ネクオロでした
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零の使い魔。~聖十字の騎士~ 【第九話】
2009-03-08 Sun 19:50
ここまで来たらね、俺だって腹ぁ括りますよ……で、逃げ道は何処ですか?

                                                   <ダンケ>

やっとここまで辿り着いた……。あと少し、あと少しで俺の願いが……。

                                                   <???>

~闇~

「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか」
 翌日。
 教会ではルイズとワルドの結婚式が行われていた。
 この非常時だ。
 出席している人物はウェールズと護衛の騎士の数人のみ。
 他の者は戦の準備に忙しいのだった。
 出席者になり代わる様に、通路を挟む様にして銀の光沢を放つ甲冑が飾られている。
 ルイズはボーッとした頭のまま、ただその場に立っているだけであった。
 頭には魔法の力で永久に枯れぬ花があしらわれた冠、羽織っているマントはいつもの黒いものではなく、新婦しか身に着けることの出来ない純白のマントを羽織っている。
「誓います」
 杖を握った左手を胸の前に置き、そう宣誓するワルド。
 それにウェールズはニコリと笑い、次いでルイズに視線をやった。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
 朗々と、ウェールズが誓いの為の詔を読み上げる。
 それをどこか遠い出来事の様に感じながら、ルイズは思考の渦の中を彷徨っていた。
 確かにワルドのことは嫌いじゃない。
 幼い頃からの憧れだったし、その気持ちは今だってあると思う。
 だが、好きなのかと問われれば、そうだとすぐに頷くことが出来なかった。
 こうしている今も、彼女の胸はズキズキと痛みを発している。
 その痛みは昨晩、使い魔の青年に「大嫌い」と告げてからずっと続いていた。
 どうして自分の気持ちはこんなに沈んでいるのだろう?
 ルイズは自分の心に問い掛けた。
 ラ・ロシェールの宿屋で、ワルドにプロポーズをされたと伝えた時、ダンケは反対しようとはしなかった。
 それどころか、それを後押しする様な言葉をかけてきたのだ。
 あの時の自分は感情に流されるままプロポーズを受けると言ってしまったが、本当はどうしたかったのだろう?
 本当は、ダンケに結婚を反対してほしかったのではないか?
 だからこそ、自分を手放した方がいいという青年に、ルイズは怒りを露にしたのだ。
 悲しかった、切なかった、胸が痛かった。
 この気持ちは今尚、少女の胸に渦巻いている。
 昨日の晩のことだってそうだ。
 いくら色んなことが一度に起こって気分が落ち込んでいたとは言え、好意を抱いていない相手に抱き付くなんてことがあるだろうか。
 あの場に出くわしたのがダンケでなくワルドだった場合、自分は果たして同じ行動を取れたのだろうか。
 答えは否、それは有り得ないとルイズは不思議と断言出来た。
 だって……この胸の高鳴りは、ここにはいない者のことを考えている時にしか感じないのだから。
(あぁ、そっか……私はダンケのことが……)
 ギリギリまで追い込まれてやっと、ルイズは自分の正直な気持ちに気が付いた。
 いや、本当はずっと前から気付いていたのだ。
 ただ、見て見ぬフリをしていただけ。
 思えば随分と遠回りをしていた様な気がする。
 身分の違いとか向こうの感情とか、そういったことはこの際捨て置き、ルイズは決断した。
 キッと俯いていた顔を上げる。
 こうしてはいられない。
 ダンケは主人の言をなにより尊重する青年だ。
 ルイズの言い付けを真に受けて、本当に王党派に加わって貴族派と戦ってしまうかもしれないのだから。
 彼の事だ。絶望的な戦いと知っていながら、心臓が止まるその瞬間まで剣を振り続けるに違いない。
「新婦?」
 思考の渦から帰還した時、ウェールズがルイズを怪訝そうな眼差しで見つめていた。
 いつまで経っても新婦が誓いの言を口にしないので、式が停滞してしまっていたのである。
 そしてそれは、ルイズにとってはまたとない好機であった。
 ルイズはゆっくりと―――しかしハッキリと首を横に振った。
「新婦?」
「ルイズ?」
 二人が怪訝な顔でルイズを覗き込む。
 ルイズはワルドの顔を見つめると一瞬寂しそうな表情を浮かべ、もう一度首を振るとしっかりと彼の顔を見つめて言った。
「ごめんなさい、ワルド。私、あなたとは結婚出来ない」
「新婦はこの結婚を望まぬのか?」
 いきなりの展開に、目を丸くしながらウェールズが問い掛ける。
 それにしかと頷き、ルイズは言葉を発した。
「その通りでございます。お二方には大変失礼を致すことになりますが、わたくしはこの結婚を望みません」
 その瞳には確かな決意の光があった。
 何者にも侵し難い、強い意思の光が。
「……そうか。子爵、気の毒だが、新婦が望まぬ以上、これ以上式を続けるわけにはいかぬな」
 残念そうに告げるウェールズに見向きもせずに、ワルドがルイズの腕を掴んだ。
 必要以上に強い力が込められたその行動に、ルイズの顔が苦痛に歪む。
「……緊張してるんだ。そうだろルイズ。君が僕との結婚を拒むわけがない」
「ごめんなさい。あなたに憧れていたのは確かに本当だわ。もしかして恋だったかもしれない。でも、今は違うわ」
 途端、仮面が剥がれ落ちる様に、ワルドの表情が一変した。
 優しい顔は崩れ、冷たい―――は虫類を思わせるそれに変貌する。
 ピシリと、ルイズの記憶の中の憧れの青年像に亀裂が奔った。
「世界だルイズ。僕は世界を手に入れる! その為に君が必要なんだ!」
 豹変したワルドにルイズは脅える様に体を震わせた。
 握られた腕を振り解こうとするが、よほど強い力で握られているのだろう、ルイズがどれだけ体を揺すっても一行に緩む気配はない。
「ルイズ! 君の才能が僕には必要なんだ! 君は自分の才能に気が付いていないだけなんだよ! 僕ならそれを引き出せる!! さあ、僕と一緒に来るんだルイズ!」
「ワルド、あなた……」
 ルイズは気が付いた。
 ワルドの狂気に支配された目は確かに自分を見ている。
 だがしかし、彼が見ているのはルイズ自身ではない。
 彼女の中に眠るありもしない力を、幻想に固執しているだけなのだと。
「ひどいわ、ワルド。あなたが愛している私なんかじゃない。私の中にあるっていう、ありもしない才能をあなたは欲しているだけ。こんな侮辱はないわ!」
 ルイズがワルドの腕を振り解こうと暴れる。
 静止しようとしたウェールズがワルドに突き飛ばされた。
 怒りで顔を赤くした王子が杖を引き抜き、無礼者に突きつける。
「子爵、その手をすぐにラ・ヴァリエール嬢から離したまえ! さもなくば、私の風の刃が君を切り裂くぞ!」
 そこでようやくワルドがルイズから手を離した。
 ニコリと笑みを浮かべる。
 だが、その笑みは嘘と狂気に塗り固められていた。
「そうか、ここまで言ってもダメなら仕方がない。この旅の中で君の心を掴む為に苦心したが……やはりあの忌々しい使い魔を早めになんとかすべきだったな。……仕方ない、目的の一つは諦めよう」
「目的?」
「そうだ。この旅の目的は三つあった。一つはルイズ、君を手に入れること。だがこれは失敗した。もう一つはルイズ、君のポケットに入っているアンリエッタの手紙だ。そして最後の一つは―――」
 禍々しい笑みを貼り付けたワルドが瞬時に詠唱を完成させる。
 その動きはまさしく閃光の様に早く、一切の抵抗を許さずにウェールズの胸を青白く光る杖で貫いてみせた。
「き、貴様……レコンキスタ……」
 口から血を吐いたウェールズがその場に崩れ落ちる。
 ルイズは恐怖に戦きながらも、ワルドを―――裏切り者を睨み付けた。
「ワルド、あなた! アルビオンの貴族派だったのね!」
「いかにも。僕は国境なき貴族の連盟、レコンキスタの一員だ。しかし残念だよ、ルイズ。僕の手で、君を殺さねばならないとはね」
 冷笑を浮かべながら、ゆっくりとした足取りでワルドが迫る。
 事態のあまりの急変ぶりに呆然としていた騎士たちが裏切りの子爵へと杖を構えて向かっていくが、風の刃によって次々と絶命させられていった。
「……っ!」
 ルイズが慌てて杖を取り出すが、突風によって呆気なく吹き飛ばされた。
 逃げようとするが、風に足を取られてその場に転倒する。
「…………っ!」
「いや、実に残念だよルイズ。君と一緒なら世界を取れたというのに」
 あとずさって逃げるルイズをジリジリと追い詰めるワルド。
 絶体絶命の状況に置かれながら、ルイズは毅然と言い返した。
「そ、そんなの死んでもゴメンだわ! 私にだって、私にだって相手を選ぶ権利があるんだからっ!」
「フン、よく鳴く小鳥だ」
 ワルドは杖を一振りする。
 ウィンドブレイク、風の魔法がルイズの体を紙切れの様に吹き飛ばした。
 教会の壁に叩き付けられ、ルイズが短い悲鳴を漏らす。
 追い詰める様を楽しむ様に近付くワルドを痛みと恐怖で歪む視界に映し、ルイズはここで死ぬんだと思った。
 ここで死ぬと判っていたなら、あの時、ダンケにあんなひどい言葉を浴びせることなどしなかったのに。
 そう考えると、自然と涙が零れた。
「怖いんだね、ルイズ。大丈夫だよ、一瞬で終わらせてあげるから」
「……違うわ」
 ワルドの嘲笑に少女は首を左右に振った。
 裏切り者のメイジの顔から冷笑が消え、無表情になる。
 それを見て、同じ無表情でも自分の使い魔の方が数千倍マシだとルイズは思った。
 彼は確かに見た目が無表情かもしれないが、実際は誰よりも優しく気高い心を持っているのだから。
「なにが違うんだい、僕のルイズ」
「死ぬのが怖いんじゃない。私はただ……ただ……」
 そう、自分はただ……。
「あいつに―――あいつにもう会えないことがたまらなく寂しいだけよ!」
 ルイズは言い切った。
 予想の斜め上をいく少女の発言に、思わずワルドの歩みが止まる。
 死にたくない、死にたくない、死にたくない!
 もう二度とダンケに会えないなんてそんなの嫌だ、絶対に嫌だっ!
 だからルイズは叫んだ。
 その言葉が―――想いが届くと信じて。
 いつだってそう、彼女の使い魔は―――少女の大好きな使い魔は―――。
「ダンケ―――助けて!」
 ―――自分を見捨てることなどないのだから。


 ―――そして。

「……了解した。主」

 その想いが届かなかった試しなど、ただの一度もないのだ―――!
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この記事のコメント
なんか最近こちらのサイトに訪れるたびに
零~が更新されている気がします。
今回は大きな勘違いもなく・・・次回どれほどのものが出てくるのか今から…わくわくがとまらねぇ~
これからも楽しみにしていくので頑張ってください。
2009-03-08 Sun 22:26 | URL | かみかみ #5kcZP7pM[ 内容変更]
次回、遂に終幕!!
ベストタイミングでルイズの元に着いたダンケ……。果たして彼はいかなる悪運でワルドと戦い、勝利するのか……。そして、その先にある彼らの未来とは……。
次回の話が非常に楽しみです。
あっ。そういえば、キュルケ達の事、すっかり忘れてましたね……。
2009-03-08 Sun 22:32 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
(゜д゜)・・・・了解した。主
2009-03-09 Mon 05:38 | URL | #-[ 内容変更]
誤字発見。
あとずさって逃げるルイズ~の部分で『あとずさってがあと「じ」さってに』になっていました。
後、「絶対絶命の状況に置かれながら、ルイズに毅然と言い返した」は、「ルイズは毅然と言い返した」が正しいのでは。
修正した方がよろしいかと。
2009-03-09 Mon 13:31 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
あれやっぱウェールズ死んだ?
ともあれダンケに期待
2009-03-12 Thu 10:36 | URL | ddd #pYrWfDco[ 内容変更]
かっこいい
「……了解した。主」

ダンケェェェェェェエエ
はたから見るとかなりかっこよく登場したダンケに感動

裏事情が早く読みたいw
2009-03-12 Thu 16:03 | URL | bj #-[ 内容変更]
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