ネクオロでした
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リリ勘。 第十五話
2009-07-13 Mon 21:19

大樹は底辺レベルの成り立て魔導師である。

公園で拾った宝玉に唆された彼は、今日も自分の命を守る為に理不尽な世界と戦うのだ!


第十五話―――『それは託された希望なの! 最速の騎士と新たな絆』


「大―――変―――身―――っ!」
 と、何の脈絡もなく叫んだところで目が覚めた。
 自分自身、どうしてこの単語が出て来たかがよく判らない。
 ただ、子供の頃の憧れが未だ強く残っているんだろうということは理解出来た。
 誰にだって英雄願望はある。
 極稀にだが、それを大人になっても持ち続けているピュアな男が居てもおかしくはない。
 具体的に言うのなら、それに俺が該当するわけだ。
 いや、俺は誰に言い訳をしているのだろう。
 こんな場所に、俺以外の人間が居るわけがないのに。
 耐震偽造だが何だか知らないが、やけにグラグラ揺れている庭っぽい所をひたすら歩く。
 走らないのは底が抜けて落ちるのを恐れているからじゃない……実は、それもある。
 あるけど、一番の理由はそれではない。
 パラパラと天井から粉みたいなものが降って来た。
 いったいこれで何度目だろうか……?
 ガルウイングはフェイトちゃんのお母さんに盗られてしまったし、今の俺の防御兵装はボロボロの服だけだ。
 正直、固まった血がこびり付いているのでかなり不快な気分。
 もし仮に、この格好で街中を歩いていたならば、問答無用で捕まるに違いない。
「それにしても……おかしな所に迷い込んだもんだなぁ」
 空を見上げ深々と嘆息する。
 崩れた天井の隙間から見える“空”は、ぐにょぐにょと揺れ動いていた。まるでアメーバーだ。
 おまけに黒い。やたらと黒い。
 最初の方こそ夜だと思ったが、雲も無いのに星一つないのはおかしいだろう、流石に。
 俺の辿った経緯を簡単に説明するのならば、こうなる。
 呪文を唱えたと思ったら体に激痛を感じ、気付けばガルウイングを取り上げられて、再び意識を失い、ようやく覚醒した。
 で、訳も分からない所を彷徨っている、と。
 不幸中の幸い―――というより、奇跡なわけだが、どういうわけか俺の体の傷は完治していた。
 あれだけボロボロになっていたのに、不思議なこともあるものだ。
 もしかしたら、俺を不憫に思った誰かが助けてくれたのかもしれない。
 となると、いったい誰が回復させてくれたかという話になるわけで。
 一番可能性が高いのは、なのはちゃん達だろうが、そうだとしたら放って置かれる筈がない……と思う。足手まといなのは重々承知だけど。
 彼女達を除くとなると、一気に視野が狭まるなぁ。悲しい事に。
 そもそも二十歳を超えた男が小学生の女の子のお世話になっているという点からして、間違っている気がしてならない。
 というか、今更で恐縮なんだが、俺の怪我を治してくれたのはひょっとしてフェイトちゃんのお母さんじゃないのか?
 俺の前では娘は人形やら何やら言っていたけど、あの人が本当に悪い人ならフェイトちゃんのような良い子は育つまい。
 極度の照れ屋が災いして人の前ではツンツンしているその実、誰よりも娘の事を大事に想っているに違いない。
 その姿を見て育ったからこそ、彼女は優しい心を持った可愛い子になったのだ。
 そんな人が大怪我している俺を放って置ける筈がなく、「し、仕方ないわね! 別に助けてあげようとか思ったわけじゃないから。ただ、魔力が有り余っているから、何となく回復しただけだからね!」―――とまあ、そんな感じのノリで治療してくれたのだろう。
 こればかりは、ツンデレ乙と言わざるを得ない。
 情けは人の為ならず。
 人に親切にしてあげた分は、必ず自分のところに返って来るという意味のコトワザである。
 昔の人は実に良い事を言ったものだ。
 一人で感心していると、またしても屋敷(?)を地震が襲った。
 い、今の揺れは大きかったぞ!? 震源地が近いのか!?
 そわそわしながら、比較的頑丈そうな建物を探す。
 確か地震の時は建物の中に逃げ込めば安全な筈―――って違う、これは雷だ。
 え、えっと……こういう時はいったいどうすれば……。
 そうこうしている間にも揺れは徐々に激しくなっている。
 心なしか天井から剥がれ落ちる粉も大きな物になっている気がするし……。
 逃げたいけど、逃げられない。
 そんな気持ちを抱えて同じ所を行ったり来たりしていると、不意に目の前に金色の玉が浮かび上がった。俗に言う、人魂というやつである。
 逃げようとするが、天井から落ちて来たのだろう破片に足を取られて転んでしまう。
 無様に尻餅などつく俺。
 人魂は獲物が逃げられないことを悟ったのか、ゆっくりとその形を人のそれへと変容させていく。
 少しずつ露になる輪郭。
 ……どうやらこの人魂は元女の子の幽霊らしい。
 ぼやけているものの、頭の左右から長い髪が垂れているその様は、正しくツインテールだった。
 何気に、フェイトちゃんと同じ髪型である。
 そして……。
 俺はこの人影に見覚えがある、というわけだ。
 なのはちゃんと再会した夢の中、その中に出て来た幽霊っ子。
 目の前の人魂は彼女とよく似ている。
 ほどなくして、顔形こそ不鮮明ながら人の形を取った人魂は、その細い指である一点を指し示した。
 この時点で、かなり嫌な予感がするのだが……。
 というか、この少女が指している方角から明らかに地震っぽくない爆発音が聞こえてくる。
 危ない。明らかに危ない。命が危ない。
 無理ですと、俺は正直に首を振った。
 ガルウイングのない俺は魔法を一切使用することが出来ない。
 居ても役立たずで済めばまだ良いが、今の俺は肉の的以外の何者でもないのだ。
 折角、助かったこの命。むざむざ捨てることなど何故出来よう。
 ―――“…………”。
 幽霊の子が悲しむのが、何故かはっきりと分かった。
 顔のない―――表情のないその顔が深い悲しみと諦観に囚われていく。
 しかし、その中に俺に対する侮蔑の色は一つとして無かった。
 あの子はただ、自身の無力さを嘆いているのだ。
 自分のせいだと。自分が全て悪いのだと。
 そして、その顔が自分のよく知る一人の少女と重なった時、俺は信じられない言葉を口にしていた。
「じゃあ―――行こうか」
 ああ、なんて愚か者。俺は史上最低の大馬鹿野郎だ。
 この世の中に、命を進んで捨てに行く阿呆が何処に居る。
 だがそれでも……俺は彼女を無視することが出来なかった。
 立ち上がり、歩き出す。
 自分でも驚くほど、その足取りはしっかりしていた。
 振り返ると、そこにあの子の姿はなかった。
 まあ、もう一度くらいは会えるだろう。
 この進む先で―――きっと。


 ―――なんて、カッコつけていた自分を殴り飛ばしてやりたい。
 辿り着いた先には、当然の如く地獄が広がっていた。
 ガチャガチャと動く鎧が沢山、それを消し炭にする光弾が沢山、天井から降って来る瓦礫が沢山。
 毎度口にしている気がしないでもないが、俺は言う。
 まるっきり、場違いじゃないかっ!
 頭を抱えて岩の後ろに隠れる。
 瞬間、俺の頭の数センチ横に穴が開いた。
 ……呪いか? これはさっきの子の呪いなのか?
 声にならない悲鳴を漏らしながら、ゴキブリのように地べたを這い蹲る。
 当たったら死ぬ。見付かったら死ぬ。息したら死ぬ。
 ゴロゴロと地面を転がり、出来たばかりのクレーターに潜り込む。
 回避能力だけは成長しているな、確実に。
 荒い息を整えつつ、周囲を探る。
 綺麗な外見とは裏腹に、恐ろしい攻撃力を持つ光弾はもう見えない。
 動く鎧も、その全てが物言わぬ鉄屑と化していた。
「……で、次は何処に行けばいいの? 次こそ危なくないよね?」
 ―――“あっちだよ”。
 脳に直接響く、何処かで聞いたことのある愛らしい声。
 くっきりと闇に映えるその顔には、星のように煌く笑顔が溢れていた。
「……君、喋れたのね。お兄さん、びっくりだ」
 金髪の幽霊ちゃんと一緒にランデブー。
 このまま地獄に連れて行くとかは、ガチで無しにして欲しい。
 あとね、居なくなったと思ったら、実は俺の後ろにぴったりと張り付いていただけだった、とか。
 そういう誤解を招きそうな行動は止めて欲しいと説に思う。
 一人でシリアスしていた俺が馬鹿みたいじゃないか。
 立ち上がった瞬間に狙撃とかは勘弁なので、匍匐前進でジリジリと前進していく。
 幽霊ちゃんは俺の真上をフワフワと浮きながら、ついてきている。
 死にたくはないけど、そのスキルだけは羨ましいなぁ。
 お、おおっ!? また揺れた!?
 震源地に近付けば近付くほど、体感震度は大きくなるわけで。
 この先に待っているだろう真実とか知りたくもない俺は、五体満足な内にさっさと家に帰りたいわけで。
 ―――“こっちだよ、こっち。お兄ちゃん、急いで”
 だけど、この子の言葉に逆らえず、ほいほいとついて行ってしまうわけで。
 幽霊ちゃんに「お兄ちゃん」と呼ばれて、少しだけテンションが上がったのは俺と君達だけの秘密だ。
 そのまま進んで行くと、一際大きな空間に躍り出た。
 大きな瓦礫でも直撃したのか、床にぽっかりと穴が開いてしまっている。
 うわ、危なかった……。暗かったから気付かなかった。
 幽霊ちゃんと一緒じゃなかったら、きっと真っ逆さまだったろう。
 まあ、彼女と一緒じゃなければ、そもそもここに来ることは無かったのだが。
 とりあえず、後から来る人の為にメッセージでも残しておくべきだろうか?
 この先、落とし穴、注意しろ。とか。苦しいです、評価してください。とか。
 悩んでいると、幽霊ちゃんが下方を指差して言った。
 ―――“この下に妹が居るの。あの子を助けて……”
「この……下?」
 あー、詰まる所、ここから飛び降りろとそう仰られるわけですか?
 俺の問いかけに、こくんと可愛らしく頷く幽霊ちゃん。
 ……詰んだな。今度こそ完全に詰んだ。
 この穴の正確な深さは分からないし、知りたくもないが、底が見えない以上、二メートルや三メートルではあるまい。
 何度も言うようだが、今の俺は魔法もなにも使えない一級の貧弱一般人なのだ。
 あの見た目同様、かなりの重装甲を誇る装甲(BJ)もないというのに、いったいどうしろと言うのか。
 やはり死ねと、遠回しに死ねと言っているのかこの少女は。
 いや、落ち着け。少し冷静になるんだ俺。
 落ちたら死ぬも確かに大事だが、幽霊ちゃんは先ほど重大な発言をしていなかったか。
 そう。確か今はっきりと―――“妹”と。
「え、妹さんが居るの?」
 ―――“うん。たくさん辛い思いをさせちゃったけど、あの子は前を向いて歩こうとしているから。今もお母さんを止める為に頑張っているから。わたしはそれを助けてあげたい。力になりたいの。だからお兄ちゃん……お願い!”
 胸の前で両手を組み、その瞳に涙を浮かべて訴え掛ける少女。
 薄々は気が付いていた。
 彼女の容姿があまりに、俺の知っている女の子と似ていたから。
 そして、ようやく理解した。プレシアの言っていた言葉の本当の意味に。
「君は……フェイトちゃんのお姉さんなんだね?」
 ―――“……そうだよ。わたしはアリシア。アリシア・テスタロッサ”
 気付かない方がどうかしている。
 二人の容姿は似ているを通り越して、ほぼ“同じ”だ。
 そして、プレシアは言っていた。
 ―――あの子のようにはならなかった、と。
 フェイトちゃんがクローンならば、当然その“元(オリジナル)”が存在する。
 それが目の前の少女―――アリシアなのだろう。
 ……ごめんね。羊とか想像しちゃって。
 穴の底。深淵の奥で光が瞬いた。
 一拍遅れて、何かが爆発するような音が耳朶を打つ。
 視線を上げれば、今にも泣き出しそうな幽霊の少女。
 本当ならば、今すぐにでも自分が助けに行きたいと思っているのだろう。
 だけど、彼女は既にこの世から去った身。
 ただ見ている事しか出来ないのは、どれだけ辛いことか。
 自分に喝を入れるように、奥歯を強く噛み締める。
 一生に一度、勇気を振り絞ることが出来るのなら……今こそがその瞬間だ!
 穴を覗き込む。相変わらず深そうだ。
「…………」
 よし。まずはロープを探すところから始めよう。
 そう思った矢先に足を滑らせてしまったのは、世界からの修正かなにかか。
 虚空に投げ出される俺の体。
 当然、その先にはぽっかりと開いた穴がある。
 ああ、結局こうなるのか……。
 視界の端に、涙混じりの笑顔を浮かべるアリシアを捉えて。
 どこか諦観した思いなど過ぎりつつ、俺はゆっくりと穴に飲み込まれて行くのだった。


別窓 | リリ勘 | コメント:9 | トラックバック:0
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この記事のコメント
No title
幽霊幼女がマーキュリー回路になって能力3倍ですね、わかりますw
情けない様に見える回ですが、勘違いとかじゃなく自分の意志で行動してるんですよね
カッコつけて後悔してるとは言え、幼女の悲しみを払う為に歩き出した彼は真のロリ――ゲフンゴフン、ヒーローしてるぜ!
2009-07-13 Mon 22:07 | URL | ケト #eShRZu1Q[ 内容変更]
No title
今回も楽しく読ませてもらいました。
大樹はXライダー派ですか、個人的には昭和ライダーの中で
一番堅そうですが大樹のバリアジャケット的にはあってるのかな~。
そしてツンデレプレシア想像してなごんでしまいました、次も楽しみにしてます。
2009-07-13 Mon 22:22 | URL | miyo #-[ 内容変更]
No title
普通にいい人や~
がんばれ!主人公!
2009-07-13 Mon 22:26 | URL | コイピー #-[ 内容変更]
まさかの展開……。
アリシアが幽霊となって大樹の前に現れるとは予想外でした。夢の中でフェイトとプレシアに自分の思いを伝えてと頼み、サッと消えて行くのかと思ってました。
さて穴に落ちた大樹を迎える事態とは……次回に期待させて頂きます。
2009-07-13 Mon 23:10 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
ガキのツンデレより熟女のツンデレ!
頬を赤く染めたプレシアを想像して萌え、羊の姿をしたアリシアを想像し「ふっ」と笑ってしまいました。
次回、色々と大波乱の予感に期待しています。
では、
2009-07-14 Tue 14:03 | URL | : #-[ 内容変更]
ちと疑問。
プレシアって熟女と言われる程の年齢なのだろうか?
なのは世界の母親はほとんど外見と実年齢が一致しないし……。
2009-07-15 Wed 09:24 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
No title
26年前にアリシアが5歳。
んでもって、プレシアがアリシアを生んだのが28歳のとき。
年齢的には熟女といっていいようです。
2009-07-15 Wed 22:17 | URL | #-[ 内容変更]
No title
セッタァップ!セッタァァップ!!セッタァァアアッッップ!!!
2009-07-16 Thu 01:02 | URL | バタピー #2DdjN05.[ 内容変更]
No title
すごく、続きが気になりますw
がんばってください!
2009-07-19 Sun 00:43 | URL | Fat #mQop/nM.[ 内容変更]
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