶しやがって……。

〝零の使い魔。〟 第三話 <光>




 ルイズの部屋にお呼ばれされた俺。


 彼女がどことなく不機嫌そうなのは俺の気のせい……だと思いたい。


 おかしいなぁ、さっきまではすごく機嫌よさそうだったと言うのに。


 女の子の部屋に入るのはこれが生まれて初めてだし、嫌がられないよう扉に近い位置に立つことにした……いつでも出て行けるように。


 ルイズはベッドに腰かけ、複雑な表情で俺のことを見つめていた。


 ここに来る途中、人と擦れ違う度にびくりとしてしまったことがバレてしまったのかもしれない。


 それにしても人が横を通る度に思わず睨んでしまうとは……我ながら情けないと言うか何と言うか。


 ルイズやキュルケと普通―――とまではいかないけど、それなりに会話できていたから多少は人見知りが払拭されたと思ったが気のせいだったようだ。


 さて……彼女の話によると、ここはドイツのハルケギニアという都市、その都のトリステイン王国という場所らしい。


 日本でいう、県庁所在地みたいなものだろう。


 王国と聞いた時は驚いたが、英国にも女王がいることを考えるとそれほど珍しいことでもないと自分を納得させた。


 うぅ、うら若き少女の部屋を視界に収めているのは酷く恥ずかしい。


 この歳で初心だと思われるのも情けないので、扉を見ていることにした。


 あぁ、この木目に癒されるのは俺が日本人だからだろうか。


 いきなり日本からドイツに移動したカラクリは未だに不明。


 しかし、どうやらその技術をこの国では「召喚魔法」というらしい。


 一瞬、各国に迷惑をかけている将軍様在中の国が得意としている「技」を連想してしまった俺は間違っていないと思う。


 ……平たく言うなら、俺はルイズに拉致されたということになるのだから。


 でも、おかしなことに、その件に関して怒りの感情が湧き上がらないのである。


 今になって思い返せば、俺があの広場にやってきた時、ルイズは周囲の面々から非難されていた。


 あの時は彼らなりの事情があるのだと思っていたが、実は誤って俺を拉致したことを責められていたんじゃないだろうか?


 ルイズが意図して俺を拉致したんじゃないことは、広場の態度から明らかだ。


 あの時に彼女が見せた悲しげな表情は俺に対する謝罪だったのかもしれない。


 まあ……こう見えてもフェミニストを自称している俺である。


 無事に日本に帰してくれるなら、今回の件は不問としようじゃないか。


 長い目で見ればいい経験したということになるかもしれないし。


 帰してくれる次いでに、あの飛行機械を一つくれるとありがたいとか思ったり。


「……悪かったわね、魔法の一つも使えなくて」


 ……は?


 妄想から帰還すると、どうしてかルイズが俺を睨んでいた。


 しかもどういうわけか泣きそうだ。


「あんたも実は呆れているんでしょう!? 貴族の癖にフライ一つ使えない私のことを!」


 一体どういう流れでそうなったのか。


 女の子の癖に―――って、これは偏見か……兎も角、やたらとすごい剣幕でルイズは俺に迫ってくる。


 一応、首を左右に振ってみたが、彼女の怒りはそれくらいじゃ収まらないようだ。


 むぅ……魔法? フライ?


 フライというとあの空を飛ぶ飛行機械のことだよな。


 この国では機械=魔法という訳になっているのか……興味深い。


 そう言えば、キュルケとおかっぱ少女は飛行機械を持っていたのに、ルイズはそれを所有していなかった。


 だから彼女の部屋まで歩いて行くことになったのだが……もしや。


 ―――ルイズの家は「貧乏」だということか!?


 ものすごい事実に気づき、愕然とする。


 やたらと貴族というからてっきり金持ちだとばかり思っていたが……。


 だが、武士は食わねど高楊枝、という格言もあるくらいだ。


 貴族も武士もプライドが高そうだし、彼らの言う平民の俺には知られたくなかったのかもしれない。


 特に子供には辛いだろう。


 多くの友達が持っているのに、自分だけがそれを持っていないという事実は。


 その気持ち、俺にはよぉくわかる。


 周りにいる同級生全員がポケ○ンを持っていたと言うのに、俺は……。


 いや、思い出すのはよそう。


 兎に角、ルイズの気持ちが痛いほど理解できる俺が彼女を放って置ける筈がない。


 この場合どんな言葉をかけるべきか頭の中で検索する。


 どういうわけか、ここに来てから俺の口下手レベルが五ほど上がった気がするのだ。


 慎重に言葉を選ばないと、要らぬ誤解を招く恐れがある。


「それが……」


 家の事情なら仕方がないし……。


「どうして……どうして私ばっかり―――え……っ?」


「それが……どうかしたか?」


 タイミングを計ったつもりが、まさか被ってしまうとは……迂闊。


 急いでもう一度言い返したけど、大丈夫だったか?


 びくびくしながら覗き見れば、ルイズは俺の顔を呆然として見つめている。


 ……怒っていないだけよしとしよう。


「で、でも!? 魔法が使えない貴族なんておかしいじゃない! そのせいで私は皆から『ゼロのルイズ』って馬鹿にされて……」


 その時のことを思い出しているのか、ルイズの愛らしい顔が苦渋に歪む。


 何と言うか……貴族というのも色々と大変みたいだ。


 貧乏だからと言って馬鹿にされ、機械をうまく扱えないからと言って馬鹿にされる。


 まったく、飛行機械を買うお金がないからと言って同級生を苛めるとは……。


 と、心の中では強気の俺である。


 ちょっと長い言葉になるが……頑張ってみるか。


「別に……君に非があるわけじゃない。それでも君が……現状に満足していないのなら……言ってほしい」


 お……惜しいっ!


 本当ならこの後に「日本に戻ったらなけなしの貯金を下ろしてプレゼントしてあげる」と続く筈だったのに……。


 いや、でもある意味命拾いしたと言うべきか。


 極小サイズの飛行機械だ、十万二十万で買える値段じゃないだろう。


 三万じゃ……さすがに売ってないよなぁ。


 バイトしようかなぁ、でもこの口下手じゃちと辛いよなぁ。


「ホント……?」


 今度のルイズは捨てられた子犬のような目をしていた。


 そんなにあの飛行機械がほしかったのか……。


「……ああ」


 多少気圧されながら頷く。


 皆が持っているものと同じものがほしい。


 そんな子供らしいお願いに、ついつい頬の筋肉が緩んでしまう。


 まあ、それがどの位表情として出ているかはわからないが。


 それにこんな顔されたら、「値段によっては」なんて無粋なことは言えないじゃないか。


 飛行機械……中古で売っているといいけど。


 どこか嬉しそうに何か言っているルイズの声を少し遠くに感じながら、俺はまだ見ぬ莫大だろう出費に想いを馳せるのだった。






〝零の使い魔。〟 第三話 <闇>






 ルイズにとって幸いであり不幸だったのは、フライの魔法を使わずに歩いて部屋まで帰った彼女に対してダンケが何一つ口を利かなかった点だろう。


 不思議に思うわけでも馬鹿にするわけでもなく、それが当然だと言うようにルイズの背を追いかける使い魔・ダンケ。


 それはまるで、ルイズが魔法を使えないことを享受しているようにさえ感じられる。


 時折、周囲を窺うように前髪の隙間から鋭い眼光が飛ぶ。


 戦場を駆けた経験があるのか、彼らの側を人が通る度にその眼光はより鋭さを増していた。


 使い魔の役目の一つであり、もっとも大事な使命である「主をあらゆる敵から守護する」を、彼女の使い魔は命令されるわけでもなく遂行しているのだろう。


 その秘めたる覇気に中てられた別の使い魔が暴れるという珍事にも遭遇したものの、ルイズとダンケは無事に彼女の部屋に辿り着くことができた。


「……特別に入っていいわよ」


「…………」


 ルイズに言われ、ダンケは周囲に視線を飛ばした後、部屋に足を踏み入れる。


 そしてそこが定位置だと言うように、扉から少し離れた地点で歩を止めた。


 そこは丁度、ベッドの上に腰かけるルイズと扉の中間地点。


 もし仮に賊が彼女の命を狙った場合、己が身を挺して守護できる位置だった。


 ギシリ、とルイズの奥歯が嫌な音を立てる。


 自分の使い魔に不満があるわけではない。


 むしろ、四大元素に関わる魔法を何一つ使えない自分が召喚した使い魔としては破格だと捉えてもいいだろう。


 今だって、彼女を守ろうとしてくれているのだから。


 ダンケがどれだけの戦闘能力を有しているかは定かでない。


 さすがに戦闘となるとメイジには敵わないだろうが、間違ってもそこらの盗賊に遅れを取るような真似はしない筈だとルイズは思った。


 では、彼女は何に対して苛立ちを感じているのか?


 その答えは実に簡単明快、自分自身に……である。


 ―――メイジの能力を知るには使い魔を見ろ。


 メイジの力量=使い魔という公式が成り立っているこの世界の基準に当てはめれば、確かに「ゼロのルイズ」が平民を召喚したのは順当と言える。


 平民とは貴族のように力も権力も有していない、メイジから見れば路傍の石にも等しい存在なのだから。


 そう……それが「ただの」平民ならば。


 ダンケがただの平民だと訊かれれば、ルイズは即行で首を横に振るだろう。


 いや、彼女だけではない。


 召喚の儀が執行されたあの場にいた者の大半が、彼が眼光一つで貴族を無力化させた場を見ていた者ならば全員が、彼女と同じ答えを出すに違いない。


「…………」


 ちらりとダンケに視線を向けるルイズ。


 青年は閉ざされている扉に意識を集中させているようだ。


 不意の襲撃者を警戒しているのかもしれない。


 そう認識した途端、またしても彼女の奥歯が不協和音を奏でた。


 ダンケは基本的に表情というものを示さない。


 彼が「哂う」のを目撃したのは、ルイズが彼を召喚したあの時だけだ。


 ダンケが何を思ってあのような顔をしたのかはわからない。


 ただあの時のルイズが感じたのは、言いようのない恐怖だった。


 再び、歯がギシリと音を立てる。


 もしかしたら、心の中では魔法の使えない自分に呆れているんじゃないか。


 何故そう思ってしまったのかはわからない。


 冷静になって考えれば、彼女を誹謗中傷から庇ったダンケがそのようなことを考えているとは到底思えないのだが、この時のルイズは漠然とした不安に心を乱されていた。


 そう、全ての意味でルイズの使い魔は、彼女の常識の外に身を置く者だったから。


 不機嫌さを押し隠そうとせずに、ルイズはダンケに簡単なこの国の仕組みを伝える。


 これが幻獣や動物ならばこのような真似はしなくてもいいが、さすがに人間相手に何も説明なしというわけにもいかないだろう。


 ダンケの着ている衣服をルイズは目にしたことがない。


 これはつまり、少なくとも彼女の知らない土地で青年が過ごしていたということだ。


 ならばこの国のルールくらい教えておかねば、主たる自分が要らぬ迷惑を被るかもしれない。


 ルイズが語るこの国の常識を、ダンケは黙って聞いている。


 その雰囲気から、青年が彼女の話に多少は興味を持っているのが感じられた。


 一通り話し終えると、ルイズは側にあった水差からコップに水を注ぎ、喉を潤す。


 視線を戻した時、使い魔は再び扉と対峙していた。


 それがまるで、彼にとっての自分は守る対象でしかないと思われているようで……。


 気づいた時にはルイズは、


「……悪かったわね、魔法の一つも使えなくて」


 と、暗い言葉を吐き出していた。


 彼女の声に反応して、ダンケが振り返る。


 案の定、その顔に張りついていたのは虚無だった。


 それが却ってルイズの神経を逆撫ですることになる。


「あんたも実は呆れているんでしょう!? 貴族の癖にフライ一つ使えない私のことを!」


 ベッドから腰を上げ、ダンケに詰め寄る。


 彼女の中の冷静な部分が、これは単なる八つ当たり、いや、ただの子供の癇癪じゃないかと告げている。


 しかし、ルイズは止まらない、止められない。


 一度口火を切ってしまった以上、言葉の波は堤防をいとも容易く破壊して流れ出して行く。


 謂れのない八つ当たりを、ダンケはただ黙って聞いていた。


 反論することも、呆れることも、怒ることもなく、しかし視線だけは決してルイズから逸らさずに。


 そしてルイズに疲れが見え始めた頃、そっと呟いた。


「それが……」


「どうして……どうして私ばっかり―――え……っ?」


「それが……どうかしたか?」


 そう告げるダンケの瞳には、純然たる疑問の色しかない。


 貴族が魔法を使えない。


 それは何よりも恥ずべき行為に他ならない……だと言うのに。


「で、でも!? 魔法が使えない貴族なんておかしいじゃない! そのせいで私は皆から『ゼロのルイズ』って馬鹿にされて……」


 自分でも声が上擦っているのがはっきりとわかった。


 さっきとは別の意味で顔に血液が集中して行っているのが感じ取れる。


 ダンケは思案するように一度瞳を閉じた後、その双眸に強い光を宿して宣言した。


「別に……君に非があるわけじゃない。それでも君が……現状に満足していないのなら……言ってほしい」


 ―――俺が現状を切り開くための剣となろう。


 ルイズの耳には何故かそう届いた。


 そしてダンケの放った言葉の中にあった「君に非があるわけじゃない」という語句。


 今まで彼女は、魔法が使えないのは自分の努力が足りないからだと思っていた。


 両親だけではなく、姉二人が優秀なメイジだということもその意識に拍車をかけていたと言ってもいいだろう。


 だがしかし、あろうことかこの使い魔はそれを真っ向から否定した。


 悪いのは君じゃない、君はよくやっている。


 言葉こそ足りないものの、そう言われているような気がして。


 形として現れていない努力を、報われることのなかった日々を、生まれて初めて認められたような気がして。


 溢れそうになる涙を懸命に堪えつつ、ルイズはダンケを潤んだ瞳で見上げる。


「ホント……?」


 少女の問いに、その使い魔は広場で見せたものとはまるで違う、優しい微笑を浮かべて、


「……ああ」


 何の淀みもなく肯定した。


 そこに迷いなどない、あるのは鋼にも負けぬ固い信念のみ。


 ならば、彼の主たる自分がいつまでもクヨクヨしていてはあまりに様にならない。


 ダンケに背を向けて目尻に溜まった涙を拭うと、ルイズは再度振り返る。


 既にその顔からは、憂いの色は立ち消えていた。


 切り替えが早いのは、彼女が他者に誇れる長所の一つだ。


 まあ、今度は大量の朱色がルイズの頬を占領していたが。


「ま、まあ当然よね! 私はあなたのご主人様なんだから! ……その、でも心配してくれたのは事実なわけだし、一応、礼だけは言っておくわ。……ありがと」


 この場に普段の彼女を知る者がいたなら、きっと腰を抜かしていたことだろう。


 あのルイズが、人に素直に礼を述べることなど年に一回あるかないかのことなのだから。


 しかも相手は使い魔、おまけに平民である。


 先の自分の発言が余程恥ずかしかったのか、ルイズはまたしてもダンケに背を向けた。


 これは背中を預けるほど信頼しているということに他ならないのだが、余程焦っているのかルイズがそれに気づくことはなかった。


 火照ってしまった頭を冷やすために水差に手を伸ばすルイズ。


 このままでは顔から火の魔法を放ってしまいそうだ。


 しかし、先ほどの分で最後だったらしく、透明な瓶の中には水滴しか残っていない。


 ルイズは小さく「むぅ」と呻ると、背を向けたまま使い魔に指示を出した。


「……ちょっと水を汲んできてちょうだい。そこのバケツ一杯分だけでいいから」


 そして、早く行けと言うように後ろ手を振る。


 しばし間を置いて、バタンと扉の閉まる音が響く。


 使い魔が水汲みに行ったことを恐る恐る確認すると、ルイズは大きく息を吐いた。


 そのままボフンとベッドの上に倒れ込む。


 常に優雅であることが原則の貴族としては目も当てられぬ所業だが……今回ばかりは仕方がないだろう。


 ルイズは顔を隠すように愛用の枕を押し当て、小さく呟いた。


「……ありがとう、ダンケ」

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この記事のコメント
ルイズ勘違いしすぎ。

これからさらに斜め上に勘違う訳ですね?

ヤマグチ先生より楽しめそうな気がしてきました。
2007-06-14 Thu 00:20 | URL | ルミナス #-[ 内容変更]
光と闇を合わせて読むからこその面白さ!堪能させてもらってます。ダンケのフライの魔法に対する考えは特に良かったです。
勘違いで始まる二人が、これからどう生き抜くのかが楽しみです。
2007-06-15 Fri 22:54 | URL | ガリレオ #KGAhWzec[ 内容変更]
近いうちにネクオロさんがまた更新するらしいぞ。
また、変えられが読めるーーーー!!!!
2007-08-10 Fri 15:01 | URL | 予告者 #-[ 内容変更]
とても続きが気になります。
更新期待してます!
2007-08-12 Sun 18:18 | URL | shi #8zie0QSw[ 内容変更]
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