ネクオロでした
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リリ勘。第十九話。
2009-10-01 Thu 23:44
(0w0)オンドゥルルラギッタンディスカー!
 
第十九話―――其は時を切り裂く銀の翼……なの? 最速の騎士と最後の呪文。


 俺の視界に飛び込んで来たのは、茶色の大きな鎧のお化け。
 その背中には大きな砲台が一つ、装備されていた。
 見るからに凶悪そうな代物である。当たったら痛いとか苦しいとか、そんなレベルじゃ済むまい。
 おまけにソイツはバリアまで持っているらしく、アースラの砲撃を受けながらビクともしていない。
 何という卑怯性能。実に羨ましい。その性能の半分でもいいから、俺に分けてくれ。
 などと言っている場合じゃなかった、こっちは生身なのだ。
「大変身―――ッ!」
 再び装着されるBJ。
 手の動きもいちいち再現しないとダメだから、急いでいる時とかかなり煩わしい。
 つか、前は何も言わずに装着出来た気がするのだが……ランクダウンしてないか?
 スラスターを吹かして体勢を整える。
 ……うん、無理。でかいし、硬そうだし、強そうだし。俺が勝てる要素が何一つ見付からない。
 だが、以前の俺ならばここで取り乱し、挙句の果てに魔法を使って突貫していただろう。
 しかし、今は違う。紆余曲折を経て進化した俺は、慎重に行動出来るようになったのだ。
『敵魔導兵の背部に魔力が集中しています。なるほど、確かに今のアースラにはあれに耐え得るだけのフィールドを維持するエネルギーは存在しない。量産機にしては中々、賢い考え方をするものだ。だがまだ甘い。ですよね、マスター』
「いや、知らんって」
 ヴァイザーには俺を行動不能に追いやった魔のスペルが投影されている。
 ふざけるな、口が裂けても言ったりするものか!
 俺がこの呪文のせいでどれだけ酷い目に遭ったか……やばい、思い出すだけで震えて来る。
 実際に知っているのは、惨劇が起きたあとのことだけだが。
「怖くて仕方が無い時、どうすればいいんだっけなぁ……。昔、テレビで対処法をやっていた気がするけど、思い出せないのが悔しい!」
『アースラから通信。辛うじてですが、通信が安定してきたようです。繋ぎますか?』
「お、おお、宜しく頼む。―――あ、思い出したぞ!? 本当に怖い時はわざと逆のことを口に出せばいいんだ。よし、余裕だ。あんなデカブツなんて俺一人で余裕。楽勝。誰の助けも要らないぜ! お、楽しくなって……来るわけないだろ。怖いよ、普通に」
 勝手に盛り上がり、勝手に盛り下がるバカが一人。
 得意の現実逃避をしようにも、鎧一枚向こうが恐ろし過ぎてそんな気にさえならない。
 それにしても、通信はまだ繋がらないのか!?
 時折、ブツブツと音を聞こえるけど、強いて言うのならそれだけだ。
 こっちの声が届いているのかさえ分からないのだから、もはや手の打ち用がない。
『マスター、ようやく通信が平均レベルにまで安定しました。これでアースラクルーとの対話が可能になった筈です』
 よ、良かった。一人ぼっちはすごく不安だったんだ。
 最初にヴァイザーに映ったのは、リンディさんだった。
 ああ、助かった。棺を固定するロープを探すつもりが、まさかこんなことになるとは。
 だけど、怖い思いもこれでお終いだ。
『大樹君、一つだけ言わせて』
「あ、はい……」
 リンディさんがかつてないくらい真面目な顔をしている。
 やばい、悪寒が止まらない。
 これは……俺はとんでもない思い違いをしているんじゃ……。
『貴方の帰りを待っている人が、ここに何人も居ることを忘れないで。生まれた過程がどうであれ、貴方は―――貴方はもうアースラの大切なクルーなの。だから、必ず無事に戻って来ること。これは命令です。いいですね?』
 ……へ。
 一瞬、頭がフリーズした。
 それも無理はないだろう。いつの間にか、俺があの大きいのと一人で戦うことになっていたのだから。
 あと、リンディさんの口にした「生まれた家庭~」とかいう台詞が地味に気になる。
 俺の家庭は普通なわけで……これ以上ないくらい平均的なわけで。
 少なくとも、魔法とかいうSFに関わるまでは人並みを地で行っていたと自負しているのだが。
 気付けば、画面に映る顔がリンディさんからフェイトちゃんに代わっていた。
 その綺麗な瞳がすごいウルウルしているのが、気になって仕方ない。悪寒も止まらない。
『大樹……。わたしのわがまま、一つだけ聞いてほしいの』
 今更だけど、俺って彼女から名前で呼ばれているのね。しかも呼び捨て。
 嫌とかそんな気持ちは抱かないけど、なんだかちょっとだけ新鮮な感じだ。
 俺を名前で呼ぶ人間なんて、家族ぐらいのものだからなぁ。
 まぁ、本当にどうでもいい話でごめん。誰に謝っているのかは知らんが。
「……な、なに?」
 この表情からして、クマのヌイグルミが欲しいとかそんなノリじゃないだろうなぁ。
 聞きたくないと、拒めない自分が憎い。
『わたしね、大樹がわたしと同じって知った時、実は嬉しかったんだよ。同じ人が居るんだって、わたしも生きていていいんだって。だから―――絶対に帰って来て。わたしを……一人にしないでください』
 両手で顔を覆うフェイトちゃん。
 彼女を後ろから抱き締めるアルフの目にも、大粒の涙が光っている。
 一緒、一緒……。まったく心当たりがないのですが。
 あ、もしかして、あれか。お化けが怖いとかそっちの話なのか?
 も、もうそういうことにしておこう。これ以上、考えると頭がおかしくなりそうだ。なにより、真実を知るのが怖い。
「君は一人なんかじゃないさ。アルフが居るし、アリシアも居る、お母さんだって居る。そして、なのはちゃんという友達だって居るじゃないか。当然、その中には俺も居るから。戻ったら……そうだな、美味しいパンの売っているコンビニを紹介するよ。今度一緒に行こうね」
 女の子が喜びそうな場所が浮かばなかった。
 だからと言って、コンビニを紹介するのはどうかと思う、自分でも。
 ところが、俺の予想に反してフェイトちゃんは嬉しそうだった。
 涙は相変わらずポロポロと零れてはいるが、その顔には笑顔が浮かんでいる。
 コンビニが好きなんだな、とは流石の俺も思わない。生憎とそこまで疎くはない。
 そうか、君はパン派だったのか。気が合いそうだ。
 次は―――なのはちゃんか。
 俯いていて、その表情が分からないのが微妙に怖い。
 この子も怒ると怖いからなぁ、油断出来ないのだ。
『わたし、さっき約束しましたよね? あとで説明してもらいますって』
「あー、そうだね」
 怖い。すごく怖い。
 口調が一定なのがそれに拍車をかけている。
 ヴァイザーの内側で、冷や汗を垂れ流す二十歳過ぎの男。
『その約束も果たさないまま、大樹さんは外に出て行っちゃったわけですが』
「い、いや、好んで出て行ったわけじゃ―――すみません。もうしません」
 ダメだ。勝てない。勝てる要素が見付からない。いや、要素は最初からなかった。
 若干九歳にしてこの迫力。大きくなったらさぞ立派な女傑になるのだろう。
 今のウチから「様」付けで呼ぶ練習でもしておくか。
 なのは様、なのは様。
 ……しっくり来すぎて怖い件について。
『リンディさんはお説教の時間を倍にするって言ってました』
「マ……マジ?」
『嫌ですか? リンディさんのお説教。オイシイオイシイお茶付きですよ?』
「……正直なところ、嫌です」
 おいしいの言い方が片言なのが不気味だ。
 だが、その気持ちは痛いほど分かる。一度経験したことのある者にしか分かるまい、あの苦しみは。
 正座させられるのはまだいい、もう慣れた。
 問題は最中に勧められる、あの甘いだけのお茶だ。
 日本人なら間違いなく悶絶する。外国人なら……そういうものと思うかもしれない。二度と飲まないだろうが。
『……なのはが、説得してあげてもいいですよ?』
「お願いします」
 即答だった。自分でも驚く速度で、返答が口を突いて出た。
 そんなに嫌なのか―――嫌だな。地獄だ。生き地獄だ。
 要らないと言えば、リンディさんが悲しい顔をするのだ。反則だ。あの容姿で子持ちとかね。わけ分からん。
 飲まないと悪い気になるだろうが……ちくしょう、あの策士め。
『分かりました。だったら―――』
 なのはちゃんが顔を上げる。
 その顔に浮かんでいたのは……笑顔だった。
 向日葵のように、見る者を元気付けてくれる満面の笑み。
 瞳の端に涙の滴を溜め、それでもなのはちゃんは笑っていた。
『ちゃんとわたしの前で“お願い”してください。こんな画面じゃなくて、ちゃんとわたしの前で』
 ……そういうことね。
 そういう可愛らしいお願いを無碍に出来るほど、俺は冷血な男じゃない。
 女の子には優しくしないとダメだと、小さい頃から教わってきたしな。
 ただ今まで、そんな機会が無かっただけの話だ。
 婆ちゃん、やっと婆ちゃんの言い付けを守ることが出来るよ。相手は九歳の女の子だけど。
「……あいよ。それじゃあ、その時は宜しく頼むよ」
 目標は生きて帰る。
 果てしてなく難しい気もするが、やるしかない。
 帰ったらリンディ茶が待っていると思うと限りなく憂鬱にもなるが、死ぬよりはマシだ。多分ね。
『今、聞きましたからね? 約束破ったら怒ります……から、ね?』
 微笑んだ拍子に、その瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
 何だか、さっきから女の子を泣かしてばかりいる気がする。
 喜びの涙ではなく、その全てが心配しての涙なのが辛いところだ。
 ……ごめんね、外に飛び出したのが俺で。
 これがクロノ君とかだったら、皆で熱く応援しながら見守ることが出来るんだろうなぁ。
『マスター、敵魔導兵がチャージを完了したようです。収束していた魔力を背の砲台から撃ち出し、アースラを撃沈しようとしているのでしょう。しかし、それは同時に我等の好機となります。砲撃を放つ瞬間、フィールドは消滅する。その一瞬の隙を突き、あの哀れなクグツを葬ってやろうではありませんか』
「オーケー、オーケー。やってやろうじゃないの」
 なにもしないと吹き飛ぶというのなら、せめて行動を起こしてから吹き飛んでやる。
 ―――訂正。やっぱり吹き飛ぶのは勘弁願いたい。
 スラスターを調節して、クグツ兵と正面から向き合う。
 このヴァイザーの内側で激しく自己主張している呪文、これを使うしかないんだろうなぁ。恐らくは。
 ガチャンとか音がして、鎧お化けの砲身がスライドした。
 画面に映る「危険!」という文字。何故に日本語。
 それに呼応するように、俺の背負ったタービンから蒸気が噴き出した。
 よく分からない理論で動く機関が唸りをあげ、その回転数を上げていく。
 ガ、ガチで誰かと戦うなんて、これが初めてじゃないか?
 こういうのは普通、最終回まで取っておくものではなかろうか。
 そんなメタなことを考えていると、不意に視界に金色の影が飛び込んだ。
 体の透けた、フェイトちゃんとそっくりな女の子。
 ―――“お兄ちゃん、わたしの力も使って!”
 アリシアの体が光の粒になり、ガルウイングに吸い込まれていく。
 不思議なことが一度に起こり過ぎて、半分ほどしか頭が動いていないが……これ、大丈夫なのか?
 気分はダンケ―――じゃなくてダンテ。赤い悪魔狩人の方である。
 巷ではこういうの最終回フラグっていうらしいぜ?
『……デバイスコア内部に新たな魔力反応を確認。まさか私以外に定着する者が出るとは……正直、今でも信じられません。……ふふっ、これもマスター、貴方の人徳が成せる技、なのかもしれませんね』
 ガルウイングの声音は何処か誇らしい。
 そして、依然としてコイツの言っていることはよく分からない。
 定着やら蒸着やら言われても、俺にはなんのことかサッパリだ。ギャ○ン? ギャ○ンなの?
 ただ、アリシアが力を貸してくれているのはなんとなくだけど、分かる。
 この感じ、これは似非ラ○ダーに初めて変身した時に感じたものと同じだ。
 だったら―――やれるか? 脅威の二段変身を! 再改造で埋め込んだ超電子ダ○ナモの力を見せてやる!
「チャ―――ジッ! ア―――プッ!!」
 気分は正にスト○ンガー。
 一瞬、イグニションと言おうかと思ったのはここだけの秘密。
 俺の灰色の魔力光に、金の光が織り交ぜる。
 体を駆け巡る魔力の奔流。輝きを増す、ガルウイング。
 収束した魔力が俺のBJを新たな姿へと変えていく。
 金のラインが刻まれ、首には余剰魔力を排出する為のマフラーが顕現した。
 生憎と胸のマークは回転していないが、その代わりにヴァイザーが力強く明滅している。
 これにて変身完了。これこそが、俺の奇跡の第二形態。チャージアップである。
 ―――“守ろう、皆を! この世界を!”
 アリシア、ノリノリだね。
 だが、確かに今なら行けそうな気がする。
 大抵、パワーアップした主人公と最初に戦う敵は、ろくな抵抗も出来ずに撃破されるものだし。
 問題は、俺が主人公の器じゃないという一点にあるわけだが。
 いや、悩むのはあとだ。今はアリシアを信じるしかない。
 悲しいことに、自分やデバイスのことは信用出来ないくせに、会って間もない少女の方が信用出来るのが俺という人間なのである。
 まったくと言っていいほど、良い思い出のない呪文を再び唱える。
 願わくは、今度こそ痛い思いをしなくて済みますように。
「行くぞ、デカブツ! グラビティ・ブ―――ズドッ!?」
 やべ、噛んだ。

別窓 | リリ勘 | コメント:8 | トラックバック:0
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この記事のコメント
No title
 更新お疲れ様でした。最高でした。原作では、どうな展開であれと戦ったのかが知りませんが、わざわざ一人で戦うなんて…。

 今回は、裏も見てみたいです。久しぶりに覗いたので、フェイトの一緒って何?と思っちゃいました。
2009-10-02 Fri 13:46 | URL | 凡士 #-[ 内容変更]
なのは達側で何があった?
リンディさんの“生まれた過程がどうであれ”とフェイトの“わたしね、大樹がわたしと同じって知った時、実は嬉しかったんだよ。同じ人が居るんだって、わたしも生きていていいんだって。だから―――絶対に帰って来て。わたしを……一人にしないでください”という発言は前回の話で大樹が言った「そっか……。そうだよなぁ、最初は誰だって戸惑うよな。受け入れられないよな」
「俺も……そうだった」
「俺は一度逃げ出した。怖くて、直視出来なくて……。だけどフェイトちゃん、君は俺とは違う」と言う発言を勘違いして受け取ったからこうなったのか?早くなのは達側で何があったのか見たいですね。
さあ大樹よ、君は果たして最終決戦後、行方不明になるフラグを回避できるか?
こりゃ次回が非常に楽しみです。
あっネクオロさん、タイトルの話数が「第十九話」じゃなく『第十八話』になってますのでお時間のある時にでも修正をお願いします。
2009-10-02 Fri 20:09 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
No title
かっこいい………イグニションを言えばさらに……
「ディメンション・ブースト!!」とかで特攻ですね。技名の前に語りが必要な技に登場して欲しいですね。

『俺の命くれてやる!!砕け!!ディメンション・ブースト!!』

厨二病は、実力が有れば出来るよね。無いと……うん。
2009-10-02 Fri 23:14 | URL | コイピー #-[ 内容変更]
No title
やっとBJのイメージが固定した。ギャ○ンだったのか!w

これは…時をかける青年になりそうな旗が立ったのだろうか。
惜しいのは通信が繋がった時の勘違いの温度差がちと分かりにくかったからかな。アースラに繋がった不透明な通信メッセージのせいでどんだけ勘違いが発生してるかみものです。

きっと茶吹くんだろうなwww
2009-10-03 Sat 22:51 | URL | トオリスガリノカメンライダッ #-[ 内容変更]
No title
最高におもしろかったです。
2009-10-06 Tue 21:42 | URL | #-[ 内容変更]
No title
いつの間にか色々更新されていた事に驚きました!!!

この頃の大樹は諦めとノリが非常にいい感じになって来ましたね~
この調子でドンドン突き進んでください。

最後の方で「グラビティ・ブースト」を唱えている様ですが、大樹は
既に噛んでいる時点で『願わくは、今度こそ痛い思いをしなくて済みますように~』
という願いは叶えられそうにないですね(苦笑)

更新お疲れ様ですm(_ _)m
2009-10-09 Fri 13:51 | URL | asakura #-[ 内容変更]
No title
なのはとの会話死亡フラグじゃないか?
なにがあって大樹があんな勘違いされてるのか...
なのは側からの視点が楽しみです
更新頑張ってください
2009-10-11 Sun 07:55 | URL | ヤス #-[ 内容変更]
No title
楽しく拝見させていただいてます!
ヘタレなのに熱い!(…そして周り流される)のは勘違い系の王道ですね。

ギャ○ン+ライダー=たち○なさんと一瞬思ったら、宇宙刑事でしたw
だって冒頭のコメントが…
2010-02-20 Sat 17:15 | URL | ばん・ぶー #tHX44QXM[ 内容変更]
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