ネクオロでした
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零の使い魔。 ~聖十字の騎士~ 第十九話
2009-12-09 Wed 00:02
黒色っていいよね。汚れも存在も目立たないし。

                                            <ダンケ>

これぐらい私にだって作れる……わよね?

                                            <ルイズ>
 

 デルフを買った際に訪れた町―――“ブルドンネ街”。
 大人二人が横になって何とか通れるだけの歩幅しかない大通りを抜け、桃色と黒色の主従は行く。
 ―――と客観的に言ってみた俺です。
 ルイズが服を買ってくれるというので、苦手な馬に乗ってここまでやって来た。
 少しばかり睡眠も取ったので、とりあえずは大丈夫そうだ。
 相変わらず狭い道には、この前に来た時と同じように人でごった返している。
 スリに気を付けなさいと言われ、周囲に視線を飛ばしながら道を歩く。
 今回は自分の財布も持っているからな。油断だけは出来ない。
 武器屋と違い、服屋は表通りにあった。
 ナウなヤングに人気のお店……というよりも、古着屋といった感じだ。
 棚や机の上には服が乱雑に積まれ、客は山を掻き分けるようにしてお目当ての物を探している。
 字は読めないので推測でしかないが、恐らくは棚の上に掲げてある看板に書いてある文字が値段を表しているのだろう。
 ここで登場するのが、ベルトに結び付けてある小さな皮袋。
 この中には30エキューもの大金が入っているのだ。
 ルイズが渡してくれたものだが、お小遣いというわけじゃない。
 何でも、お姫様がせめてものお礼にと持たせてくれたのだとか。
 親切なお姫様が居るこの国は安泰だな。羨ましいよ。
 シエスタに以前聞いた話によると、平民が一年間に使うお金がだいたい120エキュー、下級貴族は500エキューぐらい一年で浪費するらしい。
 つまり、俺は今この時、平民の四ヵ月分の給料を持っていることになる。
 ちなみに、ルイズは御付の人と買い物に出る際、最低でも200エキューは持って外出するのだとか。
 やはり、家が貧乏でも貴族としての矜持には勝てないということか。
 持ち歩くそのお金が、彼女の家の全財産だと知る者は居ない。
 尚、200エキューは金貨200枚。新金貨ならば300枚。
 分かっているとは思うが、相当な重さである。
 最初にこの街に来た時、財布は従者に持たせるのが普通とルイズが言っていたのは間違いじゃなかった。
 金貨30枚でこの重量。200枚を普段から持ち歩いている人物は、それだけでムキムキになること請け合いである。
 ムキムキで腹筋が六つに割れているルイズはあまり……いや、すごく見たくない。
 彼女クラスの貴族様はわざわざ買い物には出掛けず、自宅に服屋が直接来るらしいのでその心配は皆無なのだが。
 貴族の誇りとやらは、やたらとお金がかかるのだ。
「……むぅ」
 服の山を前にルイズが唸っている。
 その体からは「わたし一見さんだけど文句あるの?」的なオーラが出ていた。
 まあ、それも仕方ないのだろう。
 貧乏だけども、彼女の家は公爵家なのだ。
 この店は明らかに平民向けである。ルイズが初見なのは当然と言えた。
 公爵という位がどの位置にあるのかは知らないが、自慢するだけあって低いことはないだろう。
 伯爵の一個下あたりかな? 彼女の家があのモットとかいう薬中に劣るとは思いたくはないが。
「むむむ……」
 ルイズが眉を顰め、服の山を睨み付けている。
 何をしようとしているのか分からないが、このまま放って置くと他のお客様に迷惑だ。
 平民向けのお店に、魔法学院の制服を着た貴族の女の子が来店したのだ。
 この衝撃はスタ○ドが月まで吹っ飛ぶ勢いだろう。
 店員はどうしていいか分からずに奥で固まっているし、先に来店していたお客も居心地を悪そうにしていた。
 出て行こうとしないのは、いちゃもん付けられるのを警戒している為か。
 薬中みたいな迷惑貴族はたくさん要るからな、その気持ち分からないでもない。
 只、ルイズは別だ。タバサも別だ。キュルケも別だ。ギーシュは……別だと信じたい。悪い奴じゃあないと思う。女の子限定で。
 とりあえず、適当に服を買って早々に退散しよう。
 服の山を凝視し、目ぼしい物を物色。
 それっぽい物を見付けたらすぐに手を伸ばし―――掴む。そして離脱ッ!
 何という早業。フーケもびっくりである。
 俺はあの人が土壇場で取った行動(弾頭なしランチャーで脅迫)にびっくりだったが。
 握られているのは黒いシャツだった。
 模様も何もない質素なシャツ。
 見るからに安そうで洗濯も楽そうで、黒色が大好きな俺としては大満足の一品だ。
 傍の山から見付けた半袖の黒シャツもゲットし、ジーンズはないらしいので無難に茶色の皮ズボンを選択した。
 予備の黒いシャツも数枚手に入れたし、もう十分だろう。
 そもそも、俺は服や髪型には無頓着な人間なのだ。自分で服を買うのも数年ぶりである。
 最後に購入したのは……前面に大きく「鰤」と筆記体で書いてある雄雄しいTシャツだった筈だ。
 何をどう思ってそれを買おうと思い至ったのか、未だに理解出来ない。
 選択した数品をカウンター(?)に持って行く。
 何やらビクビクしている店員に金貨一枚を渡せば、えらい数の銀貨が返って来た。
 そういや、銀貨100枚で金貨一枚だったっけ。
 値段の安さを売っている店で金貨を出すとこうなるわけだ。
 例えるなら、100円ショップで一点だけ購入して一万円札出した感じ。
 空気読めよ的な店員の視線が、見えない棘となって俺の硝子のハートに刺さっている。
 ……ごめん。マジでごめん。これしか持ち合わせないんだ。本当にごめん。
 胸中で直謝りし、銀貨を五枚程カウンターに戻す。
 呆気に取られる店員に、「チップだ」と言うのも忘れない。
 これが仮に“円”であったならば、こんな行動は取らなかったのだろう。
 ケチでもないが、だからといって太っ腹だったわけでもない。
 貰う物はきっちり貰うし、お釣りだってしっかりと確かめる。
 外国に旅行に行くと、金銭感覚が狂って高い物でも平気で買ってしまうという話をたまに耳にするが、その人達の気持ちが少しだけ分かった気がした。
 大金を持っていると、いつもより気持ちが大きくなるのに近い。
 恐縮する店員に銀貨を押し付け、袋に詰まった衣服を背負う。
 長袖のシャツが五枚、半袖が二枚、皮のズボンが三つ。ついでに黒の靴下もいくつか購入した。
 黒髪黒目の黒尽くめ。おまけに目付きが最悪。
 これで胸元に竜が剣に絡み付いたデザインのペンダントでも下げていればまた違った物語が始まるわけだが、生憎と俺はチートの力を宿した一般人だった。
 店を出ようとした矢先、袖をぐいと引っ張られる。
 振り向けば、威嚇をする子猫のような表情をしたルイズが立っていた。
 その手に握られているのは……い、犬? っぽい動物の描かれた黒いセーターだ。
 どうしてこの時期にセーターを選んだのか、そもそもその生き物は何なのか。
 訊きたいことはいくつか在ったが、ルイズが口を横一文字に結んでむっとしているので止めておく。
 少なくとも、機嫌が良いようには見えない。
「これとか……どう?」
 セーターを突き出し、ぷいとそっぽを向くルイズ。
 どう……って、この犬っぽい生き物に関して訊いているのだろうか?
 何というか、非常に返事に困る。犬以外の動物には見えないが、かと言って頑張らないと犬には見えない。
 只、ルイズの様子を見る限り、このセーターを少女はいたく気に入っているらしかった。
 不気味とか呪われそうとかいう言葉を呑み込み、仰々しく首を縦に振る。
「……悪くない」
「ほ―――ホント!? ホントにそう思ってるわよね!?」
「……ああ」
 目がキラキラしているルイズに気圧されつつ、短く首肯する。
 そこまでこのセーターのことを愛していたのか……。
 こっちでやっているアニメのキャラクターだろうか、この犬っぽいの。
 せ○と君のように、一見すると妖怪以外の何者でもないキャラクターに人気が集中することもあるからな。女の子はこういう不思議生き物とか好きそうだし。
 妙にやる気のなさそうなパンダとか焦げた菓子パンとか……俺は恐らく、一生彼等の存在を理解することが出来ないだろう。
「し、しし仕方ないわね! そこまで欲しいなら買ってあげるわ! や、優しいご主人様に感謝しなさいよ!!」
 言うや否や、セーターを持って猛然と会計に向かう俺の御主人様。
 足取りがやたらとしっかりしているのは、彼女が心の底から喜んでいるからだろう。
 そこまでして欲しかったのか、それ。
 男物じゃなかったら、きっと自分で着ていたのだろう。
 そうか。俺にあげるという口実があるから、あそこまで堂々としていられるんだ。
 店員に金貨を突き出している姿を遠目に映し、どうしてこうなったのかと胸中で頭を抱える。
 着ろと? あれを着ろと? あの格好で外を歩けと?
 服装に無頓着だと自称している俺ですら引くあのセーターを、この決して涼しくない時期に着ろとそう仰るわけですか?
 ……いいでしょう。ルイズには日頃からお世話になりまくっている。
 彼女がそれで喜ぶというのなら、恥ずかしいセーターの一着や二着、余裕で着こなしてみせる。
 胸中で決意を固め、意識を現実に引き戻す。
「これと同じものをもう一着ちょうだい。出来れば色違いがいいわ」
「…………」
 ……着替え用ですね、分かります。
 どこまでも優しい少女に、俺は胸中で咽び泣くのだった。


(この色とかどうかしら……?)
 手に取った桃色のシャツを眺め、眉を顰める。
 ダンケに買ってあげる服を選ぶ為に店に入ったのはいいが、女物ならまだしも男物の服などさっぱり分からない。
 いつも黒い色の服を着ているイメージがあるので、逆に明るい色合いの物をプレゼントしようと思うのだが……。
 迷った末、ルイズが選んだのは不思議な生き物が刺繍されたセーターだった。
 編み物が趣味の彼女としては、このぐらい自分で編むことが出来る……筈だ。
 それでは、どうしてこれを選択したのか―――?
 答えは簡単だった。
 彼女の使い魔の青年が自分の買い物を早々に済ませ、店を出て行こうとしたからである。
 いくら何でも早すぎのような気もするが、ここでじっとしているわけにもいかなかった。
 目に付いた服を右手で掴み、左手で今まさに外に出ようとしていた青年の袖を引っ張る。
 歩みを止めた彼の眼前に、ぐいと黒いセーターを突き付ける。
 正直なところ、色は兎も角、このデザインはルイズから見ても微妙……いや、いまいちだったが、出してしまった以上引っ込むわけにはいかなくなった。
「これとか……どう?」
 青年の顔を注視することが出来ず、明後日の方向に顔を向ける。
 十中八九、嫌な顔をされるだろう。
 彼の性格上、断ることはないだろうが、胸中でウンザリしているだろうと絶望的な気持ちで返事を待つ。
 しかし、返って来た言葉はルイズの予想の斜め上を行くものだった。
「……悪くない」
 しっかりと首を縦に振る青年。
 彼がここまで如実に態度を示すのは、非常に珍しかった。
(わ、わたしって人より少し感性がズレているのかしら……?)
 もう一度セーターを見詰める。
 ……うん。やっぱり微妙だ。製作者の意図がまるで読めない。
 そもそも、この生物はいったい何なのか? 幻獣かとも思ったが、それにしては顔が間抜けすぎる。
 まだ女物だというのなら―――い、いや、無理だ。これを着ている人物が想像出来ない。
 試しに脳内でキュルケに着せてみたが、相性は最悪だった。
 でかい乳で不思議動物の刺繍が横に間延びし、一層その間抜けっぷりに拍車を掛けている。
 タバサは……意外と似合う気がする。室内着限定ではあったが。
「ほ―――ホント!? ホントにそう思ってるわよね!?」
「……ああ」
 複雑な気持ちで確かめてみるが、やはり返答は同じものだった。
 人の価値観にケチを付けるのはダメだろうと思考を打ち切り、手元に視線を落とす。
 この生き物に彼が何を見出したのか、いつの日か訊いてみたいものである。
 強者には強者にしか分からない、感性というものがあるのかもしれない。
「し、しし仕方ないわね! そこまで欲しいなら買ってあげるわ! や、優しいご主人様に感謝しなさいよ!!」
 これはプレゼント―――そう考えると、どうしても頬が紅潮してしまう。
 照れを隠すように荒い足取りで会計に向かい、何故かやたらと怯えている店員にエキュー金貨を渡す。
 釣りは要らないと告げたところで、視界の端に似たようなデザインのセーターを見付けた。
 色は……桃色。うん、悪くない。
 逡巡は一瞬、出来るだけ平静を装いながら恐縮している店員に命じる。
「これと同じものをもう一着ちょうだい。出来れば色違いがいいわ」
 視線で「あれよ! あれ!」と訴えつつ、デスクの上にもう一枚金貨を置く。
 平民向けのこの店で、支払いに金貨を使う者などほとんど居ないのだろう。
 泡を食う店員をよそに、ルイズは手にした黒いセーターと視線の先の桃色のセーターを交互に見詰めた。
 頬を赤く染め、表情を隠すように俯いて床を見る。
(べ、べべべ別にご主人様と従者がお揃いの服を着ていたって全然おかしくないものね!? そ、そうよ! これっぽっちもおかしくないわ! わ、わざわざわたしが合わせてあげているんだもの、きっと感謝する筈だわ!)
 胸中で言い訳を捲くし立て、火照った体を冷ますように大きく息を吐く。
 デザインに対する不満は、もう彼女の頭から吹き飛んでしまっていた。
 お揃いの服を着る。これが何よりも大事なこと。あとのことは二の次、三の次なのだ。
 ほくほく顔で二着のセーターを受け取り、青年を伴って店を出る。
 授業をサボってまで買い物に出た甲斐があったというものだ。
 彼女達の後ろでは、店員が同デザインのセーターを手にしてしきりに首を傾げていた。
 風に乗って、「これのどこがいいんだ?」という疑問の声が雑踏の中へ流れて行く。
 数日後、店員からその話を聞いて調子に乗ったこの店の店長が、あの不思議デザインのセーターを大量に発注して泣きを見ることになるのだが、それはまた別の話である。


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この記事のコメント
確かに
前回の勘違いが可愛く思えるほどの勘違いの乱舞でしたw

何より
>生憎と俺はチートの力を宿した一般人
ダンケ、君が勘違いだwww
一般人はチートの力は宿してないって(腹筋痛い!

ルイズが姫様から貰ったという事は……七万対一人が近いなぁ(汗
さて、現時点ではアホ姫様のアンリエッタの動向が気になる。

ダンケ・ルイズときて最後に店主。あまにり哀れ店主。折角の金貨で儲けた資金が不思議生物グッズに消えるとは……。
2009-12-09 Wed 11:55 | URL | トオリスガリノカメンライダッ #-[ 内容変更]
ペアルックなのか?ペアルックなのかッ!?
更新お疲れ様です。
今回もまたルイズが可愛い。
ダンケ、たまには素直になろうよ……無理かw
二人がその服を学院で一緒に着る日が待ち遠しい。
さぁ、新しい流行の始まりだ!!
2009-12-09 Wed 12:32 | URL | YY #nL6A2.tM[ 内容変更]
これ、なんてペアルック?
やはりルイズとダンケの相互勘違いは良いですね。 ルイズ、君の感性は全然ズレてなんかいないよ……。 にしてもこの二人がペアルックになるのではという展開はビックリです。 ここしばらく出番の無かった彼女とダンケのこれからの物語が楽しみです。
後、店の店長、ご愁傷様です(笑)
2009-12-10 Thu 09:43 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
No title
 どうせ、ペアルックには本編ではならないので、ウェブ拍手辺りで、薦め様と一人悩んでるルイズか、シエスタかキュルケ辺りに見つかった場面がみたいです。
 ああ、もちろんそのペアルック本編で挑戦してみてもうれしいです。実家に帰るときとか着ていたら、どんな惨劇になるんだろう?
2009-12-13 Sun 00:27 | URL | 凡士 #-[ 内容変更]
No title
いつも楽しく読ませてもらってます。
続きがとても楽しみです。
2009-12-20 Sun 10:31 | URL | hh #-[ 内容変更]
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