ネクオロでした
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リリ勘。第二十二話。
2009-11-29 Sun 21:09
これで残すところ、あと一話となりました。

もう少しだけお付き合いくださいませ。

あと、彼の出番は最終話までありません。

 
第二十二話―――そして騎士は翼を休める、なの。最速の騎士と“彼女”の秘密


「―――と、最低でもこれだけの罪が貴女にはあります。勿論、そちらの事情も多少は考慮されるでしょう。しかし、いくら娘の為とは言え、多くの世界を危険に晒した貴女の罪は重いわ。良くて―――」
「もう結構よ」
 リンディの言葉を遮り、プレシアは僅かに苦笑してみせた。
 姉妹の姿は病室から消えている。
 母親の罪を子供たちに聞かせたくはない、というリンディの配慮からだ。
 ロストロギアの強奪から始まり、禁止されているクローン体の製造、時空航行艦への攻撃、そして意図的な次元振動の誘発。
 アリシアを蘇生させる為に、プレシアは多くの罪を重ねて来た。
 これだけの数の罪だ。
 数千年単位の幽閉で済めば、まだ良い方だろう。
 だが、それはいい。己の犯した罪だ。別に今更、見苦しく言い訳するつもりなどなかった。
「ハラオウン艦長だったかしら? 貴女なら、私が何を言いたいか分かっている筈よ」
 これだけの罪。
 その全てを裁くには膨大な時間がかかるだろう。
 そして、彼女にはそれに耐えられるだけの時間は残されていない。
 ならば、彼女に取れる選択肢は一つだけ。
「……分かりました。貴女はフェイトさんを脅迫し、ジュエルシードを集めさせた。フェイトさんは事情を一切知らされず、また自分が収集を強制されたものがロストロギアであることさえも知らなかった―――と、これでいいんですね?」
「ええ。上出来よ。ただ、一つだけ大事なことが抜けているわ。……あの子は私とは何の繋がりもない、赤の他人だった。という大事な事実がね」
 自分と違い、フェイトには未来がある。
 その未来を、罪人の娘として汚させるわけにはいかなかった。
 それには、フェイトが自分―――プレシア・テスタロッサとは何の関わりもない、巻き込まれただけの民間人として処理される必要がある。
 詳しく調べられればすぐにバレてしまう幼稚な嘘だが……なに、それが判明する頃には自分は既にこの世には居ないだろう。
 そうなれば、否応なしに裁判は終了する。
 死者を裁く権利は、時空管理局といえども持ってはいないのだから。
 自分に出来ることは、ギリギリまで裁判を長引かせ、その間にフェイトを遠ざけることだ。
 ジュエルシードの散らばったあの世界ならば、よほどの事がない限り管理局の目は届くまい。
 フェイトの時間を今まで奪ってきた分、これからの人生は自由に生きさせてあげたい。
 それは多少歪ながらも、確かにプレシアの親心だった。
「……そんなことして、フェイトさんが喜ぶと思っているの?」
「…………」
 リンディの言葉に、プレシアは押し黙る。
 彼女が口にした内容で報告することは、ようやく娘として認められた彼女をまた否定することに他ならない。
 だが―――。
「……いいのよ。前と同じに戻る。ただ、それだけのことなのだから」
「…………」
 今度はリンディが押し黙る番だった。
 同じ親だからこそ、子を持つ親だからこそ分かってしまう。
 プレシアがどんな想いでこの決断を下したのかを。
「分かりました。貴女は民間人の―――」
 リンディの言葉が最後まで発せられることはなかった。
 何故なら、彼女の声は唐突に響いた“別の声”に掻き消されたから。
『―――わたしは―――フェイト・テスタロッサは、プレシア・テスタロッサの娘です! 騙されてなんかいない、赤の他人なんかじゃ絶対にない! わたしは母さんの娘です!』
 その声は、アースラのスピーカーから流れたもの。
 当然、今の声はアースラのブリッジ―――そこに配備されているブラックボックスに記録されることになる。
 これに一度記録されてしまえば最後、エイミィの腕を以ってしても消去することなど出来はしない。
 無言のまま、リンディが扉を開く。
 そこには、灰色の宝玉を握り締めたフェイトの姿があった。
 ガルウイングの能力を借り、一時的にアースラのシステムをハッキングしたのだろう。
 時空航行艦にハッキングをかけるのは、重罪だ。
 これをどう揉み消そうかしら、とリンディは胸中で苦笑した。
 権利の私用もいいところだが……まあ偶にはいいだろう。
「……フェイト、貴女は自分が何をしたのか分かっているの?」
「……はい」
 フェイトが静かに頷く。
 その様子を、後方で浮いているアリシアが励ますように見詰めていた。
「後悔はしていません。前を見て歩くことを、なのはと大樹が教えてくれたから。……だからわたしは、フェイト・テスタロッサとして、貴女の娘として生きていきます。アリシアと―――姉さんと一緒に」
「…………」
 プレシアが無言でフェイトを見詰める。
 前の彼女であったならば、ここで自ら視線を逸らしていただろう。
 だが、今の少女は違う。
 いくつもの悲しみを乗り越え、信じられる仲間を得た彼女は恐れることなく、母親の視線を受け止めていた。
 最初に根負けしたのは、プレシアの方だった。
 溜め息を吐き、頭を振る。
 小声で「この頑固さ、いったい誰に似たのかしらね」と呟いた。
 その顔には苦笑交じりの微笑が浮かんでいる。
「好きになさい。まったく……従順だった前の貴女は何処にいったのかしら」
 そう零し、もう一度嘆息した。
物怖じすることなく、はきはき物を言うアリシアと、大人しいながらも内に強さを秘めたフェイト。
 二人の娘の今後のことを考えると、どうしてもプレシアは苦笑を禁じ得なかった。
「しばらく、死ねそうにはないわね」
「そうですね。少なくとも、孫の顔を見るまでは長生きしてもらわないと」
 敵対していたとは思えないほど、気さくに言葉を交わし合うプレシアとリンディ。
 隣では、アリシアとフェイトの姉妹が仲睦まじく談笑して―――いや、姉が妹をからかっている。
 その様子を眺めていたガルウイングが、その声音に確かな誇りを内包させて呟いた。
『見ていますか、マスター。これは貴方が掴み取った未来。貴方が救った笑顔だ』


「ハラオウン艦長、一つだけ訊きたいことがあるわ」
「うかがいましょう」
「どうして、アリシアが生きて―――いえ、こうして存在していられるの? こんな現象、私は今まで見たことがないわ」
 プレシアの疑問はもっともだ。
 肉体こそ喪失しているものの、今のアリシアは以前の記憶を持ったままこうして存在している。
 生前、そういった術式を施していたのならばまだ納得は出来る。
 それでも、完全なコピーは出来ないのが現実なのだが。
「……それに関しては、私よりも彼女の方が詳しいでしょう。私も気になってはいたし、そろそろ説明してもらえますね?」
 リンディの視線は机の上に置かれたガルウイングに向いていた。
 灰色の宝玉はしばし沈黙を保った後、ゆっくりと語り始める。
『……分かりました。このデバイスはご存知の通り、アルハザードで製作されたものです。その目的はプレシア女史が口にした通り、“時を跳躍する”為。……当時、私には重大な任務がありました。時を渡り、過去を改竄するという任務が』
「「「―――っ!」」」
 過去の改竄という単語に、全員が息を呑む。
 過去を変えるという行為は未来―――即ち、現代を書き換えるということだ。
 残された文献によれば、アルハザードは叶わぬ望みなどないとまで言われていた地。
 その地に住まう者たちが、そこまでして塗り潰したかった過去とはいったい……?
 ガルウイングの独白は続く。
『確かに、アルハザードにはどの世界よりも優れた魔導技術がありました。死者を蘇生させる……それすらも実現可能だったに違いない。……あのままの時間が過ぎていれば、の話ですが』
 ―――“何か、あったの?”
『はい。世界には魔力素が存在しています。だからこそ、その身にリンカーコアを有する者は魔法を行使することができ、その仕組みを解明して魔導機関と呼ばれる物が出来た。だが、行き過ぎた技術は彼らに大切なことを忘れさせてしまった。魔力素は世界の命の欠片。そして、世界にも当然寿命が存在していることを』
「魔力素の過剰消費による世界の衰退……。次元世界の中にはそういった世界がいくつかあるとは聞いていたけど、まさかアルハザードもそうだったなんて……」
 リンディの表情は暗い。
 御伽噺だと聞かされてきたアルハザード。
 しかし、その地は実際に存在していたのだ。
 そして、そこに住まう者たちの手によって結果的に滅んでしまった。
 技術は人の生活に恵みを与える。
 だが、行き過ぎた力がやがて自身に返って来るように、彼らもまた自らの手で未来を閉ざしてしまった。
『彼らは選択しなければいけませんでした。培ってきたものを全て捨て、また一からやり直すか。もしくはこのまま滅びの日を待つのか、を』
「……だけど、愚かにも彼らは第三の道を選んでしまった、というわけね。私と同じ、摂理に反した道を」
 瞳を伏せ、頭を振るプレシア。
 彼女が娘を蘇生させる為に世界すら犠牲にしようとしたように、彼らもまた、自分たちが生き延びる為に他のものを犠牲にしようとした。
 しかし、それは本来存在してはならない道なのだ。
 だが、彼らにはそれに至るだけの技術力があった。
『彼らは当時研究していた“時の跳躍”に全てをかけました。時を遡り、過ちの元凶を討ち取ることこそ、最善の解決策だと妄信していた』
「元凶……?」
 首を傾げるフェイトに、ガルウイングはしばし押し黙る。
『元凶といっても、その定義は非常に曖昧なものでした。彼らが跳躍しようとしていた時間軸は、魔導研究の最盛期。ありとあらゆる場所で魔導機関が稼動し、研究者たちは日夜新しい研究に没頭していた。元凶が誰かと言ってしまえば、それこそその時代に生きる全ての人間がその範疇に入ってしまう。しかし、彼らはそれに縋ることしか出来ませんでした。この異常には必ず元凶が存在する。それさえ排除することが出来れば全てが元に戻る、と』
 それはあまりに子供染みた発想だった。
 正すのは過去の一人ではなく、今の全員だったのだ。
 だが、結果的に彼らは今の生活を捨てることを拒み、滅びの道に進まざるを得なかった。
『……申し訳ありません。話が逸れてしまいましたね。結果だけを言わせてもらえば、時の跳躍が実現することはありませんでした。世界の命運が一人の研究者の双肩にかかった時、彼女は己が使命の重さに耐えることが出来なかった。研究が進展しないことに対する苛立ちと焦りはミスを呼び込み、試作段階だった時空跳躍機の暴走によって研究室は消滅しました。あとに残されたのは、運良く全壊を免れた時空跳躍機―――つまり、このガルウイングのみ、だったというわけです。後の歴史は私が語るまでもないでしょう』
 アルハザードの真実を知り、全員が黙り込む。
 秘術の眠る地は今も次元空間を彷徨っているのだろう。その内に虚無を抱えて。
 仮に辿り着けたとしても、既に命を失った世界では何も出来ない。
 プレシアがアルハザードに辿り着いたとしても、その願いが叶うことはなかったのだ。
『さて、随分と遠回りしてしまいましたが、本題に入るとしましょう。今のアリシアの状態ですが……そうですね、彼女はガルウイングのデバイスコアに定着しています。分かり易く言うのであれば、魂の一部が宿っている、ということになるでしょうか』
「……魂、ね。元研究者の私としては、にわかには信じられないけど……実際にこうしてアリシアが居る以上、真っ向から否定することも出来ないわ」
『そのあたりは私にも分かりかねます。ただ、このガルウイングのコアにはアルハザードでも希少とされていた特殊な金属が使用されています。魔力導率が高いことしか判明していなかったこの材質に、何か別の特性があったのかもしれません』
 ―――“う~ん。わたしも気付いたらこの姿だったから、よく分からないや。ただ、なんとなくここに居ると安心出来るんだよね”
 フワフワと浮かびながら、アリシアが顎に手をあてて首を捻る。
『ガルウイングのデバイスコアは常に一定の魔力濃度に保たれているからでしょう。よほどの無茶をしない限り、アリシアが消滅することはありません。試作品とは言え、これでも当時の技術の粋を集めて作成したデバイスですので、そのあたりはご安心を』
「……魂がデバイスに宿る、か。これは上に報告しようがないわね。前例がない以上、誰も信じようともしないでしょうし」
 リンディが苦笑しながらそう言った。
 インテリジェンスデバイスのようにAIを搭載していて、擬似的な人格を有するデバイスならばある。
 また、人となんら変わりない思考回路を有する融合型デバイスというのも、少数ながら確認されている。
 だが、それらはあくまで“人に近い”だけに過ぎない。
 個人の性格だけでなく、生前の記憶を宿したデバイスの存在など、一定誰が信じるだろうか?
『前例ならば……あります』
「え……?」
 不意に、ガルウイングの零した呟きがフェイトの耳に届いた。
 全員の視線が灰色の宝玉に集中する。
『過去に一度、デバイスコアに人格が定着したことがありました。もっとも、その人物はつい最近まで、自分がかつて人であったことすら忘れていたようですが。まあ、あってないような前例です。お気になさらぬよう』
「貴女、もしかして……」
『……さあ、どうでしょうね。ただ、その人物―――いえ、デバイスは現在の主に感謝していることでしょう。過去に何一つ救うことの出来なかった遺産を使って、異なるとは言え、世界を救ってもらえたのですから』
 その声音に微かな自嘲の念と、そして確かな誇りを宿してガルウイングはそう呟いた。
 ―――かつて。
 アルハザードには、時間跳躍魔法を研究していた一人の若き魔導士が居た。
 彼女が生み出したデバイスは、当時のアルハザードにおいても画期的なものだった。
 未だ確立されていなかった、過去へと跳躍する力を内包した最新鋭のデバイス。
 それ故に、人々の期待は彼女とそのデバイスに一身に注がれたのだ。
 世界を救うという重荷に耐え切れなくなったその魔導士は、そのデバイスの暴走によって若い命を散らすことになる。
 しかし、それは重圧からの開放ではなく、新たな辛苦の始まりに過ぎなかった。
 肉体を喪った彼女の魂が、データとしてデバイスコアに上書きされていたのだ。
 誰にも見付けられず、誰にも声が届かず。
 デバイスに宿った彼女は何も出来ないまま、生まれ育った世界がじょじょに崩れていく様を否応なしに見せ付けられた。
 命を失った世界と共に虚無へと呑み込まれた魔導士は、長い年月を経ていく内に辛い記憶を封じ込め、自分を特殊な用途に用いるデバイスだと思い込んだ。
 時同じくして、プレシアがジュエルシードを強奪する為に、輸送中だった航行艦に襲撃をかける。
 その時に発生した魔力によって、一時的に時空振動が発生。
 それによって開いた穴から、彼女はとある世界に迷い込む。
 これが全ての始まり。
 そして、彼女は後の主たる“彼”と出会い―――。
『マスター……いえ、大樹さん。私は貴方と出会えて、本当に良かった』
 ―――ようやく、古の呪縛から解き放たれたのだ。
 明滅する灰色の宝玉。
 その背後に浮かぶ、銀の髪を持つ女性の幻影。
 彼女の顔には、穏やかな月の光を連想させる微笑みが輝いていた。


 ←この少女がルイズに見える私は一体どうすれば……。
別窓 | リリ勘 | コメント:6 | トラックバック:0
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この記事のコメント
これがこの物語の真相か……。
明らかになったアルハザード崩壊の真相とガルウイングの真実……。長い物語の中、その多くは勘違いと
偶然による物であったが、確かに大樹という一人の人間は沢山の者達を救った事実が此処には有るのだ。
2009-11-29 Sun 23:11 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
No title
どうもお久しぶりです
しばらく拝見しない内に随分と更新されていることに、驚きました

「リリ勘」の最終話まで残り一話ということですが、とても残念で仕方ありません…

今作でもそうですが、大樹は凄い人物ですね!!!偶然や勘違いの積み重ねとはいえ、
さまざまな人達を救えるとは……いやー何だか感動しました…ありがとう!!!大樹
2009-11-30 Mon 00:29 | URL | asakura #-[ 内容変更]
No title
例え偶然と勘違いの結果であったとしても、関係者には必然と誇り高き男の道筋だった。そいういうお話になりましたね。

たとえ男が道化であっても、周囲をより良い結果に導いた。彼女が感謝したとしても誰が責められましょうか。

決してこれはヒロイックサーサ(英雄譚)ではなく、おのおのの人生においての一頁に過ぎないのでしょう。

勘違いに幸あれ!(ぉ
2009-11-30 Mon 03:10 | URL | トオリスガリノカメンライダッ #-[ 内容変更]
なけてきたわ
ぐすっ、ええ話やわあ。
アルハザードやガルウイングの真実、そして救済される人々。
大樹よ、貴様こそ真の漢であったぞ!
拍手でとうとう不老不死扱いになってしまったが、これからも勘違いでみんなを救っておくれやす。
残り一話、フェイトたちとの一時の別れであろう話をきたいしておりまするるるぅ。
2009-12-01 Tue 00:47 | URL | 中年戦士メタボマン #-[ 内容変更]
大樹ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
Fet〇で正義の味方がどうとか言われていたが、
この世には『正義の味方』いる!
その名は大樹!
大樹よ!
お前は…ジャスティーーーーーース!
最終回、期待しています。では、
2009-12-03 Thu 10:32 | URL | : #-[ 内容変更]
マブラブやったからでしょうか、アースラクルーの視点を読む度に 大樹の台詞と共に「未来への咆哮」が脳内再生されます。
オマケのA,s編の冒頭部分などまさにそれ
2009-12-03 Thu 15:16 | URL | omoro #JalddpaA[ 内容変更]
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