ネクオロでした
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零の使い魔。 ~第十話~
2008-02-14 Thu 16:33
財布が重いのは嬉しいけど、それが小銭ばっかりだと知った時は落ち込むよね。

                                         <ダンケ>

これも慣れなのかしら……?

                                          <ルイズ>

……神の盾。

                                          <タバサ>
                        零の使い魔。


  自分の使い魔『シルフィード』の背びれを背もたれにして、タバサは本を読んでいた。
 無論、風系統の魔法の使い手である彼女のことだ。
 貴重な読書の妨げとなる風圧は、同属性の障壁を張ることで緩和してある。
 タバサの正面にはぶすっとした顔をしているルイズと、周囲に頻繁に視線を飛ばして敵襲を警戒しているその使い魔の姿が見える。
 現在彼女たちがいるのは、上空250メイルの地点。
 街に行くため馬を探していたダンケに、タバサが自らの使い魔で行くことを提案した結果がこれだった。
 ルイズの機嫌が悪いのは、自分の指示を仰がずに勝手にダンケがタバサとの約束を取りつけてしまったからだろう。
 チラリと、少女は正面にいる青年を一瞥する。
 シルフィードの姿を目にした時、彼は自分を庇おうとしてくれた。
 思い返しただけで、不思議と胸のあたりがぽかぽかとしてくる。
 まあ、彼女の使い魔は少しばかり立腹したようだったが。
(不思議な気持ち……)
 紙面に目を落としながら、タバサは今まで感じたことのない感情に首を傾げた。
「……ねぇ」
 不意に、今まで押し黙っていたルイズが口を開いた。
 時折、横目でダンケの様子を窺っていることから、その内容は彼に関するものなのだろう。
 その鳶色の瞳は、若干鋭利な光を宿してタバサに向けられている。
「なに?」
 紙面から顔を上げないまま、タバサが答える。
 集中力が揺らいだせいか、僅かに本のページは風に靡いていた。
 ルイズはタバサの態度に僅かにイラッとしたようだが、気を取り直すように頭を振ると真摯な口調で言った。
「乗せて行ってくれたことには感謝してるわ。……でも、ちょっとばかり入れ込み過ぎじゃないの。……その、私の使い魔に。昨日だってそうだし……」
 もじもじと、胸の前で組んだ指を所在なさげに動かすルイズ。
 彼女が言っているのは、青年の治療に使用した薬の代金の一部をタバサが支払ったことを指している。
 そしてその理由を尋ねられた彼女の答えは、「連帯責任」という意味深な一言だった。
 タバサは少しの間虚空を見上げた後、今度は本から顔を上げると呟いた。
「……『ガンダールヴ』」
 相変わらず表情の乏しい少女だったが、その碧眼はダンケを射抜くように見つめている。
「えっ……?」
 ルイズは思わず尋ね返した。
 目の前の少女が口にした単語『ガンダールヴ』。
 それが始祖ブリミルを守護したとされる伝説の使い魔を指していることぐらい、ルイズにだってわかる。
 困惑する少女を尻目に、タバサは再び口を開いた。
 但し、今度の彼女の視線はルイズに向いている。
「彼のこと。……『神の盾』」
 それだけ告げると、タバサは読書に戻ってしまった。
 取り残された感じのする桃髪の少女は呆けたように、少し離れたところに座っている己が使い魔を眺める。
 その時、不意に青年と目が合った。
 彼は僅かに口許を歪めると、人差し指を立てて自分の唇の前に持っていく。
 ―――他言は無用だぞ、主。
 風を切る音に支配された世界で、何故かルイズの耳にはその声がはっきりと届いた気がした。


                          ~光~


 やってきました、大きな街。
 タバサの使い魔『シルフィード』に少し酔ってしまった俺だったが、何とか無事に辿り着くことができた。
 気持ち悪いぃ、とか思っている時にルイズと目が合ってしまったから、照れ笑いなど浮かべながら「誰にも言わないでね」というジェスチャーをしたんだけど……しっかり伝わっているか少し心配だ。
 俺たちが歩いているのはトリステインの城下町・ブルドンネ街の自称・大通りだ。
 道幅は僅か五メートルほどしかなく、兎に角歩き難い。
 しかも俺はルイズの大事な財布を預かっている身だから、一瞬たりとも気を抜くわけにはいかないのである。
 擦れ違う人全員を注視しながら歩く。
 疑いをかけるようで申し訳ないが、街に入る前にルイズに言われたのだ。
 スリがいるかもしれないから気をつけろ、と。
 それにしても、預かった布袋がやたらと重い。
 これじゃあまるで、中に大量の金貨でも詰まっているようだ。
 ずっしりと重い布袋を生身で奪うのは至難の業だろう。
 となると、必然的に俺が注意を払う相手は魔法使いとなる。
 平民と魔法使いを見分けるのは意外と簡単だった。
 彼らは自分の存在をアピールしたいらしく、出歩く時は常にマントを着用しているらしいのだ。
「…………」
 ふむ、どうやら魔法使い(技師)は目に見える範囲にはいないらしい。
 小さく息を吐くと、人の波をかき分けるようにして進む。
 小柄な二人の少女はいつの間にか俺の背に回っていた。
 気づかぬ内に追い越していたらしいが、一向に前に出ようとしてくれないので少し途方に暮れている。
 初めての街だと言うのに、どこに向かえばいいのだろうか?
 あの樽の看板は……酒場かな。
 そしてあの×印は……あぁ、確か宝の在り処だっけ。
 いや、宝の在り処はドクロマークだったか?
 相変わらず後ろの二人から反応がないので、ただひたすら歩き続ける。
 足が痛い、ほんの少しだけ、帰りたいと思ってしまった。
「…………」
 足元にキラリと光るものが見えたのでしゃがみ込む。
 拾い上げて見ると……赤銅色のコインだ!
 銅製の硬貨は大抵価値が低いが、お金はお金。
 貰っておくに越したことはない。
 そう思い、握り締めた手の中にそれを隠す。
 すぐにポケットに入れようとも思ったが、後ろにいるだろう女の子たちに見られると恥ずかしいので自粛した。
 ……心は硝子で出来ている。
 直後、ドンという決して軽くは無い衝撃が俺の脇腹付近を走った。
 胸中で苦痛の声を漏らす俺。
 急に運動をしたせいで体にガタでもきてしまったのだろうか?
 だとしたらかなり……不安だ。
 体が頑丈なだけが取り得だと思っていた時期が、俺にもありました。
「あ、ありがとうございました! これでお母さんに薬を買ってあげられます!」
 ……え。
 顔を上げた途端、目の前には見知らぬ女性が一人。
 何やら俺に礼を言っているようだけど……まったく身に覚えがなかったりする。
 覚えがあるのは、このズキズキと脇腹に走る鈍痛のみだ。
 周りから聞こえるのは「兄ちゃん、やるねぇ!」とか「若いのに大したもんだ!」とかいう褒め言葉。
 ペコペコと何度も頭を下げる女性に「俺は何もしていない」と真実を伝えると、彼女は「感動しました!」と最後に大きくお辞儀をしてから去って行った。
 ……意味がわからん。そして痛い。
 何か情報を得る材料はないものかと視線を飛ばせば、前転に失敗したような体勢で道端に座り込む男を発見した。
 熟睡しているのか、これだけ人が騒いでいるというのに起き上がる気配すらない。
 きっと呑み過ぎたのだろう。
 今日は休日だから、しかも浴びるほどに。
 酒がうまいのはわかるが、
「……ほどほどにな」
 そう、何事もほどほどが大事だ。
 腹八分目という格言もあるくらいだしな。
 覚悟を決めて(怒られる)目的地を訪ねようと振り返った俺の目に映ったのは、目を丸くしているルイズといつも通り無表情のタバサ。
 いや、違うな……タバサは少し得意そう……なのか?
「どうか……したか?」
「あんたって……本当にお人好しよね」
 尋ねると、何故か顔の赤いルイズに呆れられてしまった。
 タバサも同意するように頷いている。
 と言うか、お人好しってなにさ。
 それよりもいい加減に道を教えてください。
 思わず仰いでしまった空は、憎らしいくらい青かった。


                       ~闇~


 私たちはトリステインでもっとも大きな街・ブルドンネ街の大通りを歩いていた。
 先頭を歩くのは私が召喚した使い魔・ダンケ。
 まだ半信半疑だけど、何でも伝説の使い魔『ガンダールヴ』らしい。
 ダンケもタバサも嘘をつくような人だとは思えないし……でも、あいつを召喚したのはこの私だ。
 魔法を使えないメイジが伝説の使い魔を召喚するなんてこと、実際にあるのかしら?
 う、ううん、今はそんなことどうでもいいわよね。
 フルフルと頭を振って、意識を切り替える。
 私がここに来たのは、ダンケに剣を与えるためだ。
 誇り高きヴァリエール家の使い魔の武器がナイフ一本なんて、あり得ない。
 そ、それに……その、色々と頑張ってくれているみたいだし、ご褒美の一つくらいはあげないとね!
 か、勘違いしないでよ!? 別に深い意味なんてないんだからねっ!
 ―――って、私は一体誰に言い訳してんのよ。
 ダンケは私の言いつけを守って、周囲の警戒をしているようだ。
 時々、私たちに育ちの良くなそうな平民が近づこうとするけど、側に来る前にあいつに睨みつけられてスゴスゴと退散していく。
 な、何だかやけに手馴れている気がするのは、私の気のせい?
 あ、そうそう、私たちをここまで運んたタバサも何故かついて来ていた。
 今は私と一緒にダンケの背中に隠れるようにして歩いている。
 ……この子、本当に何を考えているのかしら?
 ヴェストリの広場で会うまでは名前も知らなかった女の子。
 今だって私が知っているのは、彼女が「タバサ」と名乗っていることだけ。
 何だか犬みたい名前だと思ったけど、私はツェルプストーとは違うから口には出さない。
 まあ、あの女なら臆面もなく言ってのけそうだけど。
 そう言えば、名前だけなら私の使い魔のダンケも十分おかしいわよね。
 ありきたり過ぎると言うか、自分自身がその名前にあんまり馴染んでいないというか。
 考え事しながら歩いていると、突然ダンケが立ち止まった。
 タバサは気づいたみたいだけど、私は思いっきり鼻をぶつけてしまう。
 と、止まるなら一言そう声をかけなさいよ!
 そう怒鳴ろうとした直後、ダンケの体に躓いて男が空を飛んで行った。
 ……え、一体何が起こったって言うの。
 状況が掴めず、困惑する。
 人混みをかき分けるようにして出てきたのは、平民の女性だった。
 彼女は落ちていた財布を拾い上げると、頻りにダンケに頭を下げている。
 そこで私はようやく理解した。
 ダンケが立ち止まったのは、あの女の人の財布をスリから取り戻すためだったんだ。
 スリの男は壁に体を打ちつけたショックで気絶している。
 ふんっ、いい気味ね。
 ダンケがゆっくりとした動作で立ち上がる。
 あいつが助けたことは誰の目から見ても明らかだと言うのに、こともあろうにダンケはこう言い切った。
「俺は何も……していない」
 その言葉に感動したのか、女性は目を潤ませている。
 ……ちょっとだけ気に入らない。
 女性が去った後、ダンケは気絶しているスリを一瞥すると、呆れたように言い放つ。
「……ほどほどにな」
 そこに怒りの感情はまったく感じられない。
 基本的に、ダンケは感情というものを外に表さないから。
 痛くても苦しくても、全部自分一人で抱え込んでしまう人だから。
 だけど……昨日のギーシュとの決闘で、私が『ゼロ』と言われた時は本気で怒ってくれた。
 あの時のことを思い出すと、今でも頬が熱くなってしまう。
 ……べ、別に嬉しがってるわけじゃないんだから……うぅ。
「どうか……したか?」
「―――っ!?」
 突然あいつの声が聞こえて、私は息を呑んだ。
 動揺を悟られないように、努めていつもの自分を演じる。
「あんたって……本当にお人好しよね」
 急場凌ぎの言葉としては上出来だろう。
 それにこれは私の本音の一つでもあるわけだし……。
 わざわざギーシュに助言したり、心配かけないために骨折を隠したり、召喚して間もない私のために色々と……尽くしてくれたりとか。
 うん、本当にお人好しだ。
 ま、まあ、そこがダンケのいいところでもあるんだけど……。
「…………」
 視線の先には、困ったように空を見上げるダンケ。
 私の隣では、いつもよりもほんの少しだけ得意そうな顔をしたタバサがコクコクと頷いていた。
 何となくだけど、彼らの表情を掴めるようになった……これも慣れなのかしら?


別窓 | 零の使い魔。 | コメント:8 | トラックバック:0
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この記事のコメント
更新お疲れ様です!
ダンケ・・・ぶつかった衝撃とかいろいろとスルーですか?w

コクコク頷くタバサが想像できて、ぼかぁもう(違

2008-02-14 Thu 20:58 | URL | NAND #BxQFZbuQ[ 内容変更]
実は最近こちらを知って読み始めたんですけど。
……最近まで知らなかったのが悔しいっす!
全部一気に読んで、めっさ楽しませていただきました。

>彼らの表情を掴めるようになった
はっきりいって、 気 の せ い で す 。

PS.前回はうっかり名前を入れずにコメントしてしまいました。
申し訳ありません。
2008-02-15 Fri 00:47 | URL | スケベビッチ・オンナスキー #QjzkEOgs[ 内容変更]
あぁ、無常。
恐ろしいくらいにかみ合っていないけど、
この上なくかみ合ってる・・・、この異空間。

これはもう奇跡としか言いようがありませんね。

しかしダンケ、骨折とかしてない?

次も楽しみにしてます。
2008-02-15 Fri 01:07 | URL | kou #8sp/3iLM[ 内容変更]
あぁついにトップにすら《微熱》さんの出番が・・・

タバサ萌えー
2008-02-15 Fri 07:50 | URL | 7c #-[ 内容変更]
すれ違いすぎじゃないですか!?
ここまでくるともう運命と言うしかないような……
偶然で片付けるのは無理ですよね
さてさていったいこのあとはどうなるのか、楽しみにお待ちしております!
2008-02-15 Fri 18:47 | URL | アルト #TaKwfYoE[ 内容変更]
ああ、ダンテ視点では何が起きているかが分かる無すぎるほどに意味不明になってくるところが、光と闇のすれ違いぶりを表して涙を誘います。
お金を拾ったら人助けとか世界は奇跡で満ちてます。
とりあえず殆どが良い方に勘違いされてる事だけは幸せだと思って生きてみればいいと思うよ。
2008-02-16 Sat 17:23 | URL | カタカナ #d44vb1iY[ 内容変更]
虚無の日のおでかけ。

と、いうことは次はデルフが登場するのですね!
果たしてデルフは、ダンケの真の理解者となり得るのか!?
いややはり勘違いして、こりゃおでれーた!になるのか。

次回が実に楽しみです。
2008-02-16 Sat 20:02 | URL | #-[ 内容変更]
更新オツです、うたわれ二次共々楽しませてもらってます。
光をだけ読むとはて? と、闇を読んでなるほど!のギャップがたまらなく秀逸です。

追伸。ここのルイズはよいツンデレだw
2008-02-22 Fri 23:53 | URL | norakuro #hjUPE3us[ 内容変更]
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