ネクオロでした
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シグナム編。その一。
2010-02-28 Sun 12:10
さあ、いよいよ始まりました。シグナム編。

ダディ関係のネタが入っているので、ご注意くださいませ。
「ごめんなさい、大樹君。貴方には……こんな寄り道させたくなかった」
「……え?」
「貴方には、“日常”の中で過ごして欲しかった。ここまで貴方を付き合わせてしまって……」
「……リンディさん、ありがとうございました。俺、色々あったけど、この一件に関わって良かったと思っています。……だって、皆と会うことが出来たから」
「……大樹君」
「……じゃあ、見ていてください。俺の変身」


「なのはちゃん、聞いて。大樹君は―――」
「―――リンディさん。私、それでも大樹さんは帰って来る気がします。あの人を信じて裏切られた事、一度もないんです。にゃはは、リンディさんもそうなんじゃないんですか?」


「……なあ大樹、一つだけ訊いていいか?」
「うん」
「あたし達がこんな目に遭うのは別に良いんだ。罪を犯していた自覚もある。恨まれる覚えだってある。見苦しく今更否定したりしない」
「……うん」
 頷く青年の上着を片手で掴む。
 荒れ狂う感情を抑え込む為に噛み締めていた唇が裂け、口の中に一気に血の味が広がった。
 溢れる涙を拭うことも忘れ、傷だらけの少女は同じく傷だらけの青年にしがみ付いた。
「……でもよぉ……でもっ! はやては何も知らなかった! あいつは自分が何れ死んじまうことが判っても―――それでも……何かのせいにしたりしなかった! あたし達と会えたことを嬉しいって言ってくれたんだ! 笑ってくれたんだ!」
「……うん」
「大樹、教えてくれよぉ……。どうして、はやてばっかり辛い目に遭うのかな。どうして、はやてばっかり苦しい思いをするのかな。お前は長生きしてんだろ? 答えだって沢山知ってるんだろ? 教えてくれよ……教えてよ、大樹……っ!」
 顔を上げた拍子に、涙の飛沫が夜の闇に弾けた。
 両手で青年の上着を固く握り、少女は主を救えない自分の非力さを呪いながら嗚咽を漏らしている。
 ―――カツン。
 不意に、少女の手に硬い感触が伝わった。
 ハッとして顔を上げる。
 涙で歪む視界の中、それでも尚白銀の鎧は光り輝いて見えた。
 ガルウイングとアリシアは、ここには居ない。
 今の彼のBJを形作っているのは掻き集めた残り滓のような魔力のみ。
 五分維持出来るかすら危ういそれを纏い、青年は血が出るくらい強く拳を握り締めた。
 背にブースターはなく、強化形態に変身することも出来ない。
 魔力不足の影響からかヴァイザーは構築されていなかった。
 剥き出しになった紅い双眼にも深い亀裂が刻まれている。その下にある双眸の見詰める先には、いったい何が映し出されているのだろうか。
 小さく息を吐き、左肩を貫いていた黒一色の剣を引き抜く。
 闇の書が内包した膨大な魔力によって形成されたそれは、時間が経った今でも現実の物としてしかと顕現している。
 止血栓の役割を果たしていたそれが無くなったことで、青年の肩から勢いよく血が噴き出した。
 これで武器が出来たと苦笑し、青年は少女の顔を真っ直ぐ見詰める。
 彼女の頬に片手を添え、指先で目尻に溜まった滴をそっと拭う。
 やはり、彼女に涙は似合わない。いつものように、真夏の太陽を連想させるあの笑顔で居てもらわないとこっちも笑えない。
 さあ―――。
「理由なんてないよ―――だから、殺させない」
 無くした彼女の笑顔を―――奪われたあの子の未来を取り返しに行こう。


「竹中大樹か。奇遇だな」
「あ、どうもです。シグナムさん」
 いつの間にか日課になってしまった夕食前のジョギング中、珍しいことにシグナムさんと出くわした。
 夕日を背にした美女というリアル絵画が目の前に広がっているわけだが、左手に持っているナイロンの袋がこれでもかと云わんばかりに自己主張しているので正直なところ、微妙な気分である。
 袋の中身がどう見たって豆腐というのも頂けない。何故に豆腐?
 それにしてもまあ、あとは例の公園を抜けさえすればアパートに戻れるのだが……運が良いと言うべきか悪いと言うべきか。
 切れ長の青い瞳。男の俺でも羨ましくなるスラリとしたスタイル。黒いズボンにクリーム色のセーター、色鮮やかな桃色の長髪を黄色のリボンで纏めたその姿を見ていると、“麗人”という言葉がしっくり来る。怖い。
 彼女は普段、はやてちゃんと一緒に行動することが多い―――というかそれが殆どなので、こうやって一人の時に出会うのはかなり珍しい部類に入る。そして怖い。
 尚、自他共に厳しいシグナムさんに苦手意識を感じるのは、恐らく俺だけじゃあないだろう。ああ怖い。
 知らず萎縮してしまう俺を他所に、烈火の将とも称される女性は僅かに首を傾げた。
「竹中大樹、どうかしたか?」
「い、いえ、何でもありません!」
「……フッ、変な奴だな」
 クールに笑われてしまった。
 俺の中で既に怖いイメージが染み付いてしまっているけど、本当は思慮深くて優しい人なんだよね、シグナムさんは。
 フェイトちゃんがそう言っていたからまず間違いないと思う。
「よく言われます。そんなことよりシグナムさん、前も言いましたけど、いちいちフルネームで呼ばなくてもいいですって。好きなように呼んでくれとは言いましたけど、それはちょっと面倒じゃないですか?」
 良い機会なので、勇気を出して前々から疑問に感じていたことを思い切って尋ねてみた。
 ちなみに、ヴィータちゃんは俺のことを名前で呼び捨てにする。
 シャマルさんは名前+君付け。
 ザフィーラ……さんは苗字で呼び捨て。
 他の面々は割かし普通なのに、シグナムさんだけがどういうわけかフルネームで俺の名を呼んでいるのだ。
 遠回しに、お前とは親しくなりたくないと告げられているのだろうか……。
「シャマルにも以前同じことを言われたが、これはもう癖のようなものだな。不快に思っていたのなら謝罪する」
 そう言って、苦笑するシグナムさん。
 得物が剣なだけあって、誰よりも真っ直ぐな人のようだ。そんな彼女もヴィータちゃんからすれば、「ロストロギア級の堅物」らしいが。
「別に迷惑だとはちっとも。ただ、疲れないかなぁとか思っただけですから」
 俺だったら間違いなく舌を噛んでいる。
 口からダラダラと血を流しながら挨拶とか、どんなホラー映画だよ。
 まあ、両手と両足に剣っぽいモノが刺さった状態で挨拶ならやったことはあるがね。
 なのはちゃんとフェイトちゃんに変なトラウマ植え付けてなきゃいいけど。
「その言葉、そっくりそのままお前に返そう」
「……え? 俺っすか?」
 胸中に抱えていた苦手意識を悟られたかと思い、思わずびくりとしてしまう。
 い、いかん。
 以前、BJごと問答無用で斬られたトラウマが苦手意識に拍車をかけてしまっているが、彼女は俺にとっては貴重な―――いや、これは失礼か―――大切な大人の友人なのだ。
 好きになってくれとか頭の悪いことは言わないが、せめて彼女の中の友人ランキングで50位以内には入っていたい。無理なら100位以内でもいい。
「お前は本来、口数の少ない寡黙な男なんだろう? 確かに、私は人と言葉を交わすことが得意ではないが、四方山話の一つや二つくらいは私にだって出来る。そこまで気を回してもらう必要はないぞ?」
 少し得意気に言われても……その、対応に困る。
「何だかいつもと同じような展開になってきたなぁ」
 一人で得心しているように頷いているシグナムさんを横目に天を仰ぐ。
 俺が無口だというその噂はいったいどこから流出したのか―――否、この場合は発生だな。
 何だ? 俺は今まで普通に喋っていただけで周りの皆に「本当は無口なのに気を遣って……」と思われていたんだろうか?
 そりゃあ、戦闘中は基本的に無口だよ。必死だからね。生きるのに必死だからね。
 なのはちゃん達みたいに「説得」しながら、攻撃とか防御とか回避とか俺に出来るわけないじゃないの。スパロボじゃないんだから。
 ブースト系の魔法使ったら、最初の時と比べて短くなったとは言っても気を失うしさ。
 そりゃ、喋れないって。意識ないもの。気絶してるもの。
 覚醒したらしたで今度は痛みと戦うお仕事が待っている。口を利く余裕などあるわけがない。
 ……あー。
 数え切れないくらい酷い目に遭った事件を思い出し、納得する。
 シグナムさんと俺がサシで対面したのって大抵が戦闘中なのだ。
 ヴィータちゃんとシャマルさんとはそれ以外の時にもちょくちょく出会っているけど、一人の彼女と町で邂逅したのはこれが初めてだったりする。
 要するに、シグナムさんは常日頃の俺を殆ど知らないわけだ。
 噂とか関係なく、これは間違われても仕方ないのかもしれない。誤解フィルター越しのこっちは堪ったもんじゃないが。
「……すまん。私は己が思っていた以上に、“たわいの無い話”をするのが苦手だったようだ。やはりヴィータ達のようにはいかないか」
 そう告げるシグナムさんは申し訳なさそうにしゅんとしていた。
 そこまで気にする必要はないのだが、真面目な彼女はこんな些細なことですら失態と感じてしまうのだろう。
 しかも自分の失態=主(はやてちゃん)の失態という、常人には少し理解出来ない思考回路を有しているから困ったものだ。
 はやてちゃんを想うその一途さは素直に凄いと思うが、忠義心が厚過ぎるのも考え物である。
「い、いや、お気になさらず。そもそも、世間話なんてそんな神経使うもんじゃないですし」
「しかし、それでは……」
「だ、誰だって慣れるまでは時間かかるもんなんですって! これから少しずつ練習していけばいいじゃないっすか」
 ―――何の?
 自分で言っておいてあれだが、俺はシグナムさんにいったい何の練習をしろと言っているのか。
 世間話か。世間話の練習をしろと言うのか。
「……そうか。そうだな。何事も日頃の鍛錬が物を言う。それは戦闘だけでなく、日常生活にも適用される。竹中大樹、お前はそう言いたかったのだな」
「あー。そうです、そういう感じです。そ、それじゃあ俺はこれで! やらなきゃいけないことが出来たんで」
 シュタと手を挙げ、軽く頭を下げる。
 やはり、シグナムさんは苦手だ。嫌いではなく苦手。
 本人にボケてるつもりはないんだろうけど……俗に言う“天然”なのかもしれない。
 ヴィータちゃんなら容赦なくツッコミを入れるのだろうが、俺にはそんな命知らずな真似出来そうになかった。
 その点、なのはちゃんはしっかりしている。
 相手が誰だろうと正しいと思ったことはハッキリと言うし、行動力もあるし、見るからに強そうで怖そうな“闇の書”相手に一歩も引かない戦い演じるし。
「待て」
「……はい」
 踵を返そうとした直後、背中に声をかけられてしまった。
 やばい。逃げ出そうとしたことがバレてしまったのか。
 嫌な汗が背中を伝って落ちていく。
 シグナムさんの声音が妙に硬く感じるのは、俺の気のせいではないだろう。
 その声質は、彼女と最初に出会ったあの夜のものと似ている気がした。
 俺は……地雷を踏んでしまったのかもしれない。
「お前はあの“公園”に行くのか?」
「ま、まあ、そうですけど」
 色々と酷い目や痛い目に逢っているが、あの公園を通るのがアパートへの最短ルートなんだ。
 ここ二週間ほど何もなかったし、いい加減に自主立ち入り禁止を解除してもいい頃だろう。
 だいたい、そう何度も同じ場所で厄介事に巻き込まれて堪るかってんだ。
 普通の道なんて通ってられるか! 俺は一人でもあの公園を抜けるぞ!
 溜め息を一つ吐き、シグナムさんは腰に手をやって呆れるように告げた。
「……まったく、お前という男は相変わらずだな。勿論、私も同行させてもらうぞ?」
 い、家に、ですか!?
 もしくはジョギングに―――あぁ、間違いなくこっちだ。
 一瞬とは言え、青春ゲームで在りがちな展開を想像してしまった自分に嫌気が差す。
 俺の周りの世界がそんな優しい難易度で作られているわけがないのだ。
 軟弱者のお前はきっと鍛錬をサボるだろうから、自分の鍛錬も兼ねて付き合ってあげよう。
 きっと、そんな感じのお節介スイッチが入ったに違いない。
 俺としては丁重にお断りしたいけど、まあ出来るわきゃないわなぁ。
 少なくとも彼女は親切心から申し出てくれているわけだし、俺ヘタレだし。まだ怖いし。
「……お願いします」
 知らず、苦虫を噛み潰したような顔で応えてしまった俺を、いったい誰が責めることが出来ようか。
 そんな俺のことをシグナムさんは哀れむように見詰めていた。
 これだから現代人(モヤシっ子)は……とか思っているんだろうなぁ。


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