ネクオロでした
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零の使い魔。 第四話 ~光~
2007-08-30 Thu 21:28

まあ、なんというか……うん、頑張れ。病気に負けるな。


あ、あと、ツンデレは文化だから。


<ダンケ>



<ゼロの使い魔。>  ~光~






 バケツを持って日本語学校(だろう、多分)の中をうろつく不審者、つまり俺。


 そんなに日本人が珍しいのか、俺と擦れ違う全ての人間が訝しげな視線を飛ばしてくる。


 ……ちょっと傷ついたのは俺だけの秘密だ。


 空のバケツ片手にうろちょろ。


 散策してわかったのはあれだけ機械技術が発達しているというのに、最も大切だろう日常生活にそれが生かされていないということだ。


 石造りの建物は風情を重視しているということで理解できる。


 でも、コンセント一つないのはさすがにやり過ぎだろう。


 俺が今歩いている廊下の端では、数人のメイドさんがモップがけをしていた。


 掃除機くらい用意してあげても罰は当たるまいと思ってしまう俺は、相当日本の機械生活に慣れてしまっていると見える。


 と言うか、随分とメイドらしい格好のメイドさんだなぁ。


 ミニスカを取り入れているわけでもなく、猫耳がついているわけでもなく。


 ガ○ダムで例えるならジ○のポジションだ。


 ジ○キャノンでもジ○カスタムでもない、ノーマルのジ○。


 この古臭い建物にマッチしていると言えば確かにその通りだけど。


 これも観光客対策の一つだろうか?


 なんて考えながら歩いていたら、いつの間にか外にいた。


 向こうでは一人のメイドさんが噴水(?)の水をバケツに汲んでいる。


 おぉ、あそこで水を汲めばいいんだな。


 邪魔にならないようそっと近づき、予想以上に透き通っている水にバケツを浸す。


 ライオンみたいな動物の口から水が出るという斬新なデザインの噴水だ。


 正直、もっと別の部分にお金をかけるべきだと思う……コンセントとか。


 どうやら、ここで初めてメイドさんは俺の存在に気がついたらしい。


「―――ひゃっ!?」


 という、可愛らしい悲鳴をあげて尻餅をついてしまった。


 そして彼女が持っていたバケツはその拍子に空を飛び、俺の頭に落下。


 多少中身が入っていたらしく、哀れにも濡れ鼠になってしまいました……俺が。


 ……うぅ、冷たい……。


 滝涙(あくまで心の中で)を流しながら、被っていたバケツを取る。


 再起動を果たしたメイドさんが慌てた様子で立ち上がった。


「す、すすす、すみません!? す、すぐに拭きますから!?」


 顔を真っ青にして側にあった布切れで俺を拭こうとするメイドさん。


 俺は彼女の細い手首を掴んでその行動を阻止する。


 さすがに、それで拭かれるのはちょっと……嫌です。


 心の中で苦笑する。


 メイドさんの手には黒ずんだ雑巾が一枚、保守……じゃなく保持されていた。


 こういう展開はアニメでしかお目にかかれないと思っていたけど、実際は意外と身近に転がっているものらしい。


「あ、ああ、あの……っ」


 そしてどういうわけか泣きそう―――と言うより、既に泣いてしまっているメイドさん。


 近くで見ると、このメイドさんの可愛らしさがはっきりとわかった。


 ……むっ、この娘は……日本人か?


 黒い髪に黒い瞳、顔立ちもどことなく東洋人の面影がある。


 違う点を挙げるとするなら、その肌が欧米人のように真っ白だということか。


 あと、胸が大きい……のは関係ないか、近頃の日本人だってスタイルはいいし。


「わ、私の顔に何かついていますか!?」


「……いや」


 危ない、危ない。


 ついつい凝視してしまったZE☆ やっちゃったZE☆


 ……よそう、すごく阿呆らしくなってきた……やばい、泣きそう。


「あ、あのぉ……手を……その……」


 ……手?


 ついと視線を下げれば、未だにしっかりと彼女の手首を握ってしまっていた。


 お、おおっ!? 女の子の手を握ったのは何十年ぶりだろう―――じゃなくて!


 動揺を悟られないよう、努めて自然な動作を演じて手を離す。


 メイドさんは何故かほっとしたような表情をしていた。


 そ、そんなに俺に手を握られていたのが嫌だったのか……。


「……すまない」


 謝罪の言葉はいつも通り、無機質で硬いもの。


 あぁ、俺は本当には「ごめんなさい」と言いたかったのに……。


 俺の頭の中にあるだろう言語中枢の翻訳システムが故障でもしているのか。


 まさか……最初から搭載していないとかはないよね……?


「い、いえ、私の方こそすいませんでした。……そ、そんなことより大丈夫ですか!? そのままでは風邪をひいてしまいます! すぐに拭かないと……あ」


 ここでようやく自分が握っている布の正体に気づいたらしい。


 弾かれるようにして、手にしていた雑巾を噴水の縁に置いた。


 白い肌がすごい勢いで赤くなっていく。


「す、すみません! わ、私ったらついうっかり……。すぐに綺麗な布巾を持ってきますから!」


 そう言って、両手をパタパタと振るメイドさん。


 ……何と言うか、和むなぁ。


 こう、言い方が悪いような気もするが、小動物を相手にしているような錯覚に陥る。


 まあ、さすがにいきなり頭を撫でるような真似はしないが。


 メイド少女はワタワタしながら右往左往していた。


 焦りがピークに達しているのかもしれない。


 俺も人に囲まれたりすると、きっとああいう反応をしてしまうんだろう。


 その時、建物から一人の少年が顔を出した。


 黒いローブ(マント?)を五芒星のタイピンで止めたその格好には、心当たりがある。


 そう、ルイズと同じ格好だ……あ、当然だけどスカートは穿いていない。


「おい、メイド! 一体いつまで待たせるつもりだ!? さっさと部屋の掃除をしろと言っただろう!?」


 少年がメイドさんに向かって怒鳴る。


 にしても何と言う……、何と言うふてぶてしい態度だ。


 今の言い方、さすがに温厚な俺でもカチンと来たZE☆


 生のメイドさんを見られるだけで幸せだと言うのに、これだから最近の若い奴は。


 ……教育が行き届いていないんDA☆ZE☆


 本当にこれで最後にしよう……何だか自分に腹が立ってきた。


「あ、はい! すぐに参りますので!」


 答えるメイドさんの視線は、窺うようにして俺に注がれていた。


 どうやら、どちらを優先すべきか迷っているようだ。


 あの少年の態度にはイラッとくるが、ここは大人の慈悲を持って我慢する。


 かける言葉は既に決まっていた。


「俺のことは……いい。……行ってくれ」


 やたらと威圧的な言葉になってしまったけど……意味が伝わるだけマシか。


 本当は「俺のことは別にいいから、もう行っていいですよ」と言いたかったのだが。


「で、でも……」


 メイドさんはそれでも迷っている。


 彼女の前には俺、後ろにはやたらと態度の大きい少年。


 前門の虎、後門の狼とはこのことか。


「―――っ! メイド、いい加減にしろよ!? 俺はこれから彼女と大事な用事があるんだ! もし彼女とうまくいかなかった時は、お父様に言ってお前をクビにしてやるからなっ!?」


 ヒステリック気味に少年が叫んでいる。


 部屋の掃除くらい自分しろよと言いたいが、どうやら彼の父親はかなりの権力者のご様子。


 触らぬ神に祟りなしというように、放っておくのが最良だろう。


 そして、知らず及び腰になっていた俺は……真性のヘタレだと判明した。


 いや、それは最初からわかっていたことだけど。


 でも……


「そ、そんな……」


 と、俺の前で顔を青くしながら震えているメイドさんを捨て置くのはあまりに忍びない。


 両手で口許を押さえたメイドさんは、その大きな黒い瞳からぽろぽろと大粒の涙を零している。


 良心の呵責に耐えられないとは、まさに今の俺の状態だろう。


 ……ある意味、この事態を招いたのは俺のせいであるわけだし。


 ま、まあ、俺は拉致されたとは言え、別にここで働いているわけじゃない。


 多少は口を出したところで……大丈夫な筈だ、きっと。


 どっちにしろ、度を越した弱気な癖にフェミニストの俺にはかなり辛い状況だが。


 とりあえずは、穏便に声をかけるところから始めるとしましょう。


 あの、ちょっといいですか……っと、このあたりが無難か。


 バレないように小さく深呼吸して……。


「……おい」


 ……あ。


 またやっちゃったんだぜ。


「ん? なんだ、何かと思ったら『ゼロのルイズ』が呼び出したという平民の使い魔じゃないか。はは、さすがは平民。どうやら貴族に対する礼儀も持ち合わせていないようだな。つくづくあの駄目ルイズの使い魔らしい」


 うぅっ、言わせておけば……。


 自分の吐いた暴言に気づき、反省する偉い者もいれば、目の前の奴のように嫌らしい笑みなど浮かべながら暴言を吐き散らす奴もいる。


 彼の額に微妙に見える青筋はこの際、スルーすることにした。


「し、躾のなっていない使い魔め、俺がルイズに代わって躾といてやる!」


「ひっ!?」


「…………」


 懐から指揮棒を取り出す少年。


 短い悲鳴をあげて後ずさるメイドさん。


 状況に着いていけず、ただ仁王立ちするしかない俺。


 よくはわからないが……謝るか。


 あんな感じの指揮棒をルイズが持っていた気もするし、何よりここは靴の裏に飛行機械を設置するほど科学技術が発達している国だ。


 あの一見ただの指揮棒にしか見えない棒でも、何かとてつもない兵器かもしれない。


 事実、棒を見たメイドさんはすごく脅えている。


 と言うか、俺の腕を掴んで「あ、謝らないと……」と弱々しい声音で言っている。


「…………」


 目線をメイド少女に合わせ、俺は小さく頷いた。


 大丈夫、今から誠心誠意、ごめんなさいするつもりだから、という意味を込めて。


「……無理はしないでください」


 お、どうやらしっかりと伝わったらしい。


 小声でそう言うと、メイドさんは俺の腕を離してそっと距離を取った。


 ……何故だろう。


 特攻隊に配属された息子を見送る母親と、彼女がダブって見えるのは。


「ふ、ふんっ! 素直じゃないところは主人と同じらしい」


 馬鹿だなぁ、あれはツンデレという文化ですよ、とは口が裂けても言いません。


 これ以上、現状を悪化させようとは到底思わないので。


 ひ弱な自分に心の中で溜め息を吐く。


 俺と少年の距離は五メートルほど。


 これだけ離れたまま頭を下げても、向こうは謝罪として受け取ってくれない気がする。


 よっぽど両親に甘やかされて育ったみたいだし。


 確かに俺の中の貴族のイメージは、あの少年をそのまま大人にすればうまい具合に適合するな。


 悪い意味で、あの少年は貴族らしい貴族なんだろう。


 正直、ルイズには今の性格のまま大人になってほしいと切に思った。


 現実のツンデレは兎に角貴重なのである。


 少年の握る棒から目を逸らさないようにしながら、恐る恐る前に進む。


 もしあの棒に何かしらの動きがあった場合、俺はすぐにその場で土下座するつもりだ。


 ゆっくり……ゆっくり。


 少年を触発しないよう、慎重に歩を進めるのが肝要だ。


 ―――パキリ。


 不意に足元で音が鳴った。


 反射的に下を向いてしまう。


 な、なんだ!? って……ただの枯れ枝か……ふぅ、驚かせやがって。


 視線を元に戻すと、どういうわけか少年が慌てている。


 何事かと視線を後ろに向ければ、物干し竿に吊るされたシーツが一枚燃えていた。


 うわぁ、何と言う小火(ボヤ)。


 水溜りか何かがレンズとなって光を集め、それが運悪く側にあったシーツに当たって着火してしまったんだろう。


「お、お前……何をした!?」


「…………」


 は?


 一体この少年は何を言っているんだろう。


 む、もしかしてあの火を点けたのが俺だとでも思っているのか?


 だとしたら……まったく、どう見積もっても十メートル以上離れているあの場所に、どうやったら俺が着火できると言うんだ。


 責任転嫁も甚だしい……っとと、まずい、思わず睨んでしまった。


 落ち着け、落ち着け。


 まずはこの少年に謝るのが先決だ。


 幸いにも、不審火は通りがかった人がどうにかして消してくれたようだ。


 視線を少年に戻して、もう一度振り返った時には火は消えていた。


 側にいるのは……広場にいたおかっぱ(少し違うか?)少女じゃないか。


 彼女が消火してくれたのか、後でお礼を言っておかないと。


 でも、一体どうやって火を消したんだろう? 近くに消火器でもあるのかもしれんな。


「へ、平民の癖に生意気だぞ!? 俺に楯突くということは、俺のお父様に楯突くと同じことだって知っているのか!?」


 まったく、さっきからこのボンボンは意味不明なことを。


 わかっているから、謝ろうとしているのに。


 おわっ、闇雲に棒を振振り回さないで! 危ないでしょう!?


 しっちゃかめっちゃか指揮棒を振り回す少年の顔色は、やたらと悪かった。


 ……もしかして気分でも悪いのか?


「く、来るなっ! 来るなって言ってるだろ!?」


 そう言われても……困る。


 見るからに体調の悪そうな人を放って置けるほど、俺は良心を捨ててない。


 つか、ここで見捨てたらあのメイドさんに冷血漢と思われてしまう可能性があるし。


 可愛い女の子に良く見られたいというのは、男なら誰しもが持つ感情だと思う。


 さて、とりあえず……あの危ない棒をどうにかしたい。


 何が出るかわからない以上、びくびくしながら少年の手から杖を強奪する……つもりだったが、あっさりと失敗した。


 無節操に動く少年の腕を掴もうとしたまではよかった。


 ところが運悪く俺の手が少年の腕に強い力で当たってしまい、結果的に彼の腕を叩いてしまったのだ。


 ポーン、という感じで少年の手から離れる指揮棒。


 仮にあれが精密機器だった場合、壊れた時に請求される値段はお幾らだろう?


 第一、俺は既にルイズに飛行機械をあげる約束をしているんだ。


 これ以上の出費は何としてでも避けたかった。


 宙を舞う棒を睨み、軽く手を伸ばす。


 落とさないかとひやひやしたが、今度はうまいこと棒を掴むことができた。


 ふぅ……やれやれだぜ。


 心の中で額の汗を拭い、ほっと安堵の息を吐く。


「は、はひぃぃっ!?」


 情けない声が聞こえたので首を動かせば、少年が腰を抜かしていた。


 心なしか、さっきよりも顔色が悪くなっている。


 お、おいおい、本当に大丈夫かよ。


「……そこまでにしておけ」


 大体、お前はこれから彼女と会うんだろう?


 なのにそんなに青い顔していたら愛想を尽かれてしまうぞ、という意味をこめて苦笑を浮かべる。


 この少年、俺が思っている以上に病弱なのかもしれないな。


 今だって小刻みに震えているし。


「長生きしたいなら……尚更だ」


 あぐらをかくような体勢になっている少年の足元に、棒をそっと置いてあげる。


 こんな状態じゃ、無茶をしようとは思わないだろう。


 色々と腹が立つ言動の目立った彼だが、あの捻くれた精神はきっと病弱な体が原因なんだろう。


 両親が彼を甘やかせて育てたのも、そんな体に産んでしまった負い目を感じていたからだと考えれば納得できる。


 貴族って言うのも……色々と大変なんだな。


 あ、でも言っておくべきことはしっかりと伝えておかないと。


 腰を落として少年と目線を合わせる。


 どうしても睨むような感じになってしまうのは、この際勘弁してほしい。


 口の中で発声練習……よし、完了。


「……あまり迷惑をかけるな。……いいな?」


 ついと視線でメイド少女を示してから、再び少年に戻す。


 コクコクとやたら素直に頷く少年に、思わず笑みが零れてしまう。


 なんだ、可愛いところもあるじゃないか……まあ、男に走る趣味はないが。


 ハンデを背負っているけど挫けずに頑張れ、という意味で少年の頭に手を置いてから立ち上がる。


 昼間に幽霊でも見たような顔をしているメイド少女が気になりつつも、俺は手早くバケツに水を汲むと踵を返した。


 あの少年もわかってくれたようだから、クビ云々の話はなかったことになる筈。


 俺は自分の役目を十二分に果たしたと言える。


 べ、別にここにいたら不審火の容疑者にされそうだ、とか考えてないからね!

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この記事のコメント
ツンデレで締めたwww
2007-08-31 Fri 21:42 | URL | #-[ 内容変更]
なんというニヤニヤw
続きが気になりますw
2007-08-31 Fri 23:51 | URL | #-[ 内容変更]
おっ! 更新されてる・・・・って、来客数一万五千ってどういう事だ!!
まぁ、それだけ愛されてるって事だ。がんばれよっ!相棒!!
2007-09-01 Sat 10:40 | URL | 喪々太郎 #-[ 内容変更]
あまりにもニヤニヤ。
頬の緩みが止まりません。
更新復活感激です。
どうか無理にならないペースで頑張ってくださいませ。
2007-09-01 Sat 12:42 | URL | スカサハ #d44vb1iY[ 内容変更]
すごい面白いです!
2011-04-03 Sun 19:21 | URL | メイズ #JalddpaA[ 内容変更]
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