ネクオロでした
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リリ勘。幕間。
2009-11-01 Sun 18:07
幕間。

リリ勘も残すところ、あと二話となりました。

もう書きあがっているので、今月中に掲載することが出来ると思います。

ここから先、オリ展開注意!
 

間章―――それは0から始まる物語なの。金の姉妹とお母さん。


 意識が覚醒する。
 ゆっくりと瞼を開け、飛び込んで来た光に顔を顰めた。
 まず浮かんだのは、自分が生きていることに対する疑問だった。
 遅過ぎる答えを得たあと、自分は奈落の底へと引きずりこまれた筈だ。
 光の届かぬ深淵の闇。
 全ての魔法を無力化する、次元の底無し沼へ。
 ならば、眼前に広がるこの光景はいったいなんなのだろうか?
 彼女の視界に入っているのは無機質な天井のみ。
 だが、それは本来ならば在り得ない筈の光景だ。
 一瞬、夢でも見ているのかとも思ったが、それが過ちだとすぐに気付く。
 これがもしも夢だというのならば……“この娘”が居るわけがない。
 彼女―――プレシア・テスタロッサの隣には、金の髪を持つ少女が一人、ベッドに寄り掛かるようにして静かな寝息を立てていた。
「フェイ……ト……?」
 愛娘アリシアのクローンとして生み出した、少女の名前。
 どれだけ傷付けても、否定しても、最後の最後まで自分の事を母親と呼んでくれた少女がそこに居た。
「フェイトさんはね、この三日間、一睡もせずに貴女の目が覚めるのをずっと待っていたのよ」
「貴女は……」
 部屋の入り口に立っている一人の女性。
 プレシアはその顔に見覚えがあった。
 たしか、“時の庭園”に侵入してきた時空管理局の艦、それに乗っていた人物だ。
 あの時は空間モニター越しの面会だったが、研究者だけでなく、魔導士としてもかなりの技量を持つプレシアには分かっていた。
 自分にとって一番の障害となるのはこの女性だろう、と。
 その人物が今、目の前に居る。
「直接お会いするのは初めてですね。わたしは時空管理局所属時空航行艦アースラの艦長、リンディ・ハラオウンです」
 鮮やかな緑髪。穏やかながらも、鋭い光を帯びた瞳。
 年齢は自分と同じか、やや下といったところか。
 その身に内包した魔力は全盛期の自分に匹敵するものがある、とプレシアは判断した。
 ジュエルシードの力を使用していたあの時ならまだしも、今の弱った体ではなんの抵抗も出来ずに敗れることだろう。
 もっとも、今更抵抗する気など欠片もないのだが。
 アリシアを蘇生するという願いは結局、叶わなかった。
 なに、元より成功する確率の方が極端に低かったのだ。
 自分はただ、幸せだったあの頃を忘れたくなかっただけ。
 アリシアと共に過ごした日々を、過去のものにしたくなかっただけ。
 その想いだけを胸に、ここまで抗って来たに過ぎないのだから。
 過去にすがる余り、未来に目を向ける事を忘れていた自分。
 本当に大切なものがすぐ傍にあったというのに、気付かずにいた―――いや、気付こうとさえしなかった。
「……あの状況で助かるなんて……ここまで来たら私の悪運もたいしたものだわ」
 自嘲気味に笑うプレシア。
 そんな彼女を見据え、リンディは静かに―――そしてなによりはっきりと言った。
「それは違います。貴女がここにこうして居られるのは、貴女に生きていてほしいと願った子たちが居たからです。彼らが諦めなかったからこそ、今の貴女がある」
「……フェイトね」
 自分を助ける人物に心当たりがあるとすれば、一人しか居ない。
 時空管理局の人間も一応、救出しようとはするだろうが、自分の命を賭けてまで他者を―――次元犯罪者を救おうとは思うまい。それが管理局以外の人間ならば尚更だ。
 だがしかし、リンディから返って来た言葉は、彼女の予想の斜め上を行くものだった。
「フェイトさんだけじゃないわ。貴女の娘さんは、彼女だけではないでしょう?」
「まさか……アリシア、が? だけど、あの子は―――」
 ―――“わたしはここに居るよ。ずっと、お母さんの傍に”
 金色の蛍火が集まり、それがじょじょに少女の姿へと変わっていく。
 プレシアが再会を切望していた娘は、あの日の姿のままそこに居た。
「アリ……シアなの? 本当に、私の大事なアリシア……?」
 体の色素が若干薄くなっていることを除けば、少女の姿は記憶の中のアリシアと一致していた。
 だからこそ、簡単に信じることは出来なかった。
 死者を蘇生させる術はアルハザードにしか存在しないとされている。
 栄華の粋を極め、叶えられない望みなどないとされた神秘の地“アルハザード”。
 かの地が存在していることは、あの魔導士の持っていたロストロギアによって確証された。
 そこに到達する為、願いを叶えるという性質を有するロストロギア“ジュエルシード”を使い、あのデバイスに記録されていたアルハザードへの門を開くつもりだったのだ。
 しかし、その願いは断たれ、長い月日と膨大な魔力、そして己の命をかけて構築された魔法陣は崩壊し、時の庭園は次元の狭間に呑み込まれた。
 プレシアの最後の記憶は、アリシアの幻影を見た直後で途切れている。
 故に、どのような経緯で自分が助かり、時空航行艦に収容されたのかが分からない。
 そこにきて、もはや実現しないと思っていた娘との再会。
 彼女が困惑するのも当然といえた。
 幻影魔法の類かとも思ったが、それにしてはあまりに完成度が低過ぎる。
 容姿こそあの日のアリシアそのものだが、その体は微妙に透けており、画面がノイズで乱れるように、時折不規則に明滅さえしている。
 これでは自分どころか、魔導と関わりを持たない一般人ですら騙せまい。
 押し黙るプレシアを見て、なにを思ったのか。
 アリシア(?)は開口一番にこう言った。
―――“お母さんのバカ! ちゃんとフェイトに謝らないと、もう一生口利いてあげないからね!”
 と。
 その頬を膨らませ、ピンと立てた人差し指をプレシアに突きつける。
 生前、アリシアは明るい少女だった。
 大人に囲まれて育った為か、物怖じせず、誰にも元気に接するマスコット的な存在。
 フェイトが誕生した時、彼女は生まれながらにして大人しい性格になっていた。
 自分の意思を口にすることは滅多になく、人見知りの激しい内向的な性格に。
 だから、プレシアはフェイトに失望したのだ。
 アリシアの遺伝子を持ちながらも、まったくその性質を受け継がなかった失敗作として。
 仮に、アリシアが生きていたとして、自分の今までの所業を見ていたらどう反応するだろう?
 脳裏に浮かんだその疑問に、自分の知っているアリシアの性格をあてはめていく。
 結論は思いのほか早く出た。
「アリシア……なのね? ああ……っ、やっと会えた。やっと……願いが叶った。やっと……貴女に謝ることが出来る。……アリシア、本当にごめんなさい。私のせいで、私のせいで貴女には苦しい思いをさせてしまった。辛い思いをさせてしまった。貴女の未来を……奪ってしまった」
 涙が溢れる。
 謝罪の言葉が止まらない。
 自分の失態のせいで奪ってしまった娘の命。
 もう一度会うことが出来たなら、口にしたいと思っていた謝罪の言葉。
 ―――“だ、ダメだからね! フェイトに謝るまで、お母さんとは口を……”
 最初こそ気丈に振舞っていたアリシアだったが、その顔はとうの昔に涙でくしゃくしゃだった。
 堪えることが出来ずに流れた涙が、光る粒子となって虚空に消えて行く。
 ―――“口利いてあげない……お、母さん……お母さん!”
 もう限界だったのだろう。
 アリシアがプレシアの胸に勢いよく飛び込んでいく。
 だが、彼女の体は魔力で構成された虚像に過ぎない。
 密度の高い魔力塊であれば、一時的に実体を持つことも出来るだろう。
 なのはが最初に相対したジュエルシードがそうであったように。
 しかし、アリシアは違う。
 彼女はガルウイングのデバイスコアに定着したデータの一部に過ぎず、彼女に出来ることと言えば、せいぜい擬似リンカーコアとなって周囲の魔力素を取り込み、それを蓄積することぐらいだ。
 蓄積出来る量もそれほど多くはなく、自身の虚像を投影するので手一杯。
 アリシアがどれだけ母親に近付こうと、決してその距離が0になることはない―――筈だった。
 不意に、少女の体を灰色の光が覆った。
 色素の薄かった体に生気が宿り、揺らぎも完全に消滅する。
 届くことのない距離が、長い月日をかけてようやく零になった。
「アリシア……」
 胸に顔をうずめて泣きじゃくる娘を、愛おしそうに抱き締めるプレシア。
 擦れ違っていた日々の溝を埋めるように、二人はしばらくの間、無言のままそうしていた。


「ん……んぅ……」
 少女―――フェイトが目を覚ました。
 プレシアの意識が覚醒するまで、ずっと見守っていようと誓った彼女だったが、その体に蓄積された疲労は既に限界に達していたのだ。
 いくら膨大な魔力を内包しようと、その身は幼い少女のものに他ならない。
 その上、クグツ兵を排除する為に連続して強力な魔法を使用していたのだ。
 これで体にガタが来ない方がおかしい。
 寝ぼけ眼を擦り、すぐに自分の立場を思い出して飛び起きる。
 母親の様子を窺おうと視線を動かし……その双眸が歪んだ。
「母……さん」
 フェイトの眼前には、半身を起こしたプレシアの姿があった。
 彼女の病は、現代の医術を以ってしても治癒出来ない難病だ。
 だからこそ、プレシアは己が命の尽きる前に何としてでも禁断の地に辿り着こうとした。
 その目論見は結局、世界を守ろうとする魔導士たち、そしてその娘の手によって阻止されたわけだが……。
「あ……」
 プレシアの傍らに居るアリシアを見付け、フェイトは小さく声を漏らした。
 俯き、軽く首を振ってから座っていた椅子から立ち上がる。
 愛されていなかったとしても、自分が今までプレシアと共に居たことに変わりはない。
 それに比べて、アリシアは長い間、母親と一緒に居ることは出来なかった。
 それが今ようやく、親子は同じ時間を共に過ごせている。
 これを邪魔することなど、心の優しい少女には出来るわけがなかった。
 ペコリと頭を下げ、部屋から出て行こうとする。
 扉の傍に居るリンディと目が合うが、彼女は何も言わず、彼女たちの動向を見守っていた。
 フェイトの手が扉の開閉ボタンにかかる。
 その直後、彼女の背に声がかけられた。
「誰が出て行っていいと言ったの? フェイト、さっさと戻って来なさい」
「え……」
 驚きのあまり、扉の前に立ち尽くす。
 恐る恐る振り返ると、そっぽを向いているプレシアと、苦笑しているアリシアの姿が目に入った。
「いても……わたし、ここに居ても……いいの?」
 声が震えている。
 涙が頬を伝い、床に小さな水溜りを作った。
 そんな少女に、プレシアは顔を背けたまま、ぶっきらぼうに言った。
「しつこい子ね。貴女は“母さん”に何度も同じことを言わせるつもりなの?」
 ―――母さん、と。
 今、確かにプレシアはそう口にした。
 心が通じ合う前、フェイトが母親の言にただ従っていた頃に何度も聞いた筈のその言葉が。
 何より深く、少女の心の琴線に触れた。
 真実を知ったあの時、母親の願いを断つと誓ったあの時、二度とそう呼ぶなと命じられた言葉。
 それが、プレシア本人の口から飛び出した。
 この真意に気付かぬほど、少女は鈍くはない。
「―――っ! 母さん……!」
 金の髪を揺らし、フェイトがプレシアに抱き付く。
 その背に手を置き、優しく撫でる母親。
 ―――フェイト、ごめんなさい。そして、ありがとう―――
 誰より近くに居ながら、誰よりも遠かった親子の距離。
 それが今、やっと0になったのだ。
 0は終わりの数字ではない、これは始まりの数。
 0はやがて1となり、その先へと進んでいく。
 二人の姉妹と、一人の母親。
 彼女らの距離が0になった今日ここから、彼女たちだけの新たな1が始まる。
 それを祝福するように、ベッドの傍らに置かれたデスク―――その上にある灰色の宝玉がキラリと輝いた。





友人。
別窓 | リリ勘 | コメント:5 | トラックバック:0
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この記事のコメント
No title
オリジナル展開がなんぼのものですかっ。

ハッピーエンドでも、ほのぼので洒落が効いている。いいものを見た気分です。

ガルウィング、確かに貴女独自に魔素操れるけれどもしかしてこのアリシアの密度増やすのに大樹の勝手に使ってませんよね?(汗
それだと次話の最初に大樹が苦しんでるんですが(冷や汗

いやぁ、しかし大樹が今回はかっこよかった。勘違い文章なのにこっちが勘違いしそうな程に、不思議と情けない会話なのに起こしてる現象は「無言で強敵が消滅している。振り返る事すらなく戻る銀の騎士は一瞥もくれずただ帰途に着いたのであった……」とな。
既に決着がついているぞの中では、情けない会話もかっこよくなると理解しました。

さりげなくガルウィングの事を理解しきってるんじゃないかwww
お似合いだよこのコンビ。
2009-11-01 Sun 18:30 | URL | トオリスガリノカメンライダッ #-[ 内容変更]
良い話だ……。
二人の姉妹と、一人の母親。 彼女らの距離が0になった今日ここから、彼女たちだけの新たな1が
始まる。 それを祝福するように、ベッドの傍らに置かれたデスク―――その上にある灰色の宝玉がキラリと輝いた。
ガルウイング………GJ!
2009-11-01 Sun 22:09 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
No title
今回もおもしろかったです。

締めがどうなるのか、今から楽しみです。
これからも頑張って下さい。応援しております。
2009-11-03 Tue 13:39 | URL | Ika #-[ 内容変更]
No title
私はこういう展開は好きじゃありません…






大好きですね!!!
2009-11-05 Thu 00:41 | URL | #-[ 内容変更]
No title
『どっかの世界の……フェイトさん?』を読んで以来、プレシアのことも好きになってきた自分としてはハッピーエンド万歳!
2009-11-05 Thu 09:04 | URL | : #-[ 内容変更]
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