ネクオロでした
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零の使い魔。 ~聖十字の騎士~ 第十八話
2009-11-22 Sun 20:57
今回のお話は繋ぎです。

安定した(?)勘違いは次回からとなっております。

☆ ☆ ☆

あ、シエスタに弁当渡すの忘れてた。

                                                <ダンケ>

すぅ……すぅ。

                                                <主様>
 ―――かっぽ。かっぽ。
 馬に乗って、学院へ戻る道をひた走る―――というより、ひた歩く。
 行きの強行軍でお馬様はバテてしまったのか、今はちゃんと言う事を聞いてくれている。
 俺の後ろにはシエスタが乗っていた。
 依然としてあの刺激的な格好のままで。
 実をいうなら、俺よりも彼女の方が馬の扱いに長けていたりする。
 だが、今は色々あって混乱しているようなので、俺が頑張って手綱を握っているわけである。
 それにしても、意外と着痩せ……い、いや、何でもない。
 シエスタは後ろから俺の腰に手を回している格好で座っている。
 故に―――当たるわけだ。何がとは言わないが。……実にけしからん。
「ダンケさんは……仰いましたよね。運命なんか認めないって」
「……ああ」
 そんなカッコいい言い方をした覚えはないけど。
 実際、認めたら切なくなるから認めなかっただけだ。
「わたしは今まで―――ううん、今も貴族が怖くて仕方ありません。だけど、思うんです。怖がっているだけじゃ、いつまでも前には進めないんじゃないかって」
「……そうだな」
 俺も怖いよ、あの技術職の人達が。
 あの薬中のおっさんだって、杖の力で水操ってきたし。
 どういう原理だよ、水を空中で固定させたあとに動かすとか。
 分子やら原子やらそんなレベルの話でしょうか?
 生憎と文系の俺にはさっぱり理解出来ない。
 おっさんが薬にさえ溺れていなければ、今頃俺はウォーターカッターで輪切りになっていたかもしれない。
 飲んだら乗るな、飲むなら乗るな。
 飲んだら振るな、飲むなら振るな。
 ドイツではきっとそういう標語があるに違いない。
 薬と酒、微妙に違うような気もするが、細かいところは勘弁してほしい。
「そう思わせてくれたのは……貴方なんですよ」
 背後でシエスタが笑った―――ような気がした。
 それって、俺があまりにビビり過ぎているから、「コイツのようにはなりたくない!」的な心理が働いたということか?
 まあ、シエスタがそれで前向きになってくれるというのなら俺は別にいい。
 学院に居た時も、彼女は必要以上に貴族を怖がっていた。
 俺も同じぐらい―――もしかしたらそれ以上にビビっていたかもしれないが、顔には出ない仕様だった。
 それが良いことなのか、悪いことなのかは俺にも分からないのだが。
「約束、覚えていますか?」
「……約束?」
 近い内に会いに行く、以外に何か彼女と約束しただろうか?
 俺が忘れていることに気付いたのか、シエスタは少し寂しそうに呟く。
「もしまた会うことが出来たら―――」
 そこまでシエスタが口にしたところで、ようやく思い出すことが出来た。
 最後まで言わせるわけにはいかないと、慌てて口を開く。
「……風呂、か」
 ―――もう一度五右衛門風呂に入らせてほしい。
 それが、シエスタの自ら口にした約束だった。
 あんなお粗末風呂で良ければ、いつだって入りに来ていいよ。
「その……いいですか?」
 背中の後ろで身じろぐシエスタ。
 別に反対するつもりは更々ないので、素直に頷いておく。
 準備に時間が掛かって面倒だとは思うが、やはり彼女も五右衛門風呂の虜になったということか。
 これならタバサも気に入ってくれることだろう。
 自分の作った風呂をここまで気に入ってくれるとは……普通に嬉しい。
 顔は無表情、心はニコニコ笑顔を浮かべながら帰路につく。
 しかし、次にシエスタが発した言葉で、その全てが凍り付くことになるのだった。
「今度は……一緒に入りましょうね」
「…………」
 ……ど、どーいう展開!?
 いつからこの世界はそっち系の話になったの!? 
 見掛けに寄らずシエスタは大胆だった。
 いや、シエスタはある意味ものすごく大胆とも言えるのだが。
 具体的には……今とかね!
「一考して……おこう」
 今の俺にはそう返事をすることしか出来なかった。
 この年頃の娘さんの思考は本当に分からない。
 ただ……何だろう、この異様なまでの敗北感は。
「ダンケさん……時々、すごく大胆です」
 声色だけでも、後ろでシエスタが真っ赤になっているのが分かる。
 だけど、これだけは言わせてほしい。
 ―――君には負ける。いやマジで。


 その後、朝日の昇る頃になってようやく俺達は学院に戻って来ることが出来た。
 馬はヘトヘト。俺もヘトヘト。
 但し、シエスタは妙に元気だった。流石はメイドさん。現代のもやしっことは基礎体力からして違うようだ。
 馬を小屋に戻したあと、シエスタを彼女の部屋のあった棟まで送って行く。
 一度学院付きのメイドを辞めてしまった彼女があっさり戻れるのか心配だったが、ドイツじゃそういうことはしょっちゅうあるらしい。
 学院長の人柄もあってか、メイドさんのカムバック率は結構高いのだとか。
 もっとも、シエスタの例は非常に稀―――というより、「学院初だと思います」とは彼女の言。
 何が“初”なのか、俺にはそのあたりがよく分からない。
 あの過激なメイド服でカムバックした例が、史上初とかそういう意味なのだろうか?
 そうだとしたら、少しだけ納得である。
 あれだけ奇妙な格好、そんじょそこらでお目に掛かれるとは思わない。
「ここまでで大丈夫ですから」
「……分かった」
 棟の前でそう告げられ、シエスタに背を向ける。
 早く部屋に帰って着替えた方がいいよ。その格好、色々と目立ち過ぎる。
 貴族の方々はまだ起きてはこないだろうけど、メイドさんや厨房の人はそろそろ起床の時間の筈だ。
「―――あの!」
「……どうした?」
 呼び止められて振り返った瞬間、頬に柔らかくて温かい何かが接触した。
 見れば、シエスタが頬を赤く染めている。
 それでだいたいの事情は理解出来た。
 二度目ともなると耐性だって……付くわけないじゃん。
 自分で言うのも何だが、いつまで経っても初心な男だった。
 その証拠にほら、足がガチガチと小刻みに震えている。
「本当にありがとうございました! これからも末永く宜しくお願いします!」
 それだけ言い、メイドの少女は背を向けて駆けて行く。
 どうにも先の台詞、妙な重さを感じるんだが。
 視線を持ち上げれば、空には先程よりも随分と高くなったお日様が頑張っている。
 あと一時間もすればルイズの起床時間がやって来る。
 彼女を起こすのが仕事の俺は、今から惰眠を貪るわけにはいかなかった。
 今日は徹夜かぁ。
 寝ていないと頭がボーッとして嫌なんだが、文句も言ってられない。
 とりあえずは―――。
「洗濯……だな」
 貴族の人達は身だしなみを特に気にする。
 入浴出来ない日や汗をかいた日は、持ち歩いている香水で体臭を誤魔化す程だ。
 そんなことをするより、水浴びでもした方がいいと思う俺は平民思考らしい。
 ルイズ曰く、貴族は無闇やたらに外で肌を晒したりはしない、とのこと。
 となると、キュルケは貴族っぽくない貴族ということになるのか?
 そんなことを考えながらルイズの部屋へ足を向ける。
 何か考えていないと眠気に押し潰されそうだ。
 こりゃあ、今日は昼寝決定だなァ……。


「遅い」
「……すまない」
 日が昇り、魔法学院が眠りから覚める時間になってようやくダンケはルイズの部屋へ戻って来た。
 扉を開けるなり聞こえた主の声に、使い魔は少しばかり驚いている……らしい。
 それもそうだろう。
 この時間帯、いつもならルイズはまだ夢の中なのだから。
 一睡もせずに過ごした少女は目の下に隈を作っていた。
 パジャマ代わりのネグリジェを身に着けているルイズは、重い目蓋を懸命に持ち上げながらダンケを睨み付ける。
「それで? ご主人様に報告もなしでいったい何処に行っていた、の、かしら?」
 眠気に負け、こっくりこっくりと前に動く頭。
 その度に言葉が途切れ、妙な抑揚が付いていた。
 青年が居ない間はベッドに潜りこんでも一切眠くならなかったというのに、彼の顔を目にした途端この有様である。
「忘れ物を……届けに」
「忘れ物……?」
 ルイズの問いに、ダンケは首を縦に振る。
 忘れ物を届けに行くだけで、こんなに時間が掛かるものだろうか?
 だが、彼がこのような事で嘘を吐くとは思えない。
 ダンケが偽りの言を紡ぐ時は大抵、誰かを庇う時なのだから。
「馬に乗って……な。流石に……遠かった」
 珍しく、その声色には疲労の痕跡が残されていた。
 大抵のことは卒なくこなすダンケだが、人間である以上苦手な物はいくつか存在する。
 その一つが―――“馬に乗ること”だった。
 騎乗の経験自体がなかったらしく、最初の頃はよく振り落とされそうになっていたものだ。
「馬って……本当に何処まで行ってきたの、アンタ」
「薬中の家……だと思う」
「ヤ、ヤクチュー? 何それ、新しい魔法薬の名前かしら」
 耳にしたことのない単語に、ルイズは目を瞬かせた。
 学年トップクラスの成績を維持している彼女にさえ分からない謎の言葉―――“ヤクチュー”。
 ヤクチューの家とはいったい何なのか、もしこの時眠気と戦っていなければ、少女の口からは矢継ぎ早に質問が飛び出していたことだろう。
「終わった……ことだ」
 首を横に振り、青年は洗濯籠を手に取る。
 刹那、ルイズは短く「あ」と声をあげた。
 何事かと首を傾げる青年に、何でもないと言って首を振る。
 言えるわけがないじゃないか。
 今まで何の抵抗もなくさせていた行動に、羞恥の心が芽生え始めたなんて。
 いきなり断るのも何だか変だ。
 洗濯を他の者に任せるのは明日からでもいいだろう。今日はひたすら我慢の日である。
 ちなみに説明しておくと、籠の中には昨日ルイズが脱いだ下着が入っている。
 アルビオンに向かう際着ていた制服は、ボロボロになってしまったので捨ててしまった。
 実家から持って来ている服はパーティ用のドレスが大半だ。
 動き易く、デザインも悪くない魔法学院の制服はルイズにとって私服のような物だった。
 替えは数着持ってはいるが、それでも愛着があっただけにこの損失は痛い。
(そう言えば、ダンケっていつも同じ服を着ているわよね。そうよ、他に着る物がないんだわ。―――自分でも気付くのが遅すぎる気がしないでもないけど。……な、何度も助けてもらったし、使い魔の衣食住を保障するのもご主人様の立派な仕事よね! もう、しょうがないんだから)
 一人で考え、悩み、テレ、デレる。
 自分の気持ちに気付いたはいいのだが、経験値が不足しすぎていて何から手を付ければいいのかが分からない。
 そんな彼女がプレゼントというまともな発想に至ったのは、ある意味奇跡だった。
 思考の浮上と共に視界も鮮明になる。
 視線の先では、青年が洗濯籠を手にして部屋から出て行こうとしていた。
 慌てて、ルイズはその背に声を掛ける。
「きょ、今日はアンタの服を町まで買いに行くわよ? 言っとくけど、反論は認めないから。……べ、別にいいでしょ?」
 上目遣いで尋ねれば、いつも通り淡々と首肯された。
 ほんの少しだけ、断られるかもと不安だったのは彼女だけの秘密である。
「主」
「ん、何よ?」
 足を止め、青年が肩越しに振り返る。
 困惑に眉を顰めるルイズを一瞥し、少女の使い魔はぼそりと呟いた。
「感謝する」
 たった一言。そう零し、ダンケがルイズの部屋を出て行く。
 残された少女は「うーっ」と猫のような呻き声をあげたあと、ベッドに体を投げ出した。
 今日の授業は自主休講である。そう決めた。今決めた。
 折角のデ―――買い物だ。
 眠気眼を擦りながらでは、いくら何でも幻滅される危険があった。
 寝転んだまま、ベッド脇の机から手鏡を取って顔を映す。
 目の下に出来た隈が、愛らしい少女の容貌に影を落としている。
 最近不規則な生活が続いたせいか、心なしか肌も荒れているような……。
 考え始めるとキリがないのは分かっているが、ルイズだってお年頃の女の子。
 貴族であることを差し引いても、身嗜みには常日頃から人一倍気を遣っているのだ。
 流石に、戦闘中に化粧直しをする微熱の少女には及ばないだろうが。
「とりあえず……まずは……仮眠ね。そう……これは仮眠……」
 水面下で進行していた眠気との攻防戦は、依然としてこちらの劣勢にある。
 そろそろ本格的に重くなり始めた頭と目蓋。
 とろんとした目付きは見ようによってはセクシーなのかもしれないが、口の端から垂れた涎がその魅力を完全に打ち消してしまっていた。
 うつらうつらとするルイズ。
 カーテン越しに差し込む光は温かく、そして何より優しく、少女を眠りの世界へ誘っている。
 牙城が陥落するのに然程長い時間は掛からなかった。
「仮眠……か……みん……くー」
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。十六歳。
 非常に寝付きの良い少女であった。
 尚、洗濯を終えた青年もまた、主と同じように仮眠を取っていたことを知る者は居ない。


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この記事のコメント
No title
いやあの、安定した勘違いって今回も凄いんですがw

シエスタに”ニ ガ サ ナ イ”フラッグ成立。
一緒にお風呂で一考しておくってwww

にしても、ここのルイズの可愛さは異常(と思わせる原作が凄いのだろうか。サイトにそういう感情持った時のは既にハーレムだったしなぁ)
うん。でもよだれはアウアウだと思うんだ!
2009-11-22 Sun 23:00 | URL | トオリスガリノカメンライダッ #-[ 内容変更]
No title
ツンが無いな。いらないけど。
シエスタが重い重い。包丁もって、髪の毛を目の前に垂らして、『ニ ガ サ ナ イ』
2009-11-23 Mon 02:29 | URL | コイピー #-[ 内容変更]
この後、町に出かける二人の物語とは……。
“シエスタと一緒にお風呂”フラグを獲得したダンケ、これをルイズが知ったらどんな展開になるやら……。 ルイズもここの所出番が無かったから彼女のこれからの動向も気になります。 次回も楽しみにしています。
2009-11-24 Tue 10:16 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
No title
いやはやまたまた面白かったです。
ダンケ、確かにシエスタは大胆だったが君もそれなりだぞ?
しかし、飲んだら振るな、飲むなら振るなとは上手いw
次も期待しています。
2009-11-24 Tue 18:54 | URL | YY #nL6A2.tM[ 内容変更]
No title
今回も勘違いあるじゃないか!!というかほとんとが...
今回シェスタフラグとルイズフラグを同時に立てましたね
ダンケハーレム(無意識)か良い船になるのかとても楽しみ!!
次も待ち遠しいです
2009-11-26 Thu 00:02 | URL | ヤス #-[ 内容変更]
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