ネクオロでした
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零の使い魔。 ~聖十字の騎士~ 第六話
2009-01-01 Thu 00:00
ドイツの結婚式って……もうね、本当に命がけだ。

                                                   <ダンケ>

あの使い魔……本当にただの平民なのか?

                                                   <ワルド>
 
 ~光~

 シシャクさんが船を強引に貸し切って、いざ出発したあるびおん温泉への旅。
 船が空を飛ぶことに最初戸惑いはしたけれど、それすら霞むほど驚くことが今までたくさんあったことに気付き、自己完結した次第であります。
 あと、今回だけ敬語っぽくない敬語なのは仕様です。せめてもの気分転換なのです。
 腕の火傷は相変わらず痛く、泣き出しそうな心を抱えての船旅。
 しかし、僕は泣きません。
 何故なら、僕の隣にはルイズがいるからです。
 船の甲板で座り込む僕の肩に頭を預ける様にして、彼女は押し黙っております。
 泣きませんではなく、泣けません。
 何故か彼女がやたらとこっちを見てくるからであります。
 なにか言いたいことがあるのか、それともただなんとなく見ているだけか。
 詳しくは解りかねますが、今の僕が言いたいことはこれに尽きます。
 ―――早く、別の方を向いてください。じゃないと弱音一つ零せないので。
 そんな僕の願いは儚くも夜の闇に飲み込まれ、気付いた時には朝になっていました。
 どうやら自分でも判らぬ間に眠ってしまっていた様です。
「あるびおんが見えたぞー!」
 船の乗組員の人がそうどなりました。
 ……浮いてます。
 大きな島が一つ丸ごと、空に浮かんでおります。
 これは夢でしょうか、僕はまだ夢の続きを見ているのでしょうか……なんてね。
 なにを今更、島が一つ浮いていることぐらいじゃ僕はもう驚きません。
 もうね、目の前で人が四人くらいに分身でもしないと驚かない自信があります。
 仮にそんな場合に出くわした時は、まず間違いなくそいつは幽霊でしょう。
 忍者とか絶対に思いません。
 何故ならココはドイツ。ジャパニーズ・シノビがいるわけないのですから。
 「ダンケ、知ってる? アルビオンは通称、白の国って呼ばれているのよ」
 どうしてか判る?
 そう訊かれ、島を見て納得した……ついでに敬語もやめた。
 慣れないことをするのはひどく疲れることが判ったからだ。
 こんなのじゃ痛みを誤魔化すことも出来やしない。
 あるびおんから流れ落ちた水が、大陸の下半分を包んでいた。
 それが霧になって、あたかも島全体が白く染まっている様に見える。
 ……なるほど、あれが温泉の国・あるびおんというわけか。
 さすがはドイツ、温泉一つとっても規模がでかい。
 まさか島一つ丸ごと温泉宿にするとは思わなかった。
 あの流れ落ちている水もきっと温泉の残り湯とかなのだろう。
 そう考えると、白い霧が湯気に見えてきた。
 あれだ、あれ。
 日本で話題の源泉かけ流しってやつだ。
「右舷上方の雲中より、船が迫ってきています!」
 船員の人がそう叫んだ。
 確認して見れば、確かに空飛ぶ船が近付いてきている。
 旅館の人だろうか?
 予約とかした覚えはないが、シシャクさんとかがこっそりやっておいてくれたのかもしれない。
 ハネムーン? だからな。 用意は万端なんだろう。
 問題はこっちが連絡していないのに、俺たちがこの船にいると向こうにどうやって伝わったかだが……まあ超科学でどうにかしたんだろう。
 そんなことより温泉だ。きっと火傷に効く湯とかあるに違いない!
 旅館の船に乗り込むべく急いで立ち上がる。
 ズキズキというこの痛みと少しでもお別れ出来ると思うと、自然とテンションは上がっていた。
 旅館の船から大砲が撃ち込まれる。
 祝砲だな、歓迎を表しているのだろう、それくらい俺でも知っているぜ。
 真っ黒い船体が実にこう渋い感じがして、旅館っぽさを表していると思う。
 ホテルは白が似合うけど、旅館は黒が似合う。
 黒は日本の色……って、おかしいな。ここドイツだよな……まあいいや。
 船員の人たちがアワアワしている気がするが、おそらくは彼らも温泉宿に泊まれるので浮かれているのだろう。
 そうこうしている内に、温泉船(略しました)から旅館の人たちがぞろぞろとこちらに移ってきた。
 むぅ、なんと言えばいいのだろう。実にワイルドな歓迎の仕方だ。
 まさかロープをこちらの船に引っかけて、そこから渡って来るとは思わなかった。
 おまけに銃やら剣やら持っている。
 これじゃあまるで海賊……いや、空だから空賊か?
 先頭を来るのはボサボサ髭を生やし、左目に眼帯を付けた男。
 着ているのは真っ黒に汚れたシャツに―――って、旅館の人にしてはやけに格好がラフ過ぎる気が……。
「船長はどこでぇ」
「わたしだが……」
 船長さん、登場。
 心なしか、船長さんの顔が青白い気がするのも気になる。
 もしかして彼らは旅館の人ではないんじゃ……。
 演出にしてはやけに凝りすぎている気がする。
「船の名前と積み荷は?」
「トリステインの『マリー・ガーラント号』。積み荷は硫黄だ」
 旅館の人(じゃないかもしれない)はニヤリと笑うと、船長の被っていた帽子を自分の頭に乗せた。
 そしてこう言い放つ。
「船ごと全部買った。料金はてめえらの命だ」
 ……訂正。
 確実に旅館の人じゃないらしいです。
 ってことは本物の空賊ですか!?
 おぉっ!? は、初めて見た……。
 俺の中の空賊のイメージは某赤い豚のマンマ○ート団しかないんだけど……実際はどうなんだろう?
「おや、貴族の客まで乗せてるのか?」
 旅館―――じゃなくて空賊の人がルイズに気が付いたらしい……あ、シシャクさんもいたんですか、気付かなくてすみません。
 ルイズの顎を手でクイッと持ち上げる空賊。
「こりゃあ別嬪だ。お前、俺の船で皿洗いをやらないか?」
 ……む。
 さすがにこれを見て見ぬフリをするのは使い魔としてどうなんだろう?
 ここはやはり空賊の蛮行を止めるべきじゃなかろうか……体調が万全だったら。
 真に残念なことに今の俺は絶不調なのだ。
 本当に本当に悔しいが、現在の俺にルイズを助ける力はない。
 しかし大丈夫だ、何故ならこの場には彼女の未来の夫たるシシャクさんがいる。
 さあシシャクさん、お得意の魔法でこの不届き者に裁きを!
 そう思い、視線を送るがなんの反応も示さない未来の夫様。
 ……どうしたんだろう?
 やっぱりシシャクさんも怖いんだろうか……まあそれは仕方ないとは思うけど、自分の未来の奥さんは守って欲しい。
 こっそりとシシャクさんの背を押そうと、手を差し伸ばす。
 おそらく踏ん切りがつかないだけだろう。
 後押ししてあげればきっと、勇気を出して言ってくれるはず。
 空賊にバレないよう、慎重に手を伸ばす。
 あと少し、あと少し。
「汚い手で触らないで!」
 もう少しで到達―――というところで、ルイズが空賊の手をはねのけた。
 慌てたのは当然、俺だ。
 その役目は本来、シシャクさんのはずだった。
 なのに、実際にそれをしてしまったのはルイズだった。
 彼女の性格を知っていれば予想出来たのかもしれないが、迂闊だった。
 そして、もう一つ迂闊だったことがある。
 それは、予想外の出来事が起きたせいでシシャクさんが動いたこと。
 彼がルイズの手を押さえようと体を動かしたせいで、俺の手まで狙いを外してしまったのだ。
 空を切った俺の手はそのまま正面のルイズをすり抜け、あろうことか空賊の顎に決まってしまった。
 俗に言う、掌打というやつだ。
 おまけに妙に力が入っていた為か、突き上げる様に放ってしまったから性質が悪い。
 脳を揺さ振られたらしく、空賊が尻餅をつく。
 バランスを崩され、俺も掌打の勢いで前につんのめる。
 そのまま空賊の上に倒れ込み、「ぐはっ」という短い悲鳴が耳朶を打った。
 右手の二の腕にかかる、妙に生温かい嫌な感触。
 確かめたくはないが、このままというわけにはいかない。
 おそるおそる確認すれば、俺の二の腕が見事に空賊の首に押し付けられていた。
 それも俺の全体重をかけて、である。
 そりゃあ……苦しいわなぁ。
 胸中で「すみませんでした!?」とか言いながら身を起こそうとすれば、ガチャリという嫌な音が耳に届く。
 思わず体が止まってしまった。
 ごめんなさい空賊さん、苦しいだろうけどもう少しだけ我慢してください。
 恐々と周囲に目を向けると、銃やら剣やらが一斉に俺の方へ突き付けられていた。
 いきなり絶体絶命である。
 もうね、ここまできたら開き直るしかない。
 これまで多くの苦労を重ね、俺はその域に達していたのだ。
 まずは……そうだな、誤解を解く事から始めようか。
「武器を……下ろせ。……危害を加える意思は……ない」
 真摯な気持ちが伝わる様に、いつも以上に目に想いを乗せながらそう静かに告げる。
 空賊の仲間たちの空賊にその気持ちが少し伝わったのか、彼らはジリジリと後退してくれた。
 だがしかし、依然として武器は手にしたままだ。
 大丈夫だ、気持ちはもう伝わっているはず。
「武器を……下ろせ。こちらに危害を加える意思は……ない。これは二度目だ。その意味……判るだろう?」
 そう、それだけ想いを込めたということだ。
 こちらに攻撃を行う意思はありません。これはまったくの偶然です。
 その気持ちが向こうにもしっかり伝わったと思う。
 俺のその考えは正しかった。
 両手を上げ、空賊の仲間たちが武器を甲板に放ったのだ。
 あー、良かった。本当に良かった。
 真摯な態度で臨めば、例え空賊の人とも分かり合えるということだな。
 胸中で感動を味わいながら身を起こす。
 空賊も、喉を押さえながらヨロヨロと立ち上がった。
「手荒な真似を……失礼した」
 俺にしてはストレートな謝罪だと思う。
 しかし、どういうわけか空賊の人は俺の謝罪を聞いて目を丸くしてしまった。
 悪いことをしたのなら、例え相手が誰だろうと謝る。
 これは当然のことだと思うが、ドイツでは違うのだろうか。
 首を傾げていると、空賊の人が俺にだけ聞こえる様な声音で囁いた。
「君は気付いているのか、私のことに」
 ……?
 気付くも何も貴方はそこにいるじゃないですか。
 そういう意味合いで一つ頷き、「気付かない方がおかしいだろ」と言っていく。
 幽霊やお化けじゃあるまいし、目の前に立たれて気付かないわけがないじゃないのさ。
 ―――ハッ、まさか実はこの人は幽霊……って、そんなわけないよな。
 ルイズや船長さんだって普通に会話していたぐらいだし。
 空賊は俺の言葉をどう捉えたのか、観念した様に溜め息を吐くと再び囁いた。
「まったく……敵わないな。あとで事情は必ず説明する。今はこちらの指示に従ってくれはしないか?」
「……ああ」
 従うもなにも、端から逆らうつもりなどまったくないわけで。
 肯定の返事を返すと、空賊は尻餅をついた際に落としていた剣を拾い上げ、その切っ先を俺の首に突き付けた。
「ダンケっ!?」
「コイツは人質だ。てめえら貴族共は俺たちの船にきな。たっぷりと歓迎してやるぜ」
「……判った」
「……わかったわよ」
 空賊の言葉にシシャクさんが表情を殺して頷き、ルイズが悔しそうに下唇を噛む。
 一方の俺は、申し訳なさそうな視線を彼らに向けるだけが精一杯だった。
 うぅ、足手まといな真似ばかりして、本当に申し訳ありません。
 しきりに頭を下げる(無論、胸中で)俺と貴族の御二方は、こうして無抵抗のまま空賊の船に連行されることになったのだった。


 ~闇~

 謎の男の襲撃をなんとか乗り越え、ルイズたちはようやくアルビオン行きの船に乗り込んだ。
 甲板にいるのはルイズとダンケの二人だけだ。
 少女は信頼出来る使い魔の肩に頭を乗せ、風に身を委ねていた。
 ワルドは足りぬ分の風石を自分の魔法の力で補う為、席を外していた。
 チラリ、とルイズがダンケにこっそり視線を向ける。
 黒衣の使い魔は腕の痛みなどおくびにも出さず、デルフを抱く様にして船体に背を預けていた。
 ―――チラリ。チラリ。
 ダンケの様子が気になるルイズは何度も彼を横目で見つめる。
 しかし、青年はそれに気付いた様子もなく、静かに前だけを見続けていた。
(ダンケ、なにを考えているのかしら? やっぱり傷が痛いのかも……そうよね、あんなひどい怪我してるんだもんね)
 己が使い魔の傷跡を思い出し、思わず泣き出しそうになるルイズ。
 だが、寸前のところで涙を堪えた。
 そうだ、もう簡単には泣かぬと誓ったのだ。
「あるびおんが見えたぞー!」
 船員の一人がそう叫んだ。
 少し腰を浮かし、覗き見てみれば確かに空を巨大な大陸が浮かんでいた。
 浮遊大陸アルビオン。
 それがあの大陸の名前だった。
「ダンケ、知ってる? アルビオンは通称、白の国って呼ばれているのよ」
 会話を振る絶好の機会だ。
 そう思い、ルイズは思い切ってダンケに声をかけた。
 青年はいつもと同じ無表情のまま、顔をわずかに少女の方へ向ける。
 そしてしばしアルビオンを見つめたあと、「今わかった」とだけ呟いた。
 知らないと言ってくれれば説明出来たのに、と胸中で少しルイズは残念がる。
 だがまあ、見ただけで判ってしまうのも無理はないだろう。
 大陸から溢れ落ちた河川の水が、空へと流れ落ちている。
 大量の水は途中で白い霧となり、大陸の下半分を白で塗り潰すのだ。
 これがアルビオンが白の国と呼ばれている由縁だった。
 青年は一言も漏らさず、ただただ白の国を見つめている。
 その表情にはどこか、哀愁の念の様なものが感じられる……そんな気がルイズにはした。
 あの幻想的な光景を眺め、過去を思い浮べているのかもしれない、と。
 その時、先ほどとは別の船員が、船が近付いていると叫んだ。
 薄い霧の中に目を凝らせば確かに、黒塗りの船が一隻、こちらへと迫って来ている。
 基本的に黒は不吉を表す色だ。
 ルイズの胸に不安がこみ上げてくる。
 そして彼女の憂いは的中した。
 併走した船からロープが放たれ、そこから屈強な男たちが乗り込んできたのである。
 半ば無理やり停止させられた船。
 乗り込んできたのは剣や銃で武装した荒くれ者たち。
 少女は知らず知らずの内に、青年の服を掴んでいた。
 ワルドが船室から出て来るものの、その顔にはあまり覇気が感じられない。
 訊けば、風石を補う為に精神力を使い果たしてしまったのだという。
 これで唯一の頼みの綱は、負傷しているダンケだけになってしまったわけだ。
 男たち―――空賊の先頭をいくのは、無精髭を生やした眼帯男だった。
 どうやらこの男が空賊たちの頭の様だ。
 頭は船の名と積み荷を船長から聞き出すなり、こう言い放った。
「船ごと全部買った。料金はてめえらの命だ」
 ニヤリと笑い、その目がルイズに止まる。
 身なりで、彼女たちが貴族だと見抜いたのか。
 空賊の頭はルイズの顎に手をやり、顔を持ち上げると下品な笑い声をあげた。
「こりゃあ別嬪だ。お前、俺の船で皿洗いをやらないか?」
 ―――プツン。
 その時、ルイズの中でなにかが切れた。
 怖いとかどうしようとかいうのを全て追い越し、怒りだけが最前線へと躍り出る。
 気付いた時にはルイズは頭の手をピシャリとはねのけていた。
 胸中でしまったと呟いた自分もいたが、怒りによってそれすら抑え込む。
「下がりなさい。下郎」
 怯む様子も見せずに、頭を見据えて言い放つ。
 魔法が使えない、それがなんだと言うのだ。
 敵に背を向けぬ者を貴族というのだ。
 ここで引いてしまっては、空賊風情に舐められてしまっては、あの青年の主人として誇ることなど一生不可能じゃないか。
 負けない、負けるもんか!
 ぎょろりと睨まれ一瞬怯みそうになるものの、胸を背一杯張りながら睨み返す。
 心とは裏腹に、体は正直だった。
 足は震え、涙腺が少しずつ緩みそうになる。
 それを懸命に堪え、ルイズは絶対に空賊から目を逸らさなかった。
 そして、ついにその想いは報われる。
 ルイズの視界の端を影が横切ったと思った刹那、空賊の頭はドサリと尻餅をついていた。
 いつの間にか、少女の傍らには青年の姿があった。
 体を半身だけずらし、右手を真っ直ぐに伸ばしたその様はあたかも武神のよう。
 そう、ダンケが空賊に強烈な一撃をお見舞いしたのだ。
 頭を攻撃された部下たちが一斉に武器を構える。
 ―――しかし。
 それよりも尚、ダンケの動きは速かった。
 そのまま滑る様に頭の体に馬乗りになると、首もとに二の腕を押し付けて一瞬で無力化する。
 空賊の頭は自分の身に一体なにが起こったのかさえ、理解出来てはいないに違いない。
 それだけ、青年の動きは速かった。
 戦闘において、リーダーを狙うのは基本中の基本。
 頭を失った群は統制を欠き、どれほど優れた兵だろうと烏合の衆へと成り下がる。
 それを黒衣の青年は、なんの躊躇いも迷いもなく成し遂げたのだった。
 頭を押さえられた部下たちに戦慄の走る様が、傍目で見ているルイズにもよく判った。
「武器を……下ろせ。……危害を加える意思は……ない」
 いつも以上に剣呑な光をその瞳にたたえ、ダンケが静かに―――だが冷たく告げる。
 それは脅し。
 ほんの少しでも抵抗すれば頭の命はないという、命のやり取りであった。
 傭兵の―――いくつもの戦場を渡り歩いた本物の戦士、その一端を垣間見て、ルイズは自分でも気付かぬうちに己の肩を抱いていた。
 体が震えている。
 自分に向けられているわけでもないのに、その殺気は周囲から温度を奪っていた。
 ルイズは下唇を噛み締める。
(こ、怖がってたまるもんですか! あいつは私の使い魔なの! 自分の使い魔にびびる主が、一体どこにいるって言うのよ!)
 爪が肩に食い込むほど強く握り、恐怖に精一杯抗う。
 青年が戦っているのは自分を守る為だ。
 そう考えると、少しずつ体の震えは収まっていった。
 ダンケの殺気を浴びた空賊たちがジリジリと後ずさっていく。
 その顔には一様に、拭い様のない恐怖が張り付いていた。
 だがしかし、賊にしては忠誠心が高いらしく、誰一人として頭を置いて逃げ出す者はいない。
 その様子に呆れる様に、ダンケが再び口を開いた。
「武器を……下ろせ。こちらに危害を加える意思は……ない。これは二度目だ。その意味……判るだろう?」
 ―――次はない。
 それは誰の目から見ても明らかな最後通牒だった。
 ダンケから放たされる殺気は間違いなく本物。
 それを否応なしに痛感させられ、空賊たちは武器を甲板に放る事しか出来なかった。
 カラン、と乾いた音をたてて積み上げられる武器の山。
 ここまで効率良く敵を従えさせることの出来る術を、ルイズは未だかつて目にしたことがなかった。
 こちらの言い分を聞いた空賊たちに対し、ダンケの対応は実に紳士的なものだった。
 口にしていた通り、頭を素直に解放したのだ。
 その際、ダンケが頭になにか呟いた様な気がしたが、残念なことにルイズの耳までそれは届かなかった。
 そしてその後、実に呆気なく、青年は頭に刃を突き付けられることになる。
 何の抵抗も見せず、脅える様子もなく、ダンケは静かに状況を見守っていた。
 一体空賊の頭と如何なる会話をしたのか。
 それは彼らにしか判らないことだった。
 この状況でルイズに出来ることはただ一つ。
 これ以上、自分の大切な使い魔が傷付かぬ様、空賊たちの言い分に従うことのみだった。
 ―――そして通された空賊船の中で、彼女らは信じられない光景を目の当たりにすることになる。

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この記事のコメント
新年初更新待っていました!!
今年もダンケ(周りの)勘違いの嵐が吹き荒れるわけですね。
そしてついに登場王子様(海賊仕様)
彼もまた勘違いし新たなカオスを形成していく事でしょう。
それはそうと身体には気をつけて下さいね。
更新も大事ですが何よりも貴方の身体が一番大事ですから
2009-01-01 Thu 02:29 | URL | ニャア #vQU5PwVA[ 内容変更]
やば!!久し振りのダンケ!!
いいねえ~!!おもしろい!!!最高!!次回も期待してまっせ!!
2009-01-01 Thu 04:03 | URL | w #-[ 内容変更]
更新、ご苦労さまです。
おはようございますネクオロさん、ベリウスです。新年早々に小説を更新して頂きありがとうございます。微熱がある状態にも関わらず新年最初に更新して頂けるとは……。今年も他の読者の方達と共々どうぞよろしくお願いいたします。
2009-01-01 Thu 07:56 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
更新お疲れ様です。
ダンケの勘違いされっぷりは最高です!この後の展開がどうなるか楽しみです。次回更新頑張ってください!
2009-01-04 Sun 01:58 | URL | ユリウス #JalddpaA[ 内容変更]
ダンケ、・・・このまま行くとレコンキスタの軍勢と真正面からぶち当たりそう。→流されていくままに。


2009-01-30 Fri 20:48 | URL | レネス #DexK2noU[ 内容変更]
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