ネクオロでした
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リリカル勘違い(?) その二
2008-08-31 Sun 11:13
リリカル勘違いの第二弾。今回は三話と四話を御届けです。

この頃はどうにかして同じ場面を二度かいて勘違いを成立させるのではなく、一度だけ書いてまとめて誤解と本音を成立させようと躍起になっておりました。そしてそれは今でも変わりなく、むしろ時間の少ない今は本気でそれが出来ないかと試行錯誤を繰り返していたりします。その為、ゼロでも一部、今までのように闇と光に分かれてないところがありますが、それは時間の無い私が生み出した苦肉の策として捉えていただければと思っております。

四話で登場の彼女は……あれですね。強いて言えば中の人繋がり……でしょうか。今でも覚えています。気付いていたら彼女が登場していました。少々―――いえ、かなり察しが良すぎる気もしますが、この物語の彼女はニュータ○プだとでも思って頂ければなぁと。

兎に角、リリカル勘違いをお楽しみください。続きを読むから御覧になれます。

第三話  深夜の激突なの! 最速の騎士と黒衣の魔導少女


 ―――草木の眠る丑三つ時。
 三日月の淡い光が町並みを照らす中、空中で三つの影が対峙していた。
 一つは平凡な暮らしから完全に遠ざかってしまった、一応は我らが主人公大樹。
 もう一つの影は長い金色の髪を頭の両端で束ねた、なのはと同世代の少女のもの。
 そして最後の影は、見た目十六歳程度、淡い赤色の長髪の女性のものだった。
「まさかこの町にもう一人魔導師がいたとはねぇ……」
「……うん」
「コンビニまで歩くのが億劫だからといって、安易に空を飛んだ罰が当たったというのか……どちくしょう!」
『マスター、金髪の彼女が先日なのはたちから連絡のあった新たな魔導師に違いありません! 後顧の憂いを絶つためにも、ここで撃墜しておきましょう!』
「へぇ、言うじゃないのさ。その程度の魔力であたしとフェイトに勝てると思ってんのかい?」
 ガルウイングの声に反応したのか、赤髪の女性の目尻が釣り上がる。
 もとより険しい目つきをしていたが、いまはまるで猛獣の双眸のようにギラギラと威圧的な光を放っていた。
 無骨なBJの内側で竦みあがる大樹。
 彼としてはすぐにでも土下座して謝りたい気分でいっぱいだった。
 なにせ話を聞く限りでは、自分と比べて桁違いの魔力保有量を誇るなのはを、あの金髪少女は撃退したというのだから。
『笑止っ! 魔力だけで魔導師の力量を測っているようでは、まだまだ三流というところ。―――聞きなさい、悪人ども! 我がマスターは最強、なにより最速の騎士! たとえそこの魔導師の魔力量がマスターの十倍以上であっても、こちらに敗北の二文字は存在しません』
「―――っ! 言ったね!」
 堪忍袋の尾が切れかけているらしく、赤髪の女性はいますぐにでも飛びかかりそうだ。
 そして、やはりここでも置き去りにされる大樹。
 同じく置いていかれているだろう少女にそっと視線を向けるが……。
「…………」
 なにやら危なそうな、どことなく死神の鎌を連想させるデバイス片手に睨まれてしまう。
 口にこそ出していないものの、あの少女もどうやらやる気らしい。
 どうしてこう自分の周りには個性的な面々が集まり易いのだろうか―――と空を見上げ、嘆息する。
 平穏な毎日が当たり前のように存在すると思っていた頃の自分がすごく懐かしく、なにより眩しく感じた。
「その余裕っぷりが! 癪に障るんだよ!」
 怒号。
 なにやら大樹の態度がお気に召さなかったらしい。
「―――ちょっ!?」
 現実に帰還した大樹に、右拳を固めた赤髪の女性が迫る。
 魔力節約のためにフィールド魔法を張っていなかった大樹は、彼女の一撃をまともに受けた。
 ベギンッという硬質的な音が夜の冷えた空気に波紋する。
「のわぁぁぁぁ―――っ!?」
『―――胸部装甲板破損。損傷レベルはC。まだまだいけますよ、マスター!』
 その見た目とは裏腹に、女性の拳はやけに威力があった。
 その役割上、ガルウイングは本体及びBJに強固な装甲を付与するようあらかじめ設定してある。
 なのにも関わらず、彼女の一撃は大樹のBJに小さいとはいえ傷を負わせたのだ。
「~~~~っ!? あいつ、なんつー硬いシールドを張ってるんだい!」
 僅かに赤くなった右拳を振りながら、女性が睨みを効かす。
 大樹はなんとかバランスをとり、体勢を立て直したところだった。
「い、意外と痛くなかったが……怖いな。つかあの人、武器もなしに殴りかかってきたぞ!? どうなってんだ? 魔導師の中にはあんなのもいんのか!?」
 女性の後方に控えている少女のほうは、デバイスを持っているのでまだわかる。
 だが、いま自分に重い一撃を加えたあの女性は冗談抜きで素手で殴りかかってきた。
 いくら魔力で強化してあるといっても、無謀な行為には違いない。
 そんな彼の過ちを正したのは、ガルウイングだった。
『いえ、マスター。魔導師は後方に待機しているあの少女だけです。前衛を努めているのは、彼女の使い魔。あの動き、そしてなによりあの耳と尻尾から判断するに、猫科の猛獣が素体かと』
「み、耳と尻尾……?」
 相変わらずすごい目つきで睨んでいる女性を、ヴァイザーに装備された暗視機能を使って観察する大樹。
 なるほど、確かに彼女の頭からは猫によく似た耳が、その腰からは尻尾のようなものがぶら下がっているのが見える。
「なのはちゃんトコのユーノみたいなもんか……。にしては戦闘能力高すぎだろーが」
 毒づき、びびりながらもゆっくりと上昇する。
 念話でなのはに助けを呼ぼうとしたが、『あのような輩など、マスターだけで十分でしょう。幼子の手を煩わせることもありません』と回線を絶たれてしまったので、まさに大ピンチである。
 先日の一件で白い魔導少女と知り合って以来、どうにもこのデバイスは彼等を甘やかす傾向があった。
 とはいえ、テンパっていたとはいえ「困ったときは協力する」と言った手前、一概にデバイスを責めるわけにもいかず、暗鬱たる気分で日々を過ごしていた矢先に発生したイベントが、いまの状況である。
「し、仕方ない。……あれを使うか」
 大樹の呟きに反応したらしく、ヴァイザー内に二種類の呪文が投影される。
 ―――〝フォーカス・ブースト〟と〝スパイラル・ブースト〟。
 ガルウイング曰く、前者が衝撃波で敵を押し潰すスキル、後者が鋭角な衝撃波をまとって敵を穿つスキルだとか。
 言葉巧みに違いを述べているが、経験者の大樹は知っている。
 双方ともに、高速移動からの体当たりに違いはないことを。
 強いて相違点を挙げるとするならば、後者のほうがダメージ(自分に対する)が大きいということか。
 ほかに彼が使えるスキルは防御魔法の〝ラウンド・シールド〟、初歩の回復スキル〝フィジカル・ヒール〟の二つのみ。
 両腕にシールド→突撃→負傷→回復→両腕に→……と、突撃戦法を補助するのに効果的な呪文は最低限ながら備えてあるのが余計に憎い。
 なお、本来ならば〝ブースト〟系列の魔法は移動補助に用いられるものなのだが、魔力保有量がしょぼい大樹は移動の途中で魔力が切れかけてしまうため、彼の中では変に威力のある攻撃魔法として位置づけられていた。
『どうしますか、マスター。貫きますか? それとも吹き飛ばしますか?』
「……頼むから、嬉しそうに言わないでくれ。確か、俺の魔力じゃ加速の連続仕様は三回が限界だったよな?」
『はい。しかし、心配はご無用です。一撃さえ決まれば、こちらの勝利は必然ですから』
「毎度のことながら、その自信の出所はどこなんだよ……。とにかく! フルボッコにされない内にさっさと逃げっぞ!」
 なぜ強者のこちらが逃げる必要が―――とか言い出すガルウイングを黙らせ、前面のスラスターを吹かして軌道を微調整する。
 人間だろうが使い魔だろうがなんだろうが、人の形をしたものに向かって突撃するような趣味は大樹には無かった。
「―――よし。この角度なら大丈夫だろ。……うわ、すげぇ欝になってきた」
「なにをさっきからゴチャゴチャと―――っ!」
「こ、こういうとき、臆病者のほうが長生き出来るのよね! ―――フォーカス・ブーストっ!」
『―――Ready, 〝Focus Boost〟!!』
 一瞬どこかへと飛ぶ意識。
 しかし、こう何度も失神しているとある程度は耐性がつくのか、覚醒はいつにも増して早かった。
 背中に装着しているガルウイングから画像データがヴァイザーに転送される。
 そこには呆気にとられた表情でこちらを見つめる、あの赤い髪の女性が映っていた。
「よし、せいこ―――おぅっ!?」
『―――Ready, Round Shield』
「―――バルディッシュ!」
『―――Scythe form, Setup』
 大樹の発生させた円形状のシールドと、少女のデバイスがぶつかり合う。
 フォーカス・ブーストで移動したのはいいが、なにかの力が働いたかの如く、彼が停止したのは金髪少女の目前だったのである。
 少女のほうもまさかいきなり自分の前方に躍り出てくるとは思ってもいなかったようで、攻撃に移行するのに僅かながらタイムラグが生じた。
 これが結果的に大樹にとって有利に働き、彼が咄嗟に展開したシールドで辛うじて受けることが出来たというのがいまの状態だった。
 もっとも―――。
(やばい、やばいって! ガリガリ、ガリガリ削られてるってば!?)
 魔力に乏しい大樹の張ったシールドなど、なのは級の魔力を内包した少女にとっては紙同然。
 いま両者が拮抗しているのは、ただ単に少女が加減をしているだけに過ぎなかった。
「……降参して。あなたじゃ、わたしには勝てない」
 そう静かに告げる少女の瞳には、なんの感情の色も浮かんではいない。
 だが、目的のためならば手段を厭わないとある種悲壮な決意を固めた―――そんな瞳だった。
 いっぽう、我等が主人公は危機的状況ながら胸中で安堵の息を吐いていたりする。
 問答無用で斬られてしまうかとも思ったが、物騒な得物とは裏腹になかなか優しい子じゃないかとか考えていたのだった。
 無論、少女の瞳に感情の色が宿っていないことなど気づいてすらいない。
 他者よりも自分の命のほうが大事なのはわかるが、あまりにも観察力が無さすぎだった。
「なにかと思ったら、随分と姑息な真似するじゃないのさ」
 後ろから聞こえてきたのは、あの赤い髪の女性の声。
 少女とは対照的に、その口調にはありありと怒りの色が見て取れる。
 このままではあの女性に後ろから撲殺されかねないと思った大樹は、少女の言うとおり、降参の意を伝えようとし―――
『なにを異なことを。降参するのは、あなた方のほうでしょうに』
 ―――空気読めないデバイスに、またしても妨害された。
 ぴしりと、彼等のまとっている雰囲気に亀裂が走る。
 ついでに大樹の魔法の盾にも亀裂が走る。
 大樹にとって唯一の防御手段たるシールドはもはや消滅寸前。
 それに対し、少女のデバイスから伸びる魔力の刃は依然として禍々しい輝きを放っている。
 この状況で、どこをどう見たらこちらが優勢に見えるのか、大樹にはさっぱりわからなかった。
 この少女が少しデバイスに力を注ぐだけで、大樹は真っ二つになってしまうというのに。
 だがしかし……少女と女性はそうは思わなかったらしい。
「―――っ!」
「―――フェイトっ!?」
 少女は慌てて大樹から距離を取ろうとし、赤髪の女性が切羽詰った様子で彼女の名を叫ぶ。
 だがそれよりも早く、ガルウイングは動いていた……主をほったらかしで。
『―――Bind anchor!!』
 ガルウイングの本体(タービンエンジン)から四本の光が伸びる。
 それぞれの光の先端が錨のような形に変化すると、少女の四肢を拘束するように突き刺さった。
 自分をほったらかしにして進展した事態に、驚きを隠せない大樹。
 なんとかして逃れようと体を動かす少女。
 しかし、光の錨―――バインドアンカーはびくともしない。
 悠々とした声音でガルウイングが言う。
『Bind anchor自体に殺傷能力は付加されてはいません。が、しかし、本来それは高速移動中に急遽進路を変える際、空間に射出してその座標を一時的に固着、それを基点として強制的に進路変更を行うために開発されたスペル。いくらAAAランクの魔導師といえど、そう易々とは解除出来ません』
 己がデバイスの説明を聞き、大樹はそんなものがあったのかと頷いていた。
 そのさまが、あたかもいままでの動き全てがこの一撃のための布石だったと肯定しているように見えないこともない。
「フェイト! このぉっ!!」
『おっと、動かないでください。動態視力に秀でたあなたでさえ捉え切れなかったほどの、さきのマスターの速度。あれだけの速度をもってこの至近距離から一撃を加えれば、彼女がどうなるかくらいあなたにも理解出来る筈ですが……?』
「く―――っ!」
 赤髪の女性が、歯を食い縛りながら大樹を睨みつける。
 そうしている間に、依然として少女はアンカーから逃れようと抵抗を続けていた。
 そして、ここにきて大樹はようやく一つの真実にたどり着いた。
(……あれ、俺たちのほうが悪役じみてない?)
 そうなのだ。
 なにやら得体の知れない光で拘束された美少女。
 それを助けようとする女性を、少女を人質にして牽制する大樹(のデバイス)。
 最初のほうは被害者だったのに、いつのまにか加害者に摩り替わっていた。
『無論、命まではとりません。フリーランスの魔導師とはいえ、マスターは高潔な人だ。あなた方の保有しているジュエルシード、それさえ差し出してくれればすぐにでも解放しましょう』
 少女を人質に、ブツを要求する鎧男。
 事実は色々と異なっているが、傍から見れば大樹は完全に悪党だった。
 まっとうに生きていたというのが数少ない自慢だったのに……と、鎧の内側で一滴の涙を零す。
「それは……絶対にダメ……っ!」
 少女が初めて感情をあらわにする。
 なにかを恐れるように、いままで以上に激しく体を揺り動かす。
 そのとき、彼女が手にしていたデバイスのコアから少女にとってはなにより大切なもの、そして大樹にとっては傍迷惑な代物が四つも、その姿を現した。
『なるほど、主を守るために自らジュエルシードを排出しましたか……。いいデバイスをお持ちのようですね』
「ば、バルディッシュ……っ。ダメ、いますぐ戻してっ!!」
『―――NO, sir』
「バルディッシュ、言うことを聞きなさい!」
『―――NO, sir』
 少女の命令を頑なに拒絶する斧型デバイス―――バルディッシュ。
 レイジングハートといい、このバルディッシュといい、こんなに素直で優しいデバイスがあるのに、どうして自分のは人の話を聞かず、空気を読まず、微妙に腹黒いのだろうと大樹はこの世の不条理を呪った。
『さあ、マスター。ジュエルシードの回収を。封印することは叶わずとも、保管するぐらいならば自分にも出来ますので』
「……あいよ」
 ものすごく体に悪そうな視線を二対も感じながら、デバイスにせっつかれて渋々大樹は空中に漂うジュエルシードを掴む……一つだけ。
『マスター……?』
「え……?」
 ガルウイングと少女の当惑の声が重なる中、大樹は背部のデバイス本体に一個だけのジュエルシードを収納させてから言った。
「あー、その……これはなのはちゃんから取ったのを返してもらったってことで、頼むよ。君がなのはちゃんに勝った報酬として手に入れたジュエルシードを、君に勝った俺が返してもらった。一応、話としては通ってるだろ?」
 ついさっきまで降参する気満々だったために、非常に居た堪れない気持ちの大樹。
 最初は一つも貰わずに帰ろうとも思ったが、なのはが先日目の前の少女にジュエルシードをとられたと言っていたことを思い出し、急遽一つだけ持って帰ることにしたのである。
 さすがに魔導師的にははるかに格上の存在とはいえ、十近く年下の少女相手に逃げ帰ってきたとは思われたくなかった……という心理が働いたのも否めない。
 呆ける少女をよそに、アンカーを解除すると大樹は彼女に少し距離を置いて背を向ける。
 彼からしてみれば、いますぐにここを立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。
 金髪少女は物騒な鎌を持っているし、赤い髪の女性はどうやら人間じゃないっぽい。
 魔導の道に堕ちてから十日ほどしか経っていないのにも関わらず、なぜに世界はこうも躍起になって自分を日常から切り離そうとするのかと大樹は嘆く。
「今度会ったときは必ず……取り返しますから」
「その台詞、俺じゃなくてあの子に言うんだな。生憎と俺は、あの子に雇われただけの姑息な魔導師に過ぎん」
 心なしか「だけ」の部分を強調する大樹。
 幼子にかっこ悪いところを見せるのを嫌いながらも、金髪少女との戦いはなのはに任せようと割り切る彼は、ある意味大物なのかもしれない。
「……さらばだ」
 出来ればもう二度と会いませんように、そう心の中で願いながら魔法を発動させる。
『―――ready, spiral boost!!』
「え、よりによってそっちかよ!? 少しくらい空気をよ―――って、のわぁぁぁ―――っ!?」
 閃光、そしてタービン音の残滓。
 転移魔法の類でも行使したのかと誤認してしまうほど、大樹の姿が一瞬で彼女等の前から掻き消える。
 少女は大樹がいなくなったことを確認すると、虚空に浮いていた残る三つのジュエルシードを自らのデバイスに戻した。
 静かに謝罪するバルディッシュに、少女は頭を軽く左右に振ることで答える。
「あいつっ! 次に遭ったときは絶対に喉笛を食い千切ってやる!」
「あの人が、あの子の協力者……」
 残された者の内、片方は悔しさを隠そうともせずに牙をむき出しにし、もう片方は彼我の戦力差を考え見て、珍しく焦りの色をその整った顔に映す。
 大樹サイド(正確には彼のみだが)からしてみれば、今回の件も偶然重なり合ってなんとかいった、言わば拾い勝ちだ。
 だが、少女サイドはまったく別の結論にたどり着いていたりする。
 魔力で圧倒的に劣っていながら、膨大な戦闘経験とある手段に特化されたデバイスを巧みに使い、確実に勝利という果実をもぎとる謎の男。
 なにより、あの加速力は厄介だと少女は考える。
 自分も加速系のスキルを使用することは出来るが、それでもあれだけの速度を生み出すことは出来ない。
 だいいち、あれだけの速度で移動すればいくらBJに守られているからといって、術者は相当なダメージを受ける筈だ。
 よくて失神、下手をすれば昏倒もあり得る。
 戦場で意識を失うなどもってのほか、となると、必然的にあの魔導師はあの加速度に耐えられるだけの強靭な肉体と精神力を有していることになる。
 だからこそ、いくら不意打ちに驚いて初動が遅れたとはいえ、かなりの速度で放った自分の一撃を防ぐことが出来たのだろう。
 しかもそれさえ、自分を無効化するために張られた罠の一つに過ぎなかったのである。
 まともに正面からぶつかればまず勝てない。
 そう少女は結論づけた……そのおよそ九割九分が勘違いだということにも気づかずに。
 さしもの彼女も、まさか加速する度に気絶&覚醒をくり返す馬鹿が実際にいるとは夢にも思わなかったのである。
 ついでにデバイスとの親和性もかなりのレベルと判断づけられていたりもするが、実際はガルウイングが主人を超過大解釈し、良かれと思って好き勝手に行動しているだけだ。
 事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもので、少女の偏った結論が一人のヘタレな男の運命を後に大きく左右することになる。
「……帰るよ、アルフ」
「うーっ、わかったよ、フェイト。―――あーっ、ムシャクシャするぅっ!」
 そして……黒衣の魔導師―――フェイト・テスタロッサとその使い魔アルフは、闇に溶け込むようにしてその姿を消すのであった。
 多大な誤解だけを残して……。


 ―――いっぽう。
「なあ、ガルウイング……」
『はい、なんでしょうか、マスター』
「俺のしたことは間違っていると思うか……? あのとき、俺は彼女から全てのジュエルシードを奪うべきだったのか……?」
『……その答えは自分にはわかりかねます。ただ、思い返せばあのときのマスターは立派でした。悪を裁くだけが正義に非ず。罪を憎んで人を憎まず。それでこそ、神速の騎士の名を冠する最強の魔導師です』
「……そうか。安心した」
『はい。そしていまも、ついさきほど魔導師との戦闘を終えたばかりだというのにも関わらず、こうしてこの町の平和を守るために待機している。自分は猛烈に感動しています……!』
「それは皮肉のつもり―――いや、マジだな。お前のことだから、マジでそう思ってんだよな!?」
『無論です。自分はマスターに嘘偽りの類を用いたことは一度たりともありませんっ!』
「それが余計に性質が悪いってなぜに気づかんっ!? だいたい、この状況みてどうしてそういう解釈が出来るんだ? 減速に失敗して、廃ビルの壁に埋まっているようなこの状況で!」
『ご冗談を。そのような無様な真似、マスターがなさるわけがございません。さあ、共にこの町の平和を見守ろうではありませんか!』
「ちょ―――っ!? さらにブースター吹かすような真似すんな! 減り込む、さらに減り込むからぁぁ―――っ!」


第四話  それは意図せぬ出会いなの……!? 最速の騎士とツンデレ少女


「……やれやれ、これはまた随分と乱暴なマスターに呼び出されたものだ」
「…………」
「い、いや、そこで黙ってられると逆に辛い―――ではなく、とにかく、ここに契約は完了した。これより我が身は汝と共にあり、汝の身は我と共にある」
「……で、あんた誰?」
「あぁ、その声とその台詞は実に君に合って―――ごめん、ホントのこというから殴らないでください。その愛らしい手を下ろしてくださいお願いします」
 分厚い鎧をまとったまま、へこへことその場で頭を下げる大樹。
 彼の正面には、どこか勝気な印象を与える釣り目の金髪少女が仁王立ちしていた。
 大樹がいるのは、あの廃ビルがあった地点から少し進んだ、俗に言う裏通り。
 ノリノリになったガルウイングがブースターを点火させた結果、ビルを貫通した彼がここに落ちてきたというわけだ。
 そして運悪く、この見た目からしてツンデレな少女に見つかってしまったということになる。
「あんまり馬鹿みたいなこと言っていると警察呼ぶわよ?」
「い、いや、だから俺はその……魔法使いとかだったり―――って、だからなんでそこで怒んのさ!? ホントのことちゃんと言おうとしてるでしょ!?」
「どこの世界に、そんなコスプレみたいなカッコした魔法使いがいんのよ!? なに、あんたその歳で魔法使いとかに憧れてんの? バッカじゃないの!」
「うわぁ、言い返せないのが辛いところだ……。あーじゃあ、英霊でいいよ。英霊。最初はこのノリでいくつもりだったし。……サーヴァント・ブースター。召喚に応じて馳せ参じました。なんなりとご命令を、マスター」
「じゃあ、死んで」
「ちょっ!? 展開早すぎ―――つか、意外とノリいいな!?」

「―――というわけなのさ。驚いた?」
「まあ、それがホントの話ならね」
「うわぁ、目の前で実践したのにまだ疑われてるよ、俺……。なけなしの魔力まで使ったのに」
 場所は変わって、あの裏通りから少しいったところにある公園。
 そこに大樹と少女―――アリサ・バニングスはいた。
 アリサに魔法というものを証明するため、最後の魔力を使って回復呪文を唱えた大樹は、アリサの疲労を少し和らげるのと引き換えに、とてつもない脱力感を味わっている最中である。
 当然、BJも解除されてしまっており、ガルウイングはいつものリストバンドの姿に戻っている。
 アリサがガルウイング―――正確にはその中央にはめ込まれた灰色の宝玉を目にし、一瞬なにか考え込むような素振りを見せたことに気づくものはいなかった。
 ベンチに座り、浮いた足をブラブラさせながらアリサが訝しげな視線を送る。
「そのジュエルシードっていうのが危ないのはわかったし、その〝魔法〟の力も万能じゃないっていうのもわかったわ。でも……」
「で、でも……?」
「正直、あんた頼りないのよねぇ……。なんか外見だけ強そうな、典型的な一般人って感じがするもの。とてもじゃないけど、そんな危ない世界で戦っていそうに見えないわ」
「うっわー、よく見てるなぁ。この子のほうがひょっとして、俺より魔法使いとしての才能あるんじゃね?」
〝いえ、マスターのほうが魔力は高いですよ。バリアジャケットを生成出来る魔力値を十とした場合、マスターはちょうど十。彼女の場合は、八といったところでしょうか〟
 ガルウイングが念話で説明してくれた内容に、大樹はガックリと肩を落とす。
 なんだかんだ言って、両者の違いはたった二しかなかったのだから。
 自分はそのたった二の違いのせいで、壁に減り込んだり気絶したりをくり返しているのかと糾弾したくなったのも仕方ないだろう……誰にとは言わないが。
 あと、ガルウイングがわざわざ念話を使っているのは、アリサにこれ以上メルヘンな世界を見せなくなかったためだ。
 自分のことならなんとか答えられるが、このデバイスが口を出すとろくなことにならない確信が大樹にはあった。
 もう色々と手遅れのような気もするが、こういったことに関してだけは、大樹は非常に諦めの悪い男なのだ。
「……まあ、いいわ。あんたが何者だろうと私には関係ないんだもの」
「散々人を引っ張っといてなんて言い草―――い、いえ、なんでもありません。というか、そろそろ帰らないとまずくないか? 君みたいなちっちゃ―――じゃなくて、可愛い女の子がこんな時間に外にいちゃ危ないよ」
「わかってるわよ。迎えの車も待ってるだろうし、私はそろそろ行くわ」
 ぴょんと飛び降りるようにしてベンチから離れたアリサは、数歩進んださきで不意に立ち止まった。
 振り返らず、大樹に背を向けたまま静かな口調で問いかける。
「ねぇ……あんたみたいな〝自称〟魔法使いってさ、みんなそんな感じの宝石身に着けてるの?」
「じ、自称って……。 ま、まあ、少なくとも俺が知っている魔導師は持ってるな。他の魔導師全てがそうだとは限らないけど。それがどうかしたか……?」
 頭の中に、自分よりも十近く年下なのに砲撃魔法をバンバン使う白い少女を思い浮べる。
 アリサはその答えにしばし沈黙したあと、ぼそりと呟いた。
「……ううん、なんでもないわ」
「…………?」
 さしもの彼も少女の様子に違和感を覚えた。
 妙なところで甘い彼は、なにか気になることでもあったのかと尋ねようとし、しかしそれよりも早くアリサが再度言葉を紡ぐ。
「あんた最初に会ったとき、言ってたわよね。『なんなりとご命令を』って」
「え……あ、ああ、まあね。ただ、いますぐ死になさいとかいうのはゴメンだぞ!? 俺はまだ遣り残したことが……あるかはわからないけど、死にたくはない」
 生きる目標というのが咄嗟に見当たらず、少しばかりトーンダウンした口調で答える。
 彼は気づいていなかったが、いまの彼は「生きる」こと自体を生きる目標としているのだ。
「そんなの最初から期待してないわよ」
「ですよねー」
 そうは言いながらも、どこかその声音は嬉しそうな大樹。
 性格に難があるとはいえ、美少女にいきなり「死んで」と言われたことを結構気にしていたのだった。
「その代わりと言ってはなんなんだけど……」
「おう。俺が魔法使いだってことを黙っててくれるなら、大抵のことはするよ。お金関係は無理だけどさ」
「んなことあんたみたいなのに頼まないわよ。自分で言うのもおかしいけど、生憎とお金には困ってないから」
「ですよねぇ……」
 今度の返事は実に覇気のないものだった。
 まあ、無理もない。
 アリサが身に着けているのは、衣服に疎いと言われている大樹ですら名を耳にしたことのあるブランド品ばかりなのだから。
 万年金欠の彼からしてみれば、この金髪少女は高嶺の花といっても過言ではなかった。
 もう住む次元が違いすぎて、嫉妬心すら忘却の彼方へと旅立ってしまっている。
「じゃあ、君は俺に頼みたいんだ?」
 大樹が問いかけると、アリサは首だけを彼のほうに向けて呟いた。
「……守ってあげてほしいのよ」
「守る? いったい誰を……?」
「……友達。私の大事な友達の内の一人よ。最近、ちょっと悩んでいるみたいだから。あの子、いつもはニコニコしているくせに頑張りやで……馬鹿みたいに頑固者だから」
 その友達のことを思い出しているのか、アリサの表情は硬い。
 いっぽう、いきなり友達を守ってくれと言われた大樹は混乱の極みにあった。
 そもそも、そういった仕事は警察に任せるべきじゃなかろうか……?
「あ、あのさ、そういったことは本来―――」
「……なに? ご主人様の命令、聞けないっていうの?」
「―――あ、ああ、了解した。ブースターの名に懸けて、その子を守り抜くことを誓おう」
 説得しようとし、年齢一桁の少女に半眼で睨みつけられて呆気なく散る大人。
 自分はどうやらまたしても地雷を踏んでしまったようだ。
 まさか口から出任せで言った「契約」を持ち出してくるとは、夢にも思わなかった。
「そ。じゃあ、頼んだわよ。……ああ、そうそう。その子になにかあったら、絶対に許さないからね?」
 軽く後ろ手を振って立ち去ろうとするアリサ。
 大樹はそんな彼女の小さな背を見つめ、一言。
「くっ、了解だマスター。地獄に―――い、いえ、なんでもありません」
 結局、彼は魔力の有無に関わらず、上から命令されると逆らえない人種なのだった。
 典型的な社会の歯車、ある意味、日本人らしい日本人である。
 アリサが公園から出て行ったあと、大樹は夜風に流れる雲を仰ぎながら困った風に言った。
「でもさぁ……守るって言ったって顔形わからん子をどうやって守ればいいんだ……?」
『とりあえず、目につく範囲全ての人間を守ってみてはいかがでしょう?』
「お前、とりあえずの使い方、絶対に間違ってんぞ……」
『お褒めに預かり、光栄の極致にございます』
「……誠氏ね」

「遅かったね……? なにかあったの?」
 車に乗り込んだアリサは親友―――月村すずかの問いに軽く首を左右に振って応えた。
 彼女が命ずると、塾の前で停止していた車がゆっくりと動き出す。
「あのね……まだなのはちゃんのこと、怒ってる?」
 こちらの顔色を窺うようにして訊いてくるすずかに、アリサは苦笑しながらも言葉を返す。
「とーぜん! 言ったでしょ、怒りながら待つって。それに……」
「それに……?」
「あの子には一応、護衛をつけといたから大丈夫よ。まあ、あんまり頼りにはならないかもしれないけど……でも、きちんと約束だけは守ってくれる。そんな気がするから」
「ふぇ?」
 アリサの言っている意味がわからないと、すずかが小首を傾げる。
 対するアリサは、頬を若干膨らませることでその話題を強制的に打ち切った。
「もう、すずかは気にしなくてもいいの! とにかく、あの子は―――なのははきっと大丈夫だから。だから私たちはいつもどおり、あの頑固者を学校で出迎えてあげればいいのよ」
「……うん♪」
 花のような笑みを浮かべながらすずかは頷く。
 そんな彼女の純粋無垢な笑みに悪戯心が芽生えたアリサは、人差し指を立ててすずかの頬を突っつき出した。
「えい、えい、えい」
「え、や、やめてよ、アリサちゃん!? やーめーてー!」
 後部座席で騒ぐ二人をよそに、車は渋滞を抜けて月の照らす道を走っていく。
 両手で頬を押さえながら「やめてー」を連発するすずかを視界に映し、アリサはついさきほど知り合ったばかりの男のことを静かに思い浮べた。
 そして胸中で呟く。
 その願いが、彼を通して彼女に伝わることを祈って。
(……あんまり無茶しないでよね、なのは)

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この記事のコメント
まるで、アリサが(原作初期の)ルイズのようだ……。
2008-09-01 Mon 08:44 | URL | #-[ 内容変更]
マスターはツンデレ
>少女の偏った結論が一人のヘタレな男の運命を後に大きく左右することになる。

どう左右するのか今から楽しみです♪

>「―――あ、ああ、了解した。ブースターの名に懸けて、その子を守り抜くことを誓おう」

アリサの思いはなのはに伝わるのか!
責任重大だぞ!大樹!

いい人と書いて人がいいと読む。
大樹のこれからの活躍が楽しみです。では、
2008-09-01 Mon 21:05 | URL | : #-[ 内容変更]
続編希望!
なのは嬢だけでなく、ありさ嬢にもフラグが?

でも、この主人公だと、傭兵とか言いながら、無報酬で戦い続けることになりそうな・・・(笑)

ストックの公開が終わっても、ゆっくりで良いので続編を希望します。
2008-09-01 Mon 21:57 | URL | shahil #GOb6M/sw[ 内容変更]
大樹を待ち受ける運命とは…
こんばんは、ベリウスです。リリなの勘違い第2話&第3話、読みました。フェイトから有らぬ勘違いを受けた大樹に降りかかる運命とは一体どんな運命か、これからの物語の展開が非常に楽しみです。これで、途中までしか話が無いのが非常に残念です。ぜひ最終回までを執筆して頂きたいのですが、零の使い魔や変えられた者の更新もしなければならないネクオロさんへの負担を考えると……。
2008-09-03 Wed 18:58 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
訂正
スミマセン、リリなの勘違いの話数を間違えて2話&3話と書いてしまいました。正しくは3話&4話なのに……。こんな間違いをして本当にスミマセン。
2008-09-03 Wed 19:05 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
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