ネクオロでした
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零の使い魔。~聖十字の騎士~ 第八話
2009-02-15 Sun 13:49
今回は短めです。次の次くらいで、一度零魔は終わりです。



反抗期って……怖いですね。
                                                   <ダンケ>

パーティはあんまり楽しくなかった。
 別に温泉が見付からなかったからじゃない……いや、それもあるにはあるが、何処となく悲壮感漂うパーティだったのであまり乗り切れなかったと言うべきか。
 ……戦争かぁ。
 革命やら貴族派やらいう話はさっぱり判らない。
 ただなんとなく、ここにいる人たちは明日には死ぬんだと思った。
 現実味ないというかなんというか……夢幻の様に感じるとはまさにこのことか。
 ドッと疲れを感じて、もう寝てしまおうと思い至る。
 給仕の人に寝床の場所を聞き、いざ移動をと思ったところで背中を叩かれた。
 振り向けば、シシャクさんが立っている。
「君に言っておかねばならぬことがある」
「……なんだ?」
「明日、僕とルイズはここで結婚式を挙げる」
「……そうか。了解した」
 そんなことは端から知っている。
 既に知っていることを伝えるなんて、よほどルイズとの結婚式が嬉しい証拠だろう。
「驚かないんだな。まあいい。君も出席するか?」
「……いや、遠慮しよう」
 しばし悩んだあと、そう言った。
 ルイズには申し訳ないが、俺には既に予約があった。
 明日は朝一で温泉を探すと決めていたのだ。
 ここまで来た以上、一風呂浴びずに帰るなど俺の中では有り得ない。
 重く暗い話を吹き飛ばすには、是が非にでも温かい温泉の効能が必要なのだ。
「判った。では、君とはここでお別れだな」
「……ああ。ルイズを……泣かせるな」
 夫としてしっかり支えてやってくださいねという、俺なりの祝いの言葉。
 シシャクさんはそれにしかと頷いてくれた。
 よし、彼に任せておけば大丈夫だろう。
 俺は温泉探しに専念すればいい。
 ……いや、どうして俺がここまで温泉に固執しているかは自分でも判らないが。


 ワルド子爵と別れて部屋へ戻る途中、ダンケはルイズと出会った。
 少女は一人、月を見て泣いていたのだ。
 ウェールズの説得に失敗し、周囲の人間は明日には死んでしまうというのにそれを誇りだと言い笑っている。
 ルイズにはそれが正気の沙汰とは到底思えなかった。
「ダンケ……」
 使い魔の姿に気付いたルイズがついと振り返る。
 今までずっと泣いていたのか、その目元は赤く腫れていた。
 ルイズはダンケに駆け寄り、抱き付いた。
 青年の胸に顔を押し付けると、そこから嗚咽が聞こえてくる。
 立ち尽くすダンケ。
 表情にこそ出ていないものの、大いに戸惑っているのである。
 彼の今までの人生に女性の姿はほとんどなく、こういった場面になにをすればいいのか判らないのだ。
 困り果てたダンケは、とりあえず尋ねてみることにした。
「何故……泣いている?」
「……この国なんて嫌い。誰もあとに残される人たちのことなんて考えてないんだわ。皆自分のことばっかり。どうして、どうして恋人が逃げてって言ってるのに、ウェールズ皇太子は死を選ぶの? 他の人もそう。大事な人だっているはずなのに……。判らない。判りたくもない……!」
 ルイズの呟きをダンケは黙って聞いていた。
 ……いや、正確には少し違う。
 黙って聞き流していた、が正しい。
 別に悪意あってのことじゃない、ただ少女に抱き付かれ、頭が沸騰していただけだ。
 どうしようか肩くらい抱くべきか、いやいやそんな馴れ馴れしい真似、出来るわけがない。
 脳内会議は未だかつてないくらい白熱していた。
「……早く帰りたい。トリステインに帰りたいわ」
 少女の独白は続いている。
(い、いや、だけどこの場合は仕方ない……待て待て。仮にもルイズは奥さんになるわけで……)
 青年の葛藤は続いている。
 そうこうしていると、ルイズがハッとした様な顔をした。
 ゴソゴソとポケットをまさぐり、缶を一つ取り出す。
 蓋を開けるとツンと刺激臭が鼻に届いた。
 中身を指ですくうと、火傷を負っているダンケの腕にすりこんでいく。
 スッと痛みが引いていく気がした。
 それは気のせいではない、ルイズがダンケに塗ったのは火傷に効く水の治療薬だった。
「……礼を言う」
 辛うじて、ダンケがそれだけ喉から搾り出した。
 依然として少女は彼にしがみ付いたままである。
 初心な心を持つ彼からしてみれば、少女の一挙手一投足に敏感に反応せざるを得ない。
 火傷の痛みなど、とうの昔に忘れていた。
 痛みには昔から耐性があるのである。
「……どうしてそんな顔をするの? 私、なにかいけないことをした?」
 いつも以上に表情の硬いダンケに、ルイズは気付いてしまった。
 君に密着されて色々と大変でした。そして今もそれは続いています。
 などとは口が裂けても言えず、とりあえず「すまない」と謝罪の言葉だけ口にする。
「どうして? どうして謝るの?」
「……すまない」
 なんとなく謝ったとも言えず、やはり再び謝罪を口にするしかないダンケ。
 ふにゃっとルイズの顔が泣きそうになった。
 彼女はダンケが怒っていると思ったのだ。
 その理由を考え、思い当たる。
「……そうよね、どうせ私には判らないわよ。あんたたち、男が考えることなんて。いいわよね、あんたたちは。戦場で名誉の死を遂げられればいいんでしょ!? 残される人のことをこれっぽっちも考えないで、よくそんなことが言えるわ!」
 ダンケもウェールズたちと同じ様に、愛する人を悲しませてまで名誉の死を選ぶのか。
 そう考えると、ルイズはたまらなく悲しくなった。
 男にはそれが当然なのかもしれないが、少女には愛する人より大事なものがこの世にあるとは思えなかったのだ。
 ダンケが怒っているのは、自分たちの生き様を否定されたからだ、そうルイズは思ったのだった。
「主……落ち着け」
「私は落ち着いているわよ!? 本当はあんただって私みたいなののお守りより、ここで王子様たちと一緒に戦って死ぬ方がマシだとか思ってるんでしょ!? いいわよ、好きにしなさいよ。私のことはワルドが守ってくれるんだもの。名誉の死なりなんなり好きにすればいいわ! あんたなんて大嫌いよ!!」
 ルイズの平手がダンケの頬に当たる。
 避けようとすれば簡単に避けられたのに、止めようとすれば簡単に止められたのに。
 甘んじてそれを受けたダンケに、ルイズは言い様のない怒りを覚えた。
 ……いや、実は彼なりに避けようとはしていたのだが。
 だが少女のそれは予想以上に早く、そして青年の反射神経は予想以上に悪く、もろにヒットしてしまっただけであって。
 そんなこととは露知らず、ルイズはもう一度「大嫌い!」とだけ叫ぶと青年に背を向けて走り去ってしまった。
 少女の心はぐちゃぐちゃに掻き乱されていた。
 理解出来ぬことが連続で起こり、正常な判断が出来なくなっていたのだ。
 残されたのは突然キレられ、突然叩かれた哀れな青年ただ一人。
(……反抗期ってやつでしょうか……)
 女心のおの字も判らないダンケは胸中でそう呟き、呆然と叩かれた頬を手で押さえた。

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この記事のコメント
ダンケの歩む道とは…。
ダンケとルイズ、お互いの思いがすれ違いながら、時間は無情にも過ぎていく。勘違いしているとはいえ、お世話になってるルイズに大嫌いと言われたダンケはどうするのか……。次回の第九話が楽しみですね。
さて、零の使い魔の更新も楽しみですが、お時間が少しでも有ればリリカル勘違いもそろそろ更新して頂きたいですね。
あっ、でもネクオロさんにも都合が有るでしょうから聞き流してくれて結構です。(苦笑)
2009-02-15 Sun 19:18 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
うーむ、終わってしまうのか。
勘違いものは回を重ねるごとにつれて現実と虚構の乖離が激しくなるから仕方ないのかも。

変えられた者も相当前にプレイしたきりでは飽きるのも必然。
まあ、打ち切りみたいな終わりでなければいいとは思います。

これから悲惨な花粉の時期ですが、大丈夫でしたか?
2009-02-15 Sun 23:00 | URL | ルミナス #PooosTlY[ 内容変更]
反抗期wwwwwwwwwww
2009-02-18 Wed 11:51 | URL | #-[ 内容変更]
うーむ。面白い。久しぶりに発見してしまい、最新話まで読んで次で終わりとか。にしても反抗期w

温泉で現実逃避するわなぁ、生き死にがかかってるし。
2009-02-18 Wed 18:08 | URL | Marl #-[ 内容変更]
初めまして。
昔から見ていたのですがずっとROMってました。
相変わらず面白かったです。
楽しみに更新を待っていたSSが終わってしまうのは悲しいですが、最後までがんばってください!
2009-02-22 Sun 17:41 | URL | pzg #EBUSheBA[ 内容変更]
男と女の間には
暗くて深い……じゃないですが、よりにもよって反抗期w
どのゼロ魔作品でも重い場面なのに、ここでは笑いしか浮かばない。
これがダンケクオリティ!

ラストまであと少し。クライマックス、期待してます。
2009-03-01 Sun 17:00 | URL | 夢幻の戦士 #LOLorWpQ[ 内容変更]
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