ネクオロでした
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零の使い魔。 聖十字の騎士 ~第十四話~
2009-07-05 Sun 16:57
こんなにのんびり出来るのは久しぶりだ。お、今回は割かしまともな発言っぽいぞ!

                                                  <ダンケ>

……ダン、ケ。

                                                  <タバサ>

<光>

 歩き始めて僅か数分で、俺は良い感じの休憩場所を発見することが出来た。
 木陰になっていて居心地は良さそうだし、木の葉が邪魔して空を飛んでいるおっさん達にも見付かる可能性が低い。更に宮殿の入り口の様子もそれなりに分かるという、絶好の場所だ。
 木の幹にデルフと体を預け、人心地つく。
 お姫様、だいぶ参っていたようだけど、大丈夫だろうか?
 ルイズも気丈に振舞っていたが、その胸中は嵐の如く掻き乱されていることだろう。
 せめてもの励ましとして、俺は端正込めて彼女の衣服を洗ってあげよう。
 今までも破かないよう細心の注意を払っていたが、明日からは更に心を込めよう。
 そんなことを考えていると、隣に人の気配を感じた。
 というか遅い。気付くのが致命的に遅い。
 る~んの力が発動している時はそれなりに対処出来る自信はあるが、そうでない時の俺など動く的に他ならないわけで。
 恐る恐る、気付かれないよう隣に視線をやれば、あの長い杖を持ったタバサがちょこんと腰かけていた。
「……宮殿には、行かないのか?」
「行かない」
「……そうか」
 会話が続かない。
 そして、このやりとりに妙な既視感を覚える。
 それにしても、彼女も壷とか割るのを恐れているのか。意外だった。
 でもまあ確かに、百円ショップとかでも陶器コーナーに居る時は緊張するよね、周りの商品が百円だと分かっていてもやっぱり緊張する。
 それと似たような心理が働いているのかもしれないな……まあ、タバサは貴族だからお金持ちなんだろうけど。
「お、なんだいなんだい。俺が寝ている間に良い雰囲気になってんじゃねーかお二人さん―――いで!?」
「…………」
 鞘から顔(?)を覗かせたデルフが、タバサの手にした長い杖でコツンと叩かれる。
 すぐに俯いてしまったので表情は読めないものの、実力行使に出たくらいだ。
 その怒りはかなりのものなのだろう。
 あーあ、いくら彼女が温厚でもそんなからかい方をしたら誰だって怒るだろうに。
 もう一度コツンとやられ、スゴスゴと鞘の中に戻って行くデルフを眺め、俺は溜め息を吐き出した。
 俺と同じで、コイツもKY属性を引き継いでしまっているらしい。
 今度から一緒に、空気が読める発声練習を頑張ろうな。
 空を見上げ、流れて行く雲を何となく数えてみる。
 何か大事なことを忘れている気がするが……思い出せないってことは大したことじゃないのだろうと決め付けた。
「……ダンケ」
「……何だ?」
 名を呼ばれ、首をそちらに動かす。
 考えれば、タバサが俺の名前を呼んでくれたのはこれが初めてのような気が……気のせいだな。
 彼女は結構小声で喋るから、聞き逃していただけかもしれないし。
「今度、貴方の故郷のことを聞かせてほしい」
 依然としてタバサは俯いたままだった。
 僅かに見える彼女のうなじが赤くなっている。
「……ああ」
 別に隠すようなことでもないので、素直に頷く。
 そうか、タバサは日本に興味があるのか。
 照れているところを見ると、隠れ日本ファンというやつだな。
 むぅ……俺に料理の腕があれば、寿司や蕎麦を御馳走してあげられたのに。
 他に日本の伝統文化と言えば、歌舞伎と落語と相撲と……五右衛門風呂ぐらいか?
 特に最後の五右衛門風呂は小学校の宿泊学習の際、火の当番の奴がサボったせいで俺だけが冷たいまま浸かったという苦い記憶がある。
 あの時、風邪をひかなかった自分が今でも信じられない。思えば、あの頃からひ弱なくせに無駄に体は頑丈だった気がする。
 だが……風呂ぐらいなら俺でもどうにか出来るかもしれないぞ。
 タバサもルイズと同じ貴族専用の大浴場を利用しているのだろうが、やはり即席とは言え、露天風呂と室内風呂には大きな違いがある。
 日本に興味のある彼女なら、きっと気に入ってくれることだろう。
 よし、帰ったらすぐに準備を始めることにしよう。
 確かマルトーさんが要らない大釜の処分に困っていた筈だ。
 アレを貰って少し手を加えれば―――。
 思考が風呂一色に染め上げられていく。
 不意に、肩に軽い衝撃が奔った。
 何事かと一瞥すれば、タバサが静かに寝息を立てている。
 あるびおんでは色々あったから、疲れてしまったんだろう。
 待っていてくれ、タバサ。帰ったらすぐに伝統の露天風呂を用意してあげるから。
 気分は妹を持ったお兄さんといったところか。
 あ、いっそのこと、平民専用のお風呂として開放すれば皆の役に立てるかも……。
 問題は水だけど、噴水から直接水を引けば何とかなるか? 最悪の場合自力で―――。
 このそれなりに有意義な時間は、宮殿からルイズが出て来るまで続いたのだった。

<闇>

 ダンケは木陰でその身を休めていた。
 彼を見付けたタバサは少し逡巡した後、一度誰にともなく頷き、彼へと近付いていく。
 気配で自分に近付いている人物がタバサだと気付いたのか、青年は何をすることもなく静かに空を仰いでいた。
 体を預けた木の幹には、彼の相棒である大剣が立て掛けられている。
 近付いたのは良いが、そのあとを考えていなかったタバサ。
 ここで立っているのもおかしいと考え、恐る恐る青年の横に腰を下ろした。
「……宮殿には、行かないのか?」
 それは言葉の不意打ちだった。
 視線を向けることなく、唐突に放たれた問い掛けに、タバサの鼓動が不自然なほどに跳ね上がる。
「行かない」
「……そうか」
 大して興味もなかったのか、ダンケがあっさりと会話を打ち切る。
 そもそも、タバサは寝ているところをキュルケに叩き起こされてルイズ達に同行した経緯がある。
 赤毛の少女も朝早くに主従+αが馬で出立したという事実しか知らなかった為、全てが解決した(だろう)今も、タバサはアルビオンで何が起きたかは知らなかった。
 宮殿の中に入れば、簡単な説明と褒賞くらいは貰えるかもしれないが……興味がないことには関わりを持たない主義の彼女としては、ここでじっとしている方が気楽でいい。
「お、なんだいなんだい。俺が寝ている間に良い雰囲気になってんじゃねーかお二人さん―――いで!?」
「…………」
 何やら訳の分からないことをほざいたインテリジェンスソードを、手にした杖で叩く。
 それなりに力を入れた一撃だったが、シルフィードと違って相手は剣だ。
 この程度の打撃、何とも思っていないのだろう。
 再度何か言おうとする前に、もう一度叩いて鞘の中に強制的に戻しておく。
(良い……雰囲気?)
 自覚はない……自覚はないが……。
 剣の言葉を頭で理解した途端、顔がファイアー・ボールを受けたように熱くなった。
 それと同時に、彼の前で泣いてしまったことを思い出し、更に顔が赤く染まる。
 キュルケの得意とする炎の呪文フレイム・ボールを受けると、こんな感じになるのだろうかと熱に浮かされた頭で考える。
 小さく頭を振り、魔法を使って氷を生み出すとダンケにバレないようこっそりと自分の額に当てる。
 冷たい氷が彼女の火照った頭をうまい具合に冷やしてくれた。
 チラリと隣の様子を盗み見る。
 青年は空を仰ぎ、流れる雲を静かに見つめていた。
「ダンケ」
 たった三文字を発するのに、タバサはとてつもない精神力を使った気がした。
 トライアングルクラスの魔法を連発した方が、まだ気持ち的に楽な気さえする。
 彼女が青年の名を呼ぶのはこれが初めてなのだが……彼は気付いているだろうか?
 やはり何故かは分からないが、そんな些細なことが気になって仕方ない。
「……何だ?」
 座ったままの体勢で、青年が首を少女に向ける。
 視線が交差し、一瞬タバサは頭が真っ白になった。
 それでも何とか言葉を紡ぎ出す。
「今度、貴方の故郷のことを聞かせてほしい」
 彼が主に話してくれたのは、戦争や武器、歴史に関することだった。
 読書を趣味に持つタバサとしては異世界の話は聞いているだけで楽しい。
 多くの人が知らない知識を自分だけが持っているというのは、それだけで優越感に浸れるものなのだ。
 もっとも、もっと純粋な理由で少女は“彼”の住む世界のことを知りたがっていたのだが。
 そのことに彼女が気付くのはもう少し後の話。
 今はまだ、自分の中で大きくなりつつある気持ちに戸惑っている途中だった。
 謎の熱と顔の火照りの原因が分かるのも……もう少し先になりそうだ。
「……ああ」
 一つ頷き、ダンケが視線を再び空へと向ける。
 ルイズは彼の素性を知っているのだろうか?
 どうしてだろう。そのことがほんの少しだけ気になった。
 そう言えば、彼が異世界から来たのだとしたら、どうして“ガンダールヴ”のことを知っていたのだろう?
 ガンダールヴとダンケの居た世界に何か繋がりがあるのか、それとも彼にはまだ何か秘密があるのか。
 そんなことを考えていると、瞼が重くなって来た。
 ろくに休むことなく、アルビオンからトリステインまで一直線に戻って来たのだ。
 疲れが溜まっているのも仕方なかった。
 一番疲れているだろう彼女の使い魔は近くの山で爆睡していたりする。
(また訊きたいことが増え……た……)
 ゆっくりと意識が心地良い闇に飲み込まれていく。
 こんな穏やかな気持ちで居られたのは、いったい何年ぶりだろう。
 脳裏を過ぎるは、優しい笑顔を浮かべる父と母の姿。
 ちょうどいい箇所にあった“枕”に頭を乗せ、タバサは口元に笑みを浮かべて夢の世界に旅立って行った。


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この記事のコメント
No title
お風呂でタバサキタアアアアああああああああ
タバサハアハア



何やってんだ俺OTL

2009-07-05 Sun 17:51 | URL | コイピー #-[ 内容変更]
No title
言葉少ない二人がいいね。
その内心のズレも。

タバサは幸せになって欲しいんだけど、原作は波乱の予感が……


お風呂はいいアイデアですね。
入浴中も杖を手放さない彼女が何かやらかすのを期待。
2009-07-05 Sun 20:55 | URL | ルミナス #-[ 内容変更]
No title
タバサと五右衛門風呂。
何と言う犯罪的な光景……いいぞ早くやれw

木陰で頭を肩に乗せてとかベタで使い古された王道であるが故に効果は抜群。
さて、本人は兄と妹な気持だが主人たるルイズがみて何と思うやらww
2009-07-05 Sun 21:59 | URL | ケト #eShRZu1Q[ 内容変更]
五右衛門風呂が出てくるとは……。
タバサに“ちょうど良い枕”にされるダンケ……。
なんて微笑ましい光景、これを見て嫉妬するルイズが目に浮かぶ……。
はてさてダンケはどうなるのやら、次回が楽しみです。
後、誤字が有ったので報告しておきますね。“座ったままの体勢”の文章が“座ったままの大勢”になっているのでお時間の有る時に修正を。
2009-07-05 Sun 22:04 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
No title
タバサと五右衛門風呂・・・なんだか犯罪臭がするぞ

さて…このほのぼのとしたこの空間はいつまで続くかな?
2009-07-06 Mon 02:48 | URL | asakura #-[ 内容変更]
ちょっと待ってくれ!
ネクオロさんちょっと待ってくれ。
あんさんの書くタバサが可愛過ぎる。
もうだめだ・・・・・。
2009-07-06 Mon 14:23 | URL | OTL #-[ 内容変更]
No title
五右衛門風呂って面積狭いですよね?つまり…いや…はい…理解しましたよ?

うほぉぉぉぉぉぉぉ!!
2009-07-07 Tue 21:17 | URL | #LfiKTmzM[ 内容変更]
No title
にやにやw

タバサのお風呂フラグw

・・・まさか、ルイズも(ry
2009-07-09 Thu 22:06 | URL | レネス #qd0pqeIc[ 内容変更]
お、お風呂……?
タバサとダンケ……。
微妙に犯罪臭がするのは気のせいか?
2009-07-11 Sat 22:21 | URL | 容疑者・山田健二 #aAuxo48E[ 内容変更]
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