ネクオロでした
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零の使い魔。 ~聖十字の騎士~ 第十話
2009-03-15 Sun 23:49
【臆病風のナイフ】

所持している者に認識阻害の魔法をかけ、居場所を判別出来なくするマジックアイテム。

所有者が動いていると効果は発生せず、またマジックアイテムとしての質も高くはないので、使いどころが非常に難しい。彼がこれを入手したのは全くの偶然であり、これの効果も知らなかったのだが、誰よりもうまく使いこなしているのはガンダールヴの加護のおかげか。

尚、一応刃は付いているが、これはあくまで装飾用なので殺傷能力は皆無である。柄尻にはめ込まれている宝石にルーンが刻まれており、これが媒介となっている。売ればそれなりの金額にはなる。

* これは原作に登場しないオリジナルアイテムです。
 温泉を探しにいざ行かん。
 朝早く(時計が無いから時間が判らない)起きた俺は、早速温泉を探す為の行動を開始した。
 ルイズは結婚式の準備で忙しいだろうという配慮から、彼女に声をかけずにこっそり行くことにする。
 ただ一つ、問題があるとするなら―――ここが城の中ということか。
 外には貴族派とかいう連中が武装しているらしいから、危なくてとてもじゃないけど外出する勇気はない。
 仕方なく、城内にわいているだろう温泉に期待することにした。
 ……そもそもだ。
 俺はどうしてここまで温泉に固執しているのだろう?
 そこまで温泉に入りたいわけでもないのに……。
 これはあれか、一種の意地か意地なのか!?
 ルイズがあの年齢で伴侶を見付けて幸せになるのに対し、二十過ぎの自分は彼女一人作れずドイツなんかほっつき歩いていることに対するあてつけなのか俺。
 いや、深く考えるのはよそう。惨めになる。
 城内をウロウロする。
 ここで俺の装備を紹介しておこう。
 ……え、興味ない?
 そんなこと言わずに聞いてってよ、暇でしょうがないんだから。
 あと、城内の空気が重過ぎてなにか他のことを考えてないと欝になるんだ。
 まずは俺の頼れる相棒デルフ。
 今は人の目があるので鞘に仕舞っているけど、コイツのお喋りには心底助けられた。
 そして壊れて―――というより溶けてしまった短剣に代わる新装備のご紹介だ。
 前のはナイフというより針といった方がシックリ来る外見の武器だったが、今度は誰の目から見てもナイフと判る素敵なデザインをしている。つまるところ、普通のナイフだ。
 特徴と言えば、刃の部分に意味深な文字が彫られていることと、柄尻に緑色の綺麗な宝石が飾ってあることか。
 なんでもご丁寧に銘まで付いているらしく、ウェールズさん曰く、〝臆病風のナイフ〟というらしい。
 たまたま廊下の壁に飾ってあったのを見付けて眺めていた時に、どうせ貴族派の連中に盗られるのならば、君のような才ある若者に使ってもらった方が武器も本望だろうとか言って王子様から直々に頂いた代物である。
 臆病風……なんとも俺に相応しい名の武器じゃないか。
 その後、王子様はこのナイフについて詳しく説明しようとしていたようだけど、なにか用事が出来たらしく御付の人に呼ばれて行ってしまった。
 まあ、刃先を人に向けちゃダメとか、持ち歩く時は鞘に仕舞っておかないと捕まるとかそんな感じの注意をするつもりだったんだろう。
 というわけで、今の俺は出発した時と同じように刃物を二つもぶらさげている危険人物と化しているわけだ。
 それにしてもないなぁ……温泉。
 今頃、ルイズは楽しくハネムーンについてシシャクさんと語り合っている頃だろうか。
 そう言えば、さっきからやたらと人々とすれ違う。
 あの人達の行き先には確か……船の発着場があったような気がするなぁ。
「……まずい」
 ここに来て、俺はようやく重大なことを見逃していたことに気が付いた。
 結婚式を強行するルイズとシシャクさんは彼の乗って来たぐりふぉんとかいうあのキメラで帰るらしい。
 それでだ、あの乗り物は二人乗りだから俺は乗れない。
 だから、いぐるー号とかいう愛らしいものに乗らないと俺はトリステインに帰れないんだ。
 うわっ……なんつーことを忘れていたんだ。うっかりにも程がある。
 温泉にうつつを抜かした結果がこれ。俺の自業自得だよ?
 ……くっ、温泉は心底心残りだけど命には変えられない。
 ここは素直に引き下がり、ほとぼりが冷めた頃にまた温泉を探しに来よう。
 そうと決まれば早速行動あるのみだ。
 俺は方向音痴だから自分の勘など当てにしない。
 こういう時は人の流れに沿って移動すればどうにかなるものなのだ。
 そう決め、後をついていっても問題なさそうな人を物色する。
 ……あの大きな鞄を持った如何にも金持ちっていう女の人は……ダメだな。
 ああいう人ってのは自分専用の船を持っていると相場が決まっている。
 例えついていったところで、自家用車ならぬ自家用船だからお前は乗れないとか言われるに違いない。
 にしても、あの人の船は〝イーグル号〟って言うのか。
 やたらと慌しく、船の名前を連呼している。
 俺が乗る予定のいぐるー号とよく似ているけど、やはり愛らしさが違うな。
 そんな厨二臭い、いつ沈むかもしれない船になど頼まれても乗ってやるものか。
 そう意気込んでいると、俺の後ろからごつい鎧を着込んだ人たちが歩いて来た。
 ビビリの本能というやつで、反射的に道を空ける。
 ―――お。
 今、なんかこう頭に稲妻が落ちた気がしたぞ!?
 この人たちについていけば、いぐるー号に連れて行ってもらえそうな気がする。
 よくよく考えれば、民間人が多数乗り込むだろう船に護衛をつけないなど馬鹿げた話だ。
 あの優しそうな王子様に限って、ここに来て脱出する人を見捨てるなんてことはないだろう。
 そう考えれば、あの人たちが如何にも騎士ですってカッコをしているのにも頷ける。
 あんな煌びやかな飾りをつけているのにも、深い理由がある筈だ。
 しばし考え、胸中でぽんと手を叩く。
 そうか。判ったぞ。
 きっといぐるー号に乗り込んでいる人たちは不安に怯えているに違いない。
 そんな時に騎士らしいカッコをした騎士が居れば、ああ守られているんだと安心出来る。
 なにも悪いことをしていないのに、警官を見たら佇まいを直してしまうのと同じ心理だ……いや、ちょっと違うか。
 兎に角、あの人たちについていこう。
 幸いにも彼らは長い豪華なマントを身に着けているので、その下に潜り込むように行けば気付かれずに済む筈だ。
 逃げる覚悟を決め、最後尾の人―――そのマントの下に潜り込む。
 ちと歩き辛いが我慢だ我慢。ここが正念場なのだから。
 なんだか今日の俺はいつもより冴えてるなぁ。
 胸中で自画自賛しつつ、ちょこちょこと足を動かす。
 マントを少し持ち上げて様子を伺えば、豪華な扉を先頭の騎士が開けているところだった。
 あれは……パイプオルガンか?
 どうして船の発着場に楽器があるんだろうと首を傾げる俺。

―――この時点で選択肢を思い切り間違っていたことに、この時の俺はまだ気付いてはいなかった。


 ……ど、どうしていつも俺はこうなるんだ。
 狭い視界に移っているのは、声を荒らげて怒鳴っているシシャクさんと怯えているルイズの姿。
 鉄の甲冑の中は思った以上に反響がすごく、外の音が非常に聞き取り辛かった。
 鎧自体が魔法かなにかで床に固定されているのか、動かそうとしてもビクともしやしない。
 あぁ、こんなことならあの金持ちの人を尾行すれば良かった……。
 ―――そう。
 俺が後をつけることにした人たちの目的地。
 それはルイズとシシャクさんの結婚式が行われる城内の教会だったのである。
 あの騎士たちが豪華な格好をしていたのも、おめでたい儀の正装があの格好だったからなんだろう。
 そう言えば種死の冒頭でも、式典用ジ○とか出て来ていたっけ。
 恐らくはあんなノリだったのだ、彼らも。
 そんな騎士様たちも、今となっては物言わぬ骸と化してしまっている。
 色々と親切にしてくれた王子様もどうやら殺されてしまったようだ。
 この時ばかりは少しだけこの悪視界に感謝した。
 人が刺されたり切られたりする場面など、ヘタレの俺には刺激が強過ぎる。
 いくら少しずつ荒事に対する免疫がついてきたと言っても、人の生き死には……きつい。
 そうこうしている間にも、事態は最悪な方向へと進展していっている。
 このままでは間違いなく、ルイズはシシャクさんに殺されてしまうだろう。
 ―――それだけはダメだ。絶対にダメだ!
 どうにか鎧から脱出しようと体を揺り動かす。
 くそっ、こんなことなら素直に騎士の人たちに見付かっておけば良かった。
 見付かったら怒られるだろうと、手近な鎧に身を潜ませたのがそもそもの間違いだったのだ。
 どうして鎧なのか、何故着込もうと思ったのか。
 偶に、自分の思考回路が自分でもよくわからなくなる時がある。
 ……まあ、緊張と疲れが一気に押し寄せ、鎧の中でこ一時間ほど眠ってしまったのは仕方がないとしてもだ。
 それにしてもなんでシシャクさんはいきなりルイズに牙を剥いたんだ?
 たしかにルイズは彼との結婚を断った。
 だけどそれは自分(ルイズ)がまだ一人前の魔法使いになっていないから―――だと言っていた。
 立派な夫に釣り合うようになってから結婚したい。
 なんとも健気な心意気じゃないか……それなのにどうして。
 ここから垣間見えるワルドさんの顔はまるで悪鬼のようだった。
 時々、無表情になったりして不気味だったこともあるが、基本的に優しい笑顔を絶やさなかった彼が何故こんなにも豹変してしまったんだろう?
 そう、まるでなにか悪いものにとり憑かれてしまったかの如く。
 ……まさかっ!?
 俺の背筋を冷たい汗が流れ落ちていく。
 思い出せ、今の俺が居る場所を。
 ここは教会だ、悪魔のもっとも嫌うだろう神の領域だ。
 古来より、こういった神聖な場所において、人や物に化けた悪魔は苦しみのあまりその本性を曝け出してしまうという。
 ドラ○エで言うところのラーの鏡のポジションなのだ、教会というのは
 そうか、これで全ては繋がったぞ。
 だとしたら、なんという悲しい話だ。
 本物のシシャクさんはもう……殺されていたなんて。
 あの暴れているシシャクさんは彼に化けた悪魔に違いない。
 恐らくは道中に隙を突かれ、優しかったシシャクさんは食べられてしまったのだろう。
 そう考えれば、彼が急変した理由も納得出来る。
 大方、あの悪魔はルイズの可憐さと魔法力(技術力)を同時に我が物にしようと企み、この恐ろしい計画を実行に移したのだ。
 なんたるRPG的王道、なんたる王道的展開。
「怖いんだね、ルイズ。大丈夫だよ、一瞬で終わらせてあげるから」
「……違うわ」
 杖を構えてルイズへとゆっくり歩を進めるシシャク(偽)。
 そんな彼に、ルイズは首を左右に振っている。
 ―――そうだ。ルイズは怖がってなんかいない。
 色々な意味で疎いと噂されて已まない俺にだってそれぐらいはわかる。
 彼女は―――心の優しい彼女は―――。
「あいつに―――あいつにもう会えないことがたまらなく寂しいだけよ!」
 本物のシシャクさんに二度と会えないことを、心の底から悲しんでいるんだ!
 感情が溢れ出したあまり、思わずシシャクさんのことを「あいつ」呼ばわりしてしまうルイズ。
 彼がどれだけ愛されていたかが判る場面と言えよう。
 俺もいつかはそんな女性と……じゃなくて!
 今はあの悪魔からルイズを守ることが先決だ。
 古来より悪魔に殺されてしまった人の魂は成仏出来ないと決まっているのだから!
 おぉぉぉぉぉ―――動けぇぇぇぇぇ―――っ!
 シシャクさんの無念、この俺が晴らしてみせる。
 このイザコザが終わった後、しっかりと塩を撒いておきますから!
「ダンケ―――助けて!」
 ルイズの声を聞いた瞬間、俺の体をなんとも言えない感覚が貫いていった。
 目に見えないぱわぁが急流のように駆け抜けていく。
 手が―――具体的に言うなら、左手の甲が熱い。
 燃えるようだ……いや訂正、40度くらいのお湯に触れたレベルで熱い。地味に熱い。
 そして俺は、熱に浮かされるように渾身の力で鎧を揺り動かした。
「……了解した、主」
 ―――ザン。
 ……あ、あれっ!?
 とりあえず鎧を倒そうとだけ考えていた筈なのに、気付けば鎧が握っていたのだろう剣を床に叩き付けていた……らしい。
 硬い床に打ち付けた剣からビリビリと振動が伝わって来る。
 ……なるほど、この剣は式典用に装飾の施されたロングソードなのか。
 で、固定化の魔法がかけられているのでちょっとやそっとじゃ錆びない、と。
 い、いやいや!? 冷静に分析している場合じゃないから!? 衛星、少しくらい自重しろ!?
「…………」
 シシャクさん(偽)が血走った目でこっちを見ている。
 ……やべぇ、半端なく怖い。
 火事場の馬鹿力を発揮して鎧を動かしたのはいいけど、俺の体力はもう底を尽く寸前だった。
 これでもシエスタの手伝いして、少しくらい鍛えているつもりだったんだけど。
 さっきまでバーゲンセールに群がるおばちゃんのように溢れていた勇気も、ほとんど消えかかっている。
 なんだこれは……新手の燃え尽き症候群か?
 使ったことのない筋肉を短時間の間に酷使したせいか、体の妙なところが痛い。地味に痛い。
 苦痛に顔を歪めていると、いつの間にやら視界が広がっていた。
 鉄の手甲をはめた手で顔を触ってみる……うん、冷たい。
 一拍遅れてガランコロンというなにかの転がるような音。
 開けた視界には、俺がさっきまで被っていただろう鉄仮面が床に転がった状態で映っていた。
 え、もしかして攻撃されたりしたの……?
「くそっ、貴様の気配が完全に消えていたから油断していた。……そうだ、全ては貴様のせいだガンダールヴ。貴様さえいなければ、ルイズは僕のものになっていた。本当に貴様だけは、憎憎しい相手だよ」
 気配云々の話は分からないけど、人のせいにするのはひどいと思う。
 反論したいと思う気持ちもあるにはあるが……怖い。
 さすがは悪霊というべきか、半端ない眼力だ。
 兎に角、あの悪霊を興奮させないよう、紳士的な対応に徹しなくては。
 こういう輩には絶対に「真の姿」とかあるだろうし。
「フラれた八つ当たりか……? 見苦しいな……子爵」
 ……まただよ。
 勝手に言葉が変換され、凶器となって飛び出していく。
 目に見えて、シシャクの顔が憤怒の色に染まっていくのがはっきりとわかった。
 俺、今度こそ死んだかもしれない。
「いいだろう、ガンダールヴ。貴様に私の本気を見せてやろう」
 シシャクはモゴモゴとなにか呟いている。
 防ごうと動き出すより早く、敵の技術攻撃は完成していた。
 分身が四人に、本体が一人の計五人。
 もはや、誰が本物か俺にはわからない。
 その内の一人が見慣れた仮面を装備した時、俺の頭を電流が駆け抜けた。
 そ、その頭にクソが付きそうなほどださい仮面は!?
 驚くわたくし。しかし顔には出ない。
 五人が一斉に別の呪文を詠唱したかと思えば、今度は杖の先がキラキラと光っていた。
 な、なんだよ、そのしゃらんら~で俺とやろうって言うのか!?
 今日はいつもと違って、剣を二本も装備しているんだ。そう簡単に負けないぞ!?
 ―――って、はやっ!?
 元々かなり素早かったのに、今はそれが×5。
 なんとかる~んの楽しげなパワーで頑張っているが、それも長く持ちそうにない。
 おぉっ!? い、今のはやばかった……!?
 二本の剣を使って、辛うじてシシャクの攻撃を耐え凌ぐ。
 この悪霊、真似た人間の技量まで物に出来るというのか……。
 なんというチート能力、俺に少しでも分けて欲しいものだ。
「どうしたガンダールヴ。もっと私を楽しませてくれないか? これではあまりに張り合いがない」
「…………」
 この卑怯者がっ! チートを使っておいてなにを偉そうに。
 当然ながら、そんなことを口に出来る余裕は俺にはない。
 る~んが光っている内はまだなんとかなる……と思うが、この光が消えたら一巻の終わりだ。
 そして、このる~んが俺の体力と連動していることに、それなりに付き合いの長い俺は気付いていた。
 鎧装備で防御力が上がった反面、速度が低下しているのも地味に痛い。
 重い鎧は普段以上に、俺からなけなしの体力を奪いつつあったのだ。
 必死になって剣を振り回している俺の目に、距離を開けたシシャクの姿が入った。
 また特殊技術攻撃かっ!?
 呪文詠唱中に妨害するのはRPGの常識だ。
 そして、それを妨害しようと前衛を配置するのもRPGの王道なのである。
 こいつは……まずくないですか!?
 そうこうしている間にも、シシャクの魔法(技術)は完成へと爆進しつつある。
 短刀を投げようか、いや、絶対に弾かれるだけだ!? び、ビームはないのか!?
 俺が胸中でワタワタしていたその時、頼れる相棒の声が木霊した。
「そうだった、そうだったよ相棒! ちくしょう、こうしちゃいられねぇっ!」
 ―――ぴかぁ。
 なんかそんな感じの音を出してデルフが光った。
 眩しくて思わず目を閉じてしまう。
 ……閃光玉を使う時は早めに言って欲しい。
 斬られなかった奇跡に感謝しながら目を開けば、錆び付いていた俺の相棒はいつの間にか新品に挿げ替えられていた。
 ピカピカと光る刀身に自分の顔が映る。
 ……うん、相変わらずの鉄面皮だ。内心の驚きや恐怖が一切出ていない。
 一瞬、デルフを盗られたのかと思ったが、錆び剣と新品剣を交換していく馬鹿は居ないだろうと思い直す。
 俺ならばやるかも、だけど。危ないし、法に触れるし。
 そう言えば、シシャクの魔法はどうなったんだろう?
 俺が無事だということは、失敗したのだろうか。
 まさか自分にかけるタイプの強化魔法だった、とかいうオチは勘弁してほしい。
 ただでさえ苦戦しているのに、そんなダメ押しされたらガチで泣いてしまう。
「スクウェアのメイジだろうがなんだろうが、てめぇのちゃちな魔法は俺様が全部吸い込んでやるぜ。このガンダールヴの左腕、デルフリンガー様がよ。さあ、相棒は心置きなくあいつをぶった切ってやんな!」
 ……あ、そう……なの?
 デルフの言葉を信じれば、シシャクの魔法は失敗したのではなく、強化の類だったわけでもなく、デルフ(研磨済み)が吸い込んだらしい。
 魔法を吸収する大剣かぁ……いかにも主人公が持ちそうな武器だな。俺には勿体無い。
 だけど、今はこれに頼るしかないので、主人公にはもう少しだけ待ってもらうことにする。
「…………」
 無言で剣を構える。
 いや、元々口下手だし、口が渇いてまともに言葉も出そうにないわけで。
 仕方なく、目で成仏しろと問いかける。
 行ったことはないけど、天国はきっと良い所ですよ?
 俺の想いが伝わったのか、唐突にシシャクの分身の一体が弾け飛んだ。
 随分とアクティブな成仏の仕方だが、気持ちが伝わってくれたようでなによりである。
「―――ダンケっ! その……その裏切り者を、打ち倒しなさいっ!」
 ルイズの悲痛な叫びが俺の耳朶を打った。
 何事かと、自分の立場も忘れて振り返ってしまう俺。
 両手に剣を持っているのだ。後から思えば、相当危ない行為である。
 周囲に人が居なくて良かったぁ―――いや、なにか当たったした気がしたのは気のせいだよな。
 少女は擦り傷だらけになりながらも、毅然とした態度で立っていた。
 不思議なことに、彼女の声を聞くと体にやる気が満ちるのだ。
 それはそうと、ルイズは気になることを言っていたような……。
 確か「裏切り者」と。
 ど、どういうことだ……!?
 シシャクは悪霊で、更に裏切り者なのか!?
 落ち着け……考えるんだ。
 ―――あ。
 気付いた。気付いてしまった。
 ルイズとシシャクさんは婚約していた。
 婚約とはその字の示す通り、結婚の“約束”だ。
 だが、運命の悪戯でシシャクさんは悪霊に襲われ、食べられてしまった。
 婚約という、大切な約束を果たせないままに……。
 だからこそ、“裏切り者”なのだ。
 この言葉の意味を額面通りに捉えてはいけなかった。
 深い悲しみと、確固たる決意。
 この二つを備えた悲痛な叫びだったわけだ。
 そう考えると、どうにかして彼女の力になってあげたいと思う。
 ……洗濯とか部屋の掃除とかで。
「ぐっ、そんな馬鹿な―――っ!?」
 仲間の先駆け成仏に戦慄が奔ったのか、シシャクsは動揺しているようだ。
 ルイズの声が届いたのか、いつの間にか数もまた減っている。
 その内の一体がルイズに杖を向けるが、生憎とこっちはその動きを先読みしているぞ。
 馬鹿め、俺だって偶にはカッコ良い所を見せるんだ!
 ルイズを守る為にダッシュ―――そして、お約束通り、体勢を崩す馬鹿(俺)。
 体力がやばいとあれだけ連呼していたのに、すっかり忘れた結果が之だよ。
 前のめりになった俺の手に、重い衝撃が伝わって来たのはこの直後だった。
 なにかにぶつかったのか?
 ……いや、考えるのは後にしよう。
 今は残りのシシャクを成仏させることが先だ。
 なにがあったのかは知らないが、シシャク(偽)の数は更に一体減っていた。
 故郷のお袋さんのことでも思い出し、勝手に成仏したのかもしれない。
 大丈夫、秘策は我にあり。
 落ち着いて、二本の剣を十字の形に交差させる。
 無意識の内に力が入ってしまったのか、火花が散った。
 ビックリしたのは俺だけの秘密である。
 十字架は……本当は根っからの仏教徒だけど……少しくらい多めに見て欲しい。
 今だけ、今だけはキリスト教に改宗だ。
 さあ、動いてくれよ、俺の錆び付いた口よ。
「―――AMEN」
 動いたっ!?
 思い通りに言葉を口にすることが出来たのは、ドイツの専門学校で踊った時以来だ。
 正直、少し感動してしまった。
 やけに威圧的な発音になってしまったのは、この際多めに見て欲しいものだ。
 遠くでルイズがやたらに驚いている気がするけど、ドイツにキリスト教って伝わってないんだっけ?
 シシャクは当然の如く、ビビりまくっていた。
 悪霊には十字架と神言、常識である。
 某ゲーム的に言うのなら、効果はバツグンだといったところか。
 シシャクたちが動き出す。
 十字架の魔除け効果は予想以上に高かったようで、どこか彼らの動きは無駄が多い……ような気がしないでもない。
「…………」
 ―――っ!?
 シシャクがめっさ怖い顔しとる!?
 鬼から悪魔にジョブチェンジしたような、そんな感じのドロドロしたオーラが出ている。
 き、気持ちで負けるな、負けるな俺。
「―――っ!」
 血走った目で杖を構えて突っ込んで来る一体のシシャク。
 悪鬼というのは、まさにあのような表情の者のことを言うのだろう。
 奴の顔を正面から目にしてしまった途端、俺の中でなにかが切れた。
 堪忍袋? いいえ、正気の糸、です。
 今まで必死になって誤魔化していた、たった一つの感情が溢れ出して止まらない。
 怖いという気持ちが限界を突き抜けたと同時に、未だかつて感じたことのない力の流動を感じた。
 ―――ク、ク○リンのことかぁぁぁぁっ!!!
 自分自身でもよくわからないテンションで、シシャク目掛けて突撃する。
 人間、崖っぷちまで追い詰められると妙な行動をするものなのだ。
 左手が45度の御湯に浸かっていたくらい熱い。無駄に熱い。
 俺とシシャクの体が交差する。
 どこも痛くないということは、怪我はしていないらしい。
 実際のところ、ぶつかる直前に目を瞑ってしまったからなにが起こったかわからないのです。
 そして、動き出した足も止まらないのです。
 ブレーキの壊れた自転車のように、一直線に走る。
 限界を超えた酷使に膝が悲鳴をあげた。
 カクンと体勢を崩して、一瞬転びそうになる。
 なんとか踏み止まったものの、心臓は色んな意味でバクバクだ。
 顔を上げて……ほんの僅かに意識が停止した。
 目の前には杖を突き出した体勢で、目を見開いているシシャク(偽)の姿。
 悲鳴をあげるより早く、好戦的なチキンの体が反応してしまう。
 新品になったデルフを縦に振るう。
 ミシリと嫌な音をたてたのは、当然だけど俺の腕の方。
 やけに硬いと思えば、シシャクは細長い杖を盾代わりにしていた。
 それごと叩き切ってしまうデルフは本当に……危ないと思う。
 これは……家族の土産には出来ないな。
 もし、主人公っぽい人と出会うことがあったら、悲しいけど譲るとしよう。
「クッ―――ハハハッ、……そうか、そうかっ! 俺はまんまと貴様の掌の上で踊らされていたわけかっ!! だがな、だがなガンダールヴ。全て貴様の思い通りになどさせんぞ。貴様だけは、貴様の首だけは俺がもらう!」
 残る一人だけになったシシャクが狂ったように笑っている。
 コ、コイツが悪霊の本体か……!
 十字架っ! 十字架っ!
 十字の形にした剣を突き付ける。
 悪霊とは言え、元は人間……だと思う。
 せめて安らかに成仏出来るよう、慈悲の意味合いを込めた穏やかな視線を送ることも忘れない。
 ……い、いや、怖いから手軽な方法で済ませようとしているわけじゃないよ?
 ワルドの杖が青く光っている。
 な、なんだ!? 先からなにか飛ばして来るのか!? ビームか!? ビームなのか!?
 風の鳴るような音が聞こえたかと思ったら、シシャクの姿は消えていた。
 逃げたのか……いや、そんなわけがない―――って、おおぉっ!?
 なにかが視界の端を横切った気がした。
 そのなにか目掛けて、力一杯デルフを振るう。
 もう片方の手には、使い慣れていないロングソードを握っていることを忘れて。
 腕に鈍い衝撃が奔ったのは、デルフを空振った直後だった。
 反対の手―――長剣を握った右手がジンジンと痺れている。
 慌てて顔を動かせば、イメチェンなのか短くなった杖を持って突っ立っているシシャクが飛び込んで来た。
 ただ、その顔は相変わらず―――いや、さっきよりも更に怖くなっている。
「いいぞ―――いいぞ、俺のガンダールヴ! そうさ、そうやって心を震わせて力を溜めるんだ! 怒り! 悲しみ! 愛! 喜び! なんだっていい! その想いを! このバカ野郎に叩き込んでやれ!!」
 お、想いを叩き込む!?
 なんという抽象的なアドバイスなんだ。
 想い、想い……想い……?
 俺が今抱え込んでいる気持ちを吐き出せば良いのか。
 詰まる所、“怖い”と“成仏してくれ”、そして“温泉”をぶつければいいんだな!?
 良い感じに混乱している俺は、自分の下したこの結論に疑問を挟むのも忘れ、ドイツにやって来て初めてだろう雄叫びをあげていた。
「うぉぉぉぉぉっ!」
 ―――怖いぃぃぃぃぃ成仏ぅぅぅぅ温泉んんんんっ!!!
 最後の温泉に対する想いが異様に突出している気もするが、想いには変わりない。
 事実、俺の左手のる~んは目に悪いほど輝いていた。
 溢れ出した力はもう止められない、止まらない。
 なにかに突き動かされるようにして、二つの剣を振るう。
 る~んが光を失い、俺の体に蓄積した疲労が雪崩れ込んで来た。
 堪らず膝をつき、持つのに疲れた二刀を床に突き刺す。
 今更だけど、こんな鉄の塊をよくもまあ振り回せたものだ。
 ブシュウとか背中越しに嫌な音が聞こえてきた気がしたが……気のせいだよな。気のせい。
 恐る恐る振り向けば、やたらと血を流したシシャクが辛うじて立っていた。
 俺のせい……だよなぁ。
 だ、だけど、向こうだってルイズを殺そうとしたわけだし、お互い様だ。
 ……悪霊なのに血とか出るの止めろよなぁ。うぅ。
「さ……さすがだな、ガンダールヴ。だがこの勝負、俺の勝ちだ……。聞こえるだろう? 馬の蹄、竜の羽音が! 愚かな主人共々、ここで灰になるがいいっ!」
 ……え、そんなの聞こえないけど?
 そう言えば、タバサからこの前図書館で聞いたことある気がする。
 確か……なんだっけ、風の技術者は耳が良いんだっけ。
 少しだけ得意げに語るタバサの姿が印象的だったな。
 シシャクも風の技術者だった筈、耳が良いのも当然か。
 ……だけどなぁ。
「子爵……そろそろ還ったらどうだ? もう気は済んだだろう?」
 天に、ね。
 だいたい、俺にはそんなのまったく聞こえないわけで。
 おやぁ、もしかしてアレですか。脅しですかぁ?
 チートパワーのお陰とは言え、俺が勝ったことには変わりない。ちょっとだけ有頂天気分である。
 成仏したくない気持ちがわからないでもないけど、そんな手には引っ掛からないぞ。
 手をパタパタと振ってやると、シシャクは青白い顔を僅かに赤くした。
 懐からビンを取り出すと、それを床に叩き付ける。
 モクモクと沸き立つ煙。
 それが晴れた時、シシャクの姿は影も形も無かった。
 お前は何処の忍者だ。汚いなさすが忍者きたない。
 まあ、なにはともあれ……良かった、成仏してくれたらしい。
 てっきり光の粒子になって消えて行くと思ったけど、随分とまあ地道な成仏の仕方だった。
「ダンケ!」
 油断していると、ルイズが俺に抱き付いてきた。
 疲労困憊の身には、彼女の小柄な体でも地味にきつい。
 しかし、顔には出さない。否、出ない。
 一応、そろそろ退いてくれないかと視線を送って見るが……無駄だろうなぁ。
「バカ! バカバカバカバカっ! いるならさっさと出て来なさいよ! 死ぬかと思ったじゃない。怖かったんだからっ!!」
 ぽかぽかぽかぽか。
 そんな感じの擬音をまとった拳が俺の胸に吸い込まれていく。
 痛くはないが……痛くはないが……いや、少しだけ痛い。
「和んでいるとこ悪いが、どうするね? あの貴族の言うことが本当なら、ここにもうじき敵が攻めてくるってこった。それも大量にな」
 床に突き刺さったままだったデルフが、嘆くように言った。
 いつの間にか新品同然になっていた我が相棒。手放す日が一気に近くなったな。
 って……え、あの悪霊の話、ガチだったの?
「…………」
「おいおい、親の仇でも見る様な目で睨むなって。かわいい顔が―――わ、悪かった、俺様が悪かったからその石を下ろしてくれ!」
 自分の頭ほどもある石を持ち上げ、デルフ目掛けて振り下ろそうとするルイズ。
 その腕力に見惚れる間もなく、俺はいそいそと教会の唯一の出口へと向かっていた。
 その手に、ボロボロの長剣を持って。
 尚、デルフは重過ぎて持てなかった。無茶し過ぎなんだよ俺。
 沢山の敵に囲まれるなんて経験、絶対にしたくない。
 どうせ、皆シシャクと同じ顔をしているんだ。そうに決まっている。
 そんでもってそいつらが更に分身するんだ。地獄絵図だ。
「ダ、ダンケ、どこ行くの!? まさか一人で貴族派をやっつけようって言うんじゃ……」
 いやいやいや、そんな馬鹿な真似するわけないじゃないですか。
 る~んの不思議な力のお陰でなんとかなっていることを、生憎と俺は忘れたことはありません。
「いや……単なる忘れ物だ」
 本当はただのチキン行動の一つなんだけど……女の子の前ではどうしてもカッコをつけてしまう。
 なんだかんだ言って、俺も男の子なわけです。
 可愛い女の子に好かれるのは無理だとしても、せめて嫌われるようなことはしたくない。
 ま、まあ、ルイズには頬を叩かれたりしているから、その望みはかなり薄いけどさ。
 扉に近付けば近付くほど、慌しい音が大きくなっていく。
 ドタドタと走り回る音に、金属の擦れる音。
 俺の脳裏を過ぎるのは、ココに来る前に傭兵の一団に襲われたあの時の光景だった。
 兎に角、まずは逃げ道を確保しないと……。
 扉を開けようと手を伸ばそう―――として、先に開いた。
 一瞬、自動ドアかとも思ったが、すぐに首を振る。
 いくらなんでも教会の扉を自動にはしないだろう。
 飛び込んで来たのは鎧を装備した、いかにも悪人面な人たち。
 怖いという気持ちに反応したのかは定かじゃないが、る~んが弱弱しいながらも光を放つ。
 こ、こっち来んな―――っ!?
 重い体を引き摺って長剣を横薙ぎに振るう。
 ベキリという嫌な音が聞こえたのは、気のせいではあるまい。
 向こうもまさか扉を開けた瞬間に敵が居るとは思わなかったのか、あっさりと意識を手放してくれた。
「……驚いた」
 ハァハァ……ガチでびっくりした。死ぬかと思った。
 顔に表れないというのは、こういう時ちょっとだけ便利だったりする。
 びびりだとバレる可能性が低くなるからだ。あとは……カード勝負系に強いくらいしか思い付かん。
 デメリットの方が遥かに多いけど。
 痛い時に痛がっていると気付いてもらえないとか。
 というか、悪霊じゃないなコイツら。
 シシャクの方が十二倍は強かった。成仏もしないし。
 もしや、コイツらが噂の貴族派というやつか……あれ、王党派だっけ? ごっちゃになってきたぞ?
「それは私の台詞よ! このバカっ!」
 頬を膨らませるルイズ。
 怖いというより愛らしいといったその様子に、現状をしばし忘れて穏やかな気持ちになる。
 当然の如く、外面は無愛想なままだろうが。
 役目を終えた長刀に別れを告げ、息を吐く。
 それにしても、ルイズは本当に勇気があるなぁ。
 悪霊に呪い殺されそうになり、今だって悪霊軍団が攻めて来るかもしれないというのにひどく落ち着いている。
 “爆発”という特殊な技術を持っている以上、イザコザに巻き込まれることは多々あったのだろう。
 その経験が、彼女をここまで立派に育てたのかもしれないな。
 婚約者が亡くなるという悲しい体験をしたのに、そのことをおくびにも出さずに……。
 俺も少しくらいは見習わないといけない。
 まずはルイズの衣服を、恥ずかしがることなく、傷付けることなく洗うことから始めよう。
 問題は彼女の服が全てシルク製だということか。
 丁寧に手洗いしないと、すぐに傷んでしまうんだよなぁ。
 一度破いてしまったことがあったけど、その時は苦笑しながら許してくれた。
 心の優しい俺のご主人様に、本当に感謝である。
 その時にルイズが零した「一つくらい欠点が有った方が、人間らしくて良いしね」という台詞は、未だに謎だけど。
 俺なんか欠点だらけなのに……無愛想とか無愛想とか、鉄面皮とか。
 だけど、困ったな。
 悪霊―――じゃなかった、敵がこっちから来たってことは、ここはもう通れないということだ。
 唯一の逃げ道を失ってしまった俺は、いったいどうすれば良いのだろう?
 いっそのこと、コイツらの鎧でも奪って敵の味方に成り済ますか……。
 ……いや、止そう。
 鎧は臭そうだし、熱そうだし、剣にはベットリと血っぽいもの付いてるし。
 第一、今の俺の装備品の方が豪華そうだ。伊達や酔狂で式典用装備じゃないということか。
 ちょっと傷付いてしまったけど、怒られない……よね?
 あとでこっそり処分しておこうか。
 リサイクルショップでもあれば……いや、人様の物を勝手に売るのはまずいよな。素直に捨てよう。
「きゃあ!?」
 な、なにごと!?
 ビクつきながら振り返る。
 そして―――俺は自分の目を疑った。
 ……ルイズがモグラに押し倒されている。
 デジャヴだ、すごいデジャヴだ。
 巨大なモグラは、その細長い鼻先をルイズの細くしなやかな指に擦り付けている。
 このモグラ、その形で指フェチとはまたコアな……。
 止めるのも忘れて見入っていると、いつの間にか開いていた穴から見慣れた二人の顔が飛び出した。
「ヴェルダンデ、君はいったいどこまで―――って、ダンケ殿!?」
「あら、ダーリンじゃない」
 はい。俺の永久の敵と魅惑のセクシーさんの登場です。
 相変わらずギーシュの奴は、猜疑の目を向けて来やがる……っと、向けて来る。
 汚い言葉遣いは心まで汚くするからな、気を付けないといけない。
 言葉遣いが丁寧でも、心は汚泥みたいにドロドロの輩も世の中には居るが。目の前にな。
 っとと、いい加減にルイズをモグラから助け出さないと。
 こ、この……コイツ、地味に力が強いぞ!?
 なんとかモグラをルイズから引き離す。
 明日は筋肉痛確定だ。今から欝になる。
 流石はギーシュの使い魔、主従揃って俺の前に立ち塞がるとは……。
「二人共……奇遇だな」
 少しだけタイミングを逃したが、挨拶するのも忘れない。
 ギーシュを抜かしてやろうかと一瞬悩んだが、大人の余裕を見せてやった。
 真の男はネチネチと汚い手段は使わないのである。
 靴に画鋲を仕込もうとはしたが。
「ダンケ、のんびりしてる場合じゃないでしょ! ほら、さっさと脱出するわよ!」
 一人で勝ち誇っていると、ルイズに急かされてしまった。
 彼女は穴の中に二人と一匹を押し込んでいる。
 なんというアクティブな少女。
 人間、このくらい積極的じゃないと生きていけないのかもしれない。特にドイツでは。
 穴に飛び込む前、ルイズは胸に手を当て、黙祷を捧げていた。
 シシャクさんのこと、心から愛していたんだな……グスッ。
 心の中じゃ号泣している俺だが、外は相変わらず砂漠の如く乾燥しているだろう。
 せめて態度で示そうと、両手を合わせてシシャクさんの冥福を祈る。
「ダンケ、急いでっ!」
「……ああ」
 ルイズを追って、穴へと飛び込んだ。
 そういや、この穴っていったいどこに繋がっているんだろう?
 まさか『あるびおん』の底まで続いているということは、ないと思うけど。
 この島って超技術かなにかで浮いていた気もするし、ここを落ちたら雲の上ってことはない……よね?
 胸中の疑問に答えの出ないまま、俺はルイズの背を追って薄暗い穴へと身を潜り込ませるのだった。
 尚、しばらく経ってから王子様のことに気が付き、慌てて祈りを捧げるのはまた別の話。
 さらば飛行大陸ラ○ュタ。今度来る時は、ガイドマップを買って来ますね。

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この記事のコメント
あの~風のルビーは?^^;
どうも、毎度楽しく閲覧させていただいております。
柊♂神奈と申します(=Д=)ハジメマシテ
今回のヤツ読んで気になったのですが…。
臆病風のナイフどう作用したのか、次の話で別人視点で書いてくださるのですか?
気になるし、楽しみです^^
そして、一番気になるところは…ダンケ……お前、「風のルビー」はどうしたんだヘタレ野郎ww
取り忘れによる原作改変?^^;
そんな冒険心満載の状況になるの?

追伸
収拾つかなくなってきたので適当に切り上げて帰ります^^;
では、これからも風などの万病、厄災に気をつけてくださいね。
ではでは~♪
2009-03-16 Mon 10:46 | URL | 柊♂神奈 #-[ 内容変更]
ご報告。
柊♂神奈様―――

初めまして。ネクオロと申します。一応、物書きの真似事をしております。

さて、設定の甘さに定評のある私の物語には、そりゃもう数え切れないほどの穴があるわけですが、今回のもその一つです。申し訳ない。

風のルビーに関しては、第七話にて、ウェールズからダンケが直接受け取っているのですが、“指輪”としか書いてなかったので判り辛かったかもしれません。ここに出て来た“指輪”が風のルビーなのです。地味に譲渡されていました。気付かないわなぁ、こんな書き方じゃ……。

そして、臆病風のナイフ。

この効果は主人公が鎧の中に隠れていた時に密かに発動していました。ワルドが彼の存在に気が付かなかったのはこの為です。それ故の「気配が無かったから~」という台詞なわけでした。

なにかとガンダールヴを危険視していた彼が、額面通りに主人公の言葉を受け取る筈がありませんし、そうなると探査魔法とか使っていてもおかしくありませんでしたので、このナイフを登場させた次第でしたが……明らかに説明不足でした。すみません。

それでは、またのお越しをお待ちしております。
ネクオロでした。
2009-03-16 Mon 17:54 | URL | ネクオロ #-[ 内容変更]
ワルド撃破!
更新お疲れ様です
ダンケ視点だけだとわかりにくい部分も多々ありますが。
むしろこれは次回ワルド視点のフラグと見た!
それでは次回も楽しみにしてます。
2009-03-16 Mon 20:54 | URL | MIst #/9hBKkrU[ 内容変更]
rふぇ
相変わらずおもろい!!
2009-03-18 Wed 02:25 | URL | ふぇせ #-[ 内容変更]
相変わらず面白いです!次はぜひ他者視点での物語をお願いします。
2009-03-18 Wed 17:56 | URL | 地球刑事ジバン #-[ 内容変更]
ネクオロ殿「AMEN」は若本ボイスでよろしいか?
2009-03-19 Thu 17:27 | URL | #-[ 内容変更]
これが“聖十字の騎士”の意味か……。
どうも、ちょっとした理由で携帯のアドレスを変えましたベリウスです。
まさか“聖十字の騎士”の意味が、ワルドとの激闘で二本の剣を十字の形に交差させた時の事を差していたとは……。
ルイズとワルドにはダンケの言った「AMEN」がどういう意味に誤解されているのやら。
さあ、後はアルビオンからの脱出だけですが、まだ何かが起こりそう……。
2009-03-20 Fri 15:45 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
ダンケかっけええええええええええええええええええええええ
ルイズ視点だとさらにかっこよくなるんだろうな~
超期待
2009-03-20 Fri 19:07 | URL | ラッキー #j4ekpsMA[ 内容変更]
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