ネクオロでした
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零の使い魔。最終話
2008-06-29 Sun 10:27


別にここの食堂の料理を食い尽くしてしまっても……構わんのだろう?

                                                  <ダンケ>

もう……そういうところは子供っぽいんだから……。        
 
                                                  <ルイズ>

うま……うま。

                                                  <タバサ>

あらダンケ、どこに行くの? ねぇってば!

                                                  <キュルケ>


 学院に戻ったルイズたちを出迎えたのは、俺に馬を貸してくれたあの老人だった。
 馬を見失ってしまったことを詫びると、そんなことは別にいいと言ってくれた。
 本当に心の広い老人だと思う。
 そして……何とこの老人こそが、このトリステイン魔法学院の学院長だったらしい。
 だとすれば、俺のことを知っているのも頷ける。
 『破壊の杖』を返却すると、訊いてもいないのに手に入れた由来を話し出した。
 やはり、校長にしろ学院長にしろ長話が好きらしい。
 それによれば、学院長が「Yバーン」に襲われた時、命を救ってくれた恩人が持っていたのがあの『パンツァーファウスト3』だったという。
 その恩人は酷い怪我をしていたようで、看護も虚しく亡くなってしまった。
 学院長は二本あった『破壊の杖』の一本をその人の墓に埋め、もう一本を宝物庫にしまったのだと言う。
 俺は……自分の墓に武器を埋められるのは、嫌だが。
 学院長はフーケを見事に捕らえたルイズたちに褒美として、宮廷に『シュヴァリエ』の爵位申請を出しておいてくれたらしい。
 タバサはもうそれを持っていたらしく、精霊何とかを代わりに申請しておいたとか。
 ……で、その『シュヴァリエ』ってそもそも何なの?
 一人で困惑していると、ルイズが学院長に文句を言っていた。
 耳を傾けると、三人が褒美を与えられたのに俺だけが何もなし、というのはあんまりだとか何とか。
 やっぱり……ルイズは優しい娘だなぁ。
 彼女の優しさに、俺は胸中で咽び泣いた。
 ただ、そのせいで折角の、その何とか申請が白紙に戻ると大変だ。
第一、 俺はそんなものは要らない。
 俺が切望しているのは、無事に母国に戻れることなのだから。
 その旨を伝えると、ルイズは渋々といった様子で引き下がってくれた。
 彼女が言うには、
「あんたの分まで私が偉くなってあげるから」
 ……らしい。
 俺としても、一刻も早く彼女が高給な職に就き、家族を助けられたらいいなと思う。
 あとは……ああ、俺のル~ンはどうやら特別なようで、その名前が『ガンダールヴ』らしい。
 学院で唯一爆発技術を持つ技術者・ルイズの使い魔に刻まれたル~ンだ、そこらの凡百と同じなわけがない……みたいなことを、いつも通り言葉足らずの口調で告げたら、ルイズに顔を真っ赤にして怒られてしまった。
 彼女曰く、そういうのはこういう場所で言うものではないとのことだ。
 なら……どこで言えばいいんだろうか? トイレか?
 褒美代わりに何か手伝えることがあれば協力しよう、そう、学院長は言ってくれた。
 俺としては母国に帰れるよう申請してください、とお願いしたかったが、馬をなくしている手前、言えるわけがなかった。
 仕方なく俺は、しばらく世話になりますとだけ言っておいた。
 そして……。
 俺は今、『アルヴィーズ』の食堂にいる。
 一階は食堂、二階が巨大なダンスホールになっていて、何か祝い事があったらしくそこで祝賀会が催されることになったのである。
 当初、怪我をしているからという理由で俺の参加は見送られそうになっていたが、もう大丈夫だからとゴネて無理矢理参加した。
 折角ご馳走をタダで食べられる機会なんだ。
 見逃すにはあまりに惜しい。
 ルイズはそんな俺を見て、複雑な表情をしていた。
 十中八九、呆れていたに違いない。
 彼女は準備で忙しいとのことで、俺だけ一足早く会場にお邪魔していた。
 薄々わかっていたことだが、使い魔の参加は俺だけらしい。
 嬉しいような、悲しいような、何だか複雑な気分だ。
 バカみたいに大きなシャンデリアの下で、煌びやかな衣装をまとった男女が踊っている。
 人見知り(ドイツにやって来て、だいぶ改善されたが)の俺は人を避けるように、部屋の隅で黙々と夕食を食べていた。
 ローストチキンやらステーキやら魚のムニエルやら、長い机の上には俺が見たこともないような豪勢な食事がこれでもかと言うほど並んでいる。
 タッパーを持ってくるべきだった悔やんだ俺は、真性の貧乏人だ。
 せめて胃の許容量限界まで食べてやろうと孤軍奮闘していると、黒いドレスを身に着けたタバサがやって来た。
 化粧をしているのか、普段よりも少しだけ大人っぽく見える。
 ……彼女でさえ正装していると言うのに、俺は……。
 いつも通り、安物の黒いシャツとズボン姿の自分が急にみすぼらしく感じてしまう。
 ネクタイだけでも締めるべきだったか……。
 無言でいると、彼女は小さく「どう?」と訊いてきた。
 何に対する「どう?」なのかしばし悩み、ドレスのことだと気づく。
「……似合っている」
 綺麗と可愛いの間で迂闊にも悩んでしまい、結局は無難な回等を返した。
 何を隠そう、こういう場面での俺の語録はとても貧弱なのである。
 どうやらタバサの問いは社交辞令の一つだったようだ。
 俺の貧相な返事に気分を害すことなく、俺の隣で黙々とサラダを食べている。
 さすがに彼女の横で肉をがっつくわけにもいかず、俺はワイングラスに注がれた水で口を潤すにとどめておく。
 本来ならワインを飲むべきなのだろうが……俺は下戸だからムリだった。
 コップ半杯のチューハイで酔える自信があるぞ。
「ワイン、呑まないの?」
「判断力が……鈍るからな」
 下戸なんですぅ、とは恥ずかしくて言えなかった。
 純粋なタバサは信じてくれたようだが……心が痛い。
 そのまましばらく無言の時が続く。
 俺なんかの側にいてもタバサはつまらないだろう。
 そう思ったが、横目で反応を窺う限り、どうやらそうでもないらしい。
 しばし悩み、少し離れたところで男たちに囲まれるキュルケを見て得心する。
 要は男避けというやつだな、俺は。
 別にそれを気に入らないとは思わない。
 タダで豪勢な食事を取れるだけで、俺は幸せなんだ。
 ならば少女の男避けの役目ぐらい、喜び勇んで果たしてみせよう。
 そうそう、キュルケはキュルケで相変わらず優しかった。
 人垣を作るほどの量の男と相対しながら、時折俺に向かって手を振ってくれるのだから。
 きっと、俺が一人で寂しい思いをしているんじゃないかと思ったんだろう。
 タバサが隣にいるが、あの位置からは見えないのかもしれないな。
 その時、ホールに姿を見せた衛士が声を張り上げた。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~~~り~~~~!」
 ……ルイズのフルネーム、あんなに長かったとは知らなかった。
 よくもまあ、あの衛士は噛まずに言えたものだと感心する。
 ホールの壮麗な扉が開き、ルイズが姿を現した。
 白いパーティドレスに身を包んだ俺の主殿が、優雅な足取りでホールに進み出る。
 いつもは下ろしている髪を、今夜はバレッタにまとめている。
 原石が磨き上げられて宝石になった……そんな感じがした。
 ルイズの姿を目にした貴族たちが、続々と彼女に話しかけている。
 今まで『ゼロ』とルイズを貶していた者も今回の件で彼女を認めただろうし……使い魔冥利に尽きるというものだ。
 僅かに残っていた水を飲み干しグラスを置くと、俺はバルコニーに出た。
 そこには相棒兼家族のお土産のデルフが立てかけてある。
「相棒、踊らねぇのか?」
 カタカタと鍔(?)を鳴らしながら言うデルフ。
「……ああ。俺には相応しくない場所……だからな」
 フォークダンスすらまともに踊れない俺が、あんな場所で踊れるわけがないじゃないか。
 上に飾ってある大きなシャンデリアが落ちてくるかもしれないし……怖ぇ。
「ま、確かに相棒にゃあ戦場の方が似合っているはな!」
「……違いない」
 言って、二人してくつくつと笑い合う。
 俺だって、冗談ぐらい理解できる社交性は持ち合わせているのさ。ふふん。
 不意に背中に人の気配を感じ、振り向く。
 そこに立っていたのはなんと、パーティの華と化していた我が主殿だった。
 ……あれ、どうしてここに彼女がいるんだ?
 軽く首を傾げると、ルイズは溜め息を吐いた。
 その空気に居た堪れなくなり、俺は口を開く。
「……踊らないのか?」
「相手がいないのよ」
 おかしいな、俺が見ていた限り、結構な数の男に誘われていた気がしたけど。
 ルイズは恥ずかしそうにそっぽを向くと、ボソリと呟いた。
「踊ってあげても、よくってよ」
「…………」
「~~っ! な、何とか言いなさいよ!」
 顔を真っ赤にして怒鳴るルイズ。
 い、いや、そう言われても……困る。
 俺、こういう場所で踊ったことないし。
 ルイズは「うぅ」と呻ったあと、コホンと咳払いを一つ。
 そして恭しくドレスの裾を両手で持ち上げると、膝を曲げて一礼する。
「わたくしと一曲踊ってくれませんこと。ジェントルマン」
 ……そうか!
 俺は胸中でポンと手を叩いた。
 ルイズも一人でいる俺を不憫に思い、他の男性の誘いを断ってまで気を利かせてくれたんだ。
 年下にここまで気を使わせてしまうとは……情けないやら恥ずかしいやら。
 ならば俺は、そんな彼女の慈悲深い心に応えなくちゃいけない。
 ルイズの使い魔として、そして何より一人の人間として。
「……無論」
 出てきた言葉は、もう自分でも呆れるくらい無愛想だったが。

 ルイズの手を取り、曲に合わせて体を動かす。
 最初はぎこちなかったものの、彼女のリードもあって何とか様になった……と思う。
 るんたった~、るんたった~♪
 俺が注意するのはただ一つ。
 そう、それは……ルイズの足を踏まないことだ。
 表情には出てないだろうが、胸中で見えない努力をしていると、ルイズが呟いた。
「ありがとう。助けに来てくれて」
「俺は君に……治療の礼を言いに行った……それだけだ」
「くすっ。それでもよ、ダンケ。……本当にありがとう」
 微笑むルイズ。
 もともとの素材がいいだけに、こうしていると本当にお姫様のようだ。
 ……おや。あそこにいるのは……ギーシュか?
 ルイズの肩越しに見える、薔薇を咥えた金髪の憎き野郎。
 彼は、周囲を囲んでいる少女たちに自慢話か何かをしているようだった。
 懲りない奴め、俺がそう思ったその時だった。
 巻き髪の金髪少女が颯爽と参上し、ギーシュの首根っこを掴んで何処かへと引き摺って行く。
 それでも何か言っているギーシュに蹴りを食らわし、おとなしくさせる巻き髪少女。
 彼らには悪いが、その滑稽な様子に思わず笑ってしまいそうになる。
 しかし、俺は今ルイズと踊っている最中だ。
 だけど……くっ、ぷぷっ……もう限界が近い……ぷぷっ。
 已む無く、俺はルイズから顔を逸らすという強硬手段に出た。
 笑いの虫が退散したのを確認して、顔を戻す。
 てっきり怒り心頭かと思っていたが、ルイズはニコニコしていた。
 何がそんなに嬉しいのか知らないけど……バレなくて良かった。
 視線を上に向ければ、窓から二つの月の光が差し込んでいるのが見える。
 最初目にした時はビビったが、今ならわかる。
 一つは本物の月で、もう一つは使い魔のル~ンに武器情報を転送するためのアンテナだということが。
 例えるならば……そう、ガ○ダムXのサ○ライトキ○ノンだろう。
 俺もいずれあれが撃てるのだろうか……少し憧れてしまうぜ。
 月は……月は出ているか……?
「ダンケ……ありがとう」
 頬を赤く染め、俺の目を見つめながらそう言うルイズ。
 初心な俺はそれだけでもう、ドキドキしまくりだZE☆
「礼ならもう……貰ったが?」
「いいの。言いたくなっただけだから」
「そうか……」
 急に誰かに礼を言いたくなる衝動に駆られた、ということか?
 まあ、年頃の少女には色々あるだろうし、詮索はしないがね。
 でも、お礼を言われっ放しというのは落ち着かない。
 と言うか、世話になっているのはむしろ俺の方だ。
 食事とか寝床とか、怪我の治療とか……枚挙すればキリがない。
「主……感謝している」
「え? わ、私、何かしたっけ?」
「……言いたくなっただけだ。……気にするな」
「な、なんなのよ……もうっ」
 頬を膨らませるルイズに、思わず苦笑が零れる。
 そして俺たちは二つの月に照らされる中、音楽が鳴りやむまで踊り続けるのだった。


<ルイズ視点>

煌びやかなドレスに身を包んだルイズを、今まで小ばかにして男たちが必死になってダンスに誘っている。
大方、フーケ捕縛の噂を聞き付け、この際に印象を良くしておこうとでも考えたのだろう。
浅はかな考えだ―――そうルイズは思った。
彼女はラ・ヴァリエール公爵家の三女。
実家の領地は広大で、父親は貴族の中でも最上級に位置する貴族だ。
今までは、魔法が使えない事が彼女の陰りとなっていたが、今日の一件でそれは完全に払拭されたと言っても過言では無いだろう。
例えメイジが『ゼロ』だとしても、その従えた使い魔の力は強大だ―――そう考えたに違いない。
ダンケが伝説の使い魔『ガンダールヴ』だと知っているルイズ達は勿論の事、ギーシュとの決闘の一件で彼の強さは学院中に知れ渡っているのだから無理もなかった。
また一人、自分をダンスに誘ってきた上級生にやんわりと断りの返事をし、ルイズはお目当ての人物を探す。
途中、大皿に山盛りになったはしばみ草のサラダと格闘するタバサを見て胸焼けを起こしそうになったり、周りに男をはべらかして悦に浸っているキュルケと目があってしまいイライラしつつ(しかしダンケには断られたらしい。少し溜飲が下がった)、ルイズは目的の人物をなんとか見付ける事が出来た。
少女の探し人―――ダンケは華やかな輪に加わろうともせず、一人、バルコニーに出ていたのだ。
ルイズがそっと近付くと、彼とその剣―――デルフリンガーの会話が夜風に乗って流れてきた。
思わず、聞き耳を立ててしまう。
「相棒、踊らねぇのか?」
「……ああ。俺には相応しくない場所……だからな」
その呟きには微かに自嘲の響きが込められていた。
「ま、確かに相棒にゃあ戦場の方が似合っているはな!」
「……違いない」
 一人と一振りの会話を聞き、ルイズは悲しくなった。
 その口調こそ軽いものの、彼等は自分達が戦う事しか出来ない存在だと自ら認めてしまっているから……。
 口を利けるとは言え、剣のデルフリンガーはまだ判る。
 だが、人間のダンケがその台詞に同意するのは、ルイズにはすごく寂しい事に思えてならなかった。
 ダンケが振り向いた。
 出そうになった驚きの声を何とか飲み干して、普段通りの表情を浮かべられる様に努力する。
 ぎこちないながらもその努力が報われた時、少女を見詰めていた青年が先に口を開いた。
「……踊らないのか?」
 案の定、ダンケが口にしたのはルイズを気にかける言葉だった。
 この青年はいつもそうだ。
 どれだけ罵倒されようと、どれだけ傷付こうとも、何よりもルイズの事を優先する。
 それを嬉しく思う反面、「何故そこまでしてくれるのか?」という疑問も当然ながら彼女の中には存在していた。
 その事を尋ねようとし、ルイズは思い留まる。
 折角のフリッグの舞踏会だというのに、無粋な話題を持ちかけるのもどうだろう。
 それに……。
(いつか話してくれるわよね、ダンケ……)
 確信は無いが、ルイズは素直にそう信じる事が出来た。
 未だ謎だらけの使い魔―――ダンケ。
 だけど、彼が自分の事を大切に想ってくれている事はしかと感じる事が出来たから。
「相手がいないのよ」
 そう言って、ぷぃと顔を背ける。
 普通ならば、この様な態度を取っていれば余程の朴念仁でない限りは踊りに誘うものなのだが……。
「…………」
 やはりと言うべきか。
 ダンケは無言でルイズの事を見詰めていた。
 この使い魔、中途半端に抜けているのだ。
 まあそれはそれで人間味が感じられ、少女は密かに気に入っているのだが。
 胸中で溜め息を吐き、仕方なくルイズが再び口を開く。
「踊ってあげても、よくってよ」
「…………」
「~~っ! な、何とか言いなさいよ!」
 耳まで真っ赤にして怒鳴るも、ダンケは無反応だった。
 やっぱり魅力に乏しいからじゃ……と落ち込みかけ、無理やり気持ちを浮上させる。
(こ、ここで退いたら女が廃るってもんよね……!)
 覚悟を決め、スカートの端を両手で掴むと膝を曲げて一礼する。
 本来ならば貴族が平民になど絶対に行わないその仕草。
 それは、ルイズがダンケにダンスを申し込んだ事を意味していた。
 顔が真っ赤になっているのが自分でも判る。
 緊張のあまり、スカートを掴んだ手はプルプルと震えていた。
 しかしここまで来た以上、もはや退路など残されてはいない。
 数秒、いやそれとも数十秒か。
 この間、ルイズは時間の流れがやたらと遅く感じた。
 そして、ついにダンケが口を開いた。
「……無論」
 それは彼らしい、淡々とした返事だった。
 青年の事を知らない者が聞けば、そのあまりに失礼な受け答えに激怒していた事だろう。
 だが、ルイズは判っていた。
 この少ない言葉に、ダンケがどれだけの想いを込めたのかを。


 ゆったりとした曲に合わせて、一人の青年と一人の少女が踊っている。
 一流の貴族とその使い魔の平民という珍しいそのカップリングを目にし、ある者は嘲笑を、ある者は失笑を投げかけていくが、当人達は一切気にしてはいなかった。
「ありがとう。助けに来てくれて」
 それはあの時言えなかった感謝の言葉。
 危うくフーケのゴーレムにルイズが潰されそうになった際、怪我をおして駆け付けてくれた事に対する素直な気持ちの表れだった。
「俺は君に……治療の礼を言いに行った……それだけだ」
「くすっ。それでもよ、ダンケ。……本当にありがとう」
 今時、子供でも使わない様な彼の誤魔化し方に、思わずルイズの顔に笑みが浮かぶ。
 ダンケは頑として自分が助けに行ったと認める言はしなかった。
 あくまで治療の礼を言いに行き、そこに偶然フーケのゴーレムが居たのだと。
(そんな偶然あるわけが無いじゃないのよ、もう……)
 ルイズの心を温かな気持ちが満たしていく。
 ダンケなりに気を遣ってくれているのだろうが……。
 もう一度ルイズが笑いかけると、何を思ったのか、ダンケが顔を反らした。
 どうしてだろうと首をかしげ、その原因にすぐに思い至る。
(あ、そっか。嘘がバレたのが恥ずかしいんだ……)
 ルイズが自分の嘘を見破った事に気付いたのだろう。
 だからこそ、照れを隠す為に彼は顔を背けたのだ―――ルイズはそういう結論に達した。
 そう考えて見てみれば、ダンケの表情には僅かだが何かを堪えている様な色が見て取れる。
(ほんっと、そういうところは子供っぽいんだから)
 くすりと笑うルイズ。
 その嘘も全ては自分の為にしてくれた事。
 そう考えると、頬が熱くなるのを感じた。
「ダンケ……ありがとう」
「礼ならもう……貰ったが?」
 怪訝そうに問い掛けるダンケに、ルイズは左右に首を振って言った。
「いいの。言いたくなっただけだから」
「そうか……」
 それで一応は納得したのか、ダンケが一度口を閉じた。
 そして再び彼が口を開いた時、ルイズが予想もしていなかった言葉が飛び出す事になる。
「主……感謝している」
「え? わ、私、何かしたっけ?」
 礼を言わなきゃならない事なら沢山した記憶があるが、礼を言われる様な覚えはまるで無い。
 困惑するルイズに、ダンケは苦笑してみせる。
 長い前髪に隠れていたその双眸が、今宵の双月と同じ、穏やかな光をたたえていた。
「……言いたくなっただけだ。……気にするな」
「な、なんなのよ……もうっ」
 からかわれた事に気が付き、ルイズが頬を膨らませる。
 しかし、本気で怒っていないのは明らかだった。
 苦笑するダンケと、頬を膨らませたルイズ。
 二人のダンスは続く。
 その微笑ましい光景を、二色の月光が優しく照らしていた―――。



                            <FIn>




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この記事のコメント
最後の最後まですれ違っていましたね~
できれば続編を希望したいところですが、今は最終話お疲れ様でした!!
2008-06-29 Sun 13:37 | URL | かみかみ #-[ 内容変更]
え……終わり?
 た、楽しみが一つ減ってしまった……。
 できたら各巻の見せ場だけでも書いて欲しいT_T
 
 では感想。
 ルイズー! 偶然偶然!
 最後まで面白すぎる勘違いでした。
 思わず感嘆するほどに。
 終わり、というのはかなり寂しいですが、
 完結、おめでとうございますwww
 そして楽しませて下さってありがとうございました。
2008-06-29 Sun 13:46 | URL | 七氏 #SFo5/nok[ 内容変更]
完結おめでとうございます。

最後も綺麗な勘違いのままで素晴らしい。

良い物をありがとうございました。
2008-06-29 Sun 16:09 | URL | ガル #B5NHcO6.[ 内容変更]
完結おめでとうございます。
最後まで勘違いで面白い作品でした。
勘違い系でここまでの作品は中々ないので、終わってしまうのはやはり残念です。
が、どうやらまだ少し続くとのこと。楽しみにしていてよろしいのでしょうか?

>武器情報を転送するためのアンテナ
ダンケ、君には負けたよ(笑。
正直こういう切り口で来るとは予想つきませんでした。

良い作品を有り難うございました。お疲れ様でした。
2008-06-29 Sun 18:47 | URL | 夢幻の戦士 #LOLorWpQ[ 内容変更]
零の使い魔 完結
完結おめでとうございます♪

続きを読みたい気はするのですが無理はいえません。
外伝50話くらいで我慢しますw

もう一作品のほうもカルラ参加で、益々面白くなりそうなので応援いたします。

では、無理ない程度に頑張られてくださいませ☆
2008-06-30 Mon 07:40 | URL | #aFrwSQAg[ 内容変更]
完結おめでとうございます。これまで楽しく読ませてもらいました。勘違いのままきれいに終わって、一つの作品をしっかり読んだ満足感がありました。
2008-06-30 Mon 23:54 | URL | ネコ #o4rjoBl6[ 内容変更]
第二部開始ですね、わかります。
冗談はさておき、お疲れ様でした
今後も頑張ってください
2008-07-01 Tue 00:11 | URL | D #zrvSuWY.[ 内容変更]
え?終わり?マジで?
誰か彼の本心を察してやってくれーーーーー!!

読了後にそんな思いがしました。
是非とも続きを希望しますが完結させていただけただけでも十分です。

でも勘違いのままって結構寂しくない?ww
2008-07-01 Tue 19:26 | URL | 闇士 #teGbE6cI[ 内容変更]
・・・そうか、もう一年か。
2008-07-02 Wed 00:43 | URL | 通り縋り #cRy4jAvc[ 内容変更]
完結おめでとうございます!
勘違い系での最上級の綺麗な終わり方ですね。
外伝を書く可能性もあるとのことなので楽しみにしています!
ここまで本当にお疲れ様でした!
もし、本を出されることがあるなら、自分は是非買ってみたいと思います!
2008-07-03 Thu 01:36 | URL | Alto #-[ 内容変更]
続きを書いてくれませんか?
2008-07-13 Sun 04:11 | URL | カズキ #-[ 内容変更]
もちろん、第二部に続くんですよね?

とにもかくにも、完結おめでとう!
2008-07-14 Mon 10:06 | URL | Fat #mQop/nM.[ 内容変更]
お初です
初めまして、読んでついついコメントかきたく…
しかしダンケは物語がどんなEND迎えても勘違いされてそうな気がしてきたw
大変面白かったです、お疲れ様です
2008-08-13 Wed 17:47 | URL | m #rbQb2npY[ 内容変更]
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