ネクオロでした
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リリ勘。シグナム編。その三。
2010-04-10 Sat 21:00
その三です。

リリ勘。シグナム編。その三。

 所変わって、ここは例の公園。
 本来ならば子供達の笑顔で溢れているだろう、市民の憩いの場所である。
 豆腐の入った袋をぶら下げている俺は、少なくも今のシグナムさんよりは場違いじゃないと思う。
 まあ、すぐに地面にじか置きすることになるわけだが。
「またこれを使う日が来るとは……」
 じか置きした後、表にクワガタのカードが収められたバックルを見詰め、うぐぐと唸る。
 どうしてこうガルウイングがメンテ中の時に限って、この予備デバイスが手元にある時に限って厄介事に巻き込まれるんだ……。
 幻の十三体目との戦闘で壊れた筈のバックルは、新品同然の形で俺の手の中にある。
 訊けば、一月程の時間をかけてガルウイングが修復していたらしい。イザという時の為に。
 眼前では、俺が以前戦った魔導怪物の色違いがシグナムさんと激しい攻防を繰り広げていた。
 とは言え、戦闘は圧倒的に烈火の将殿が優勢のようだ。
 怪物の攻撃はその大半が逸らせるか防がれるかで彼女の体に届いておらず、逆に彼女の斬撃はそのほぼ全てがそれの体に吸い込まれダメージを蓄積させている。
 このまま俺が黙って見ていても、シグナムさんの勝利でこの戦闘は幕引きとなるだろう。
 むしろ、下手に俺が手を出すと彼女の足手纏いになる可能性の方が高い。
 だから、ここは敢えて何もせずに見守っているのが正しい判断なのだ。
「ァァアアアアアアッ!」
 ―――怪物がもう一体居なければ。
 二体目のコイツはバケモノというよりも、どっちかと言えば改造人間っぽい容姿をしていた。
 上半身を黒い鎧と鉛色の鎖で覆い、下半身は全て機械に換装されているのか、太股と脛を繋ぐように銀のチューブが伸びている。
 右腰にはビデオカメラのような物体が取り付けられ、そこから伸びるケーブルは背中に担いだコンテナに繋がれていた。バッテリーか何かだろうか? だとしたら何という大容量。
 右腕は人間とほぼ同じ―――但し、在り得ないほどに筋肉が膨張しているが―――だけど、左腕は肘から下が機関砲に挿げ替えられている。何というコブラ。
 最も狙われ易い頭を守るように、中華鍋を引っくり返した形状のヘルメットを被り、両目はスコープ、口元はガスマスクのようなもので防備されていた。
 向こうが完全なバケモノなのに対し、こちらは強化兵士と云った呼び名の方がしっくり来る。
 ……見た目的なインパクトで云うなら、シグナムさんが相手している奴の方が三倍ほど強そうだ。
 二対一でも彼女の腕なら大丈夫だとは思うが、それをコソコソと見ているのは仲間(と俺は思っている)として失格だろう。
 不幸なことに―――ものすごく不幸なことに、今の俺には奴等とそれなりに戦う力があるのだから。
 この一年の間に妙な覚悟を身に着けてしまった自分がそこに居た。
 二体目は何を思ったのか、迷うことなく俺の方に向かって歩き出している。
 弱い方を最初に狙うとか、まさに悪役の鏡みたいな奴だ。絶対に子供受けしないぞ。
 まあ、こっちの方がまだ弱そうだし、シグナムさんが助けてくれるまでの時間稼ぎなら俺にだって出来るかもしれない―――いや、やるんだ。でないと殺される!
「……変身っ!」
 バックルを腹に押し当て、取っ手を引っ張る。
 クワガタのカードが回転し、魔法陣の刻まれた裏面が表になった。
 直後、目の前に出現する不気味なクワガタ印の門。
 驚くシグナムさんを尻目に、それを走って潜り抜けたところで俺の意識は―――。
「……あれ?」
 ―――途切れないっ!?
 いつもだったらここで訳の判らん人格に意識を奪われる筈なのに、どういうわけか今日は俺のままだ。
 ガルウイングに散々文句を言って置いたから修正してくれたんだろうか?
 あいつがそんなに物分りの良いデバイスだとは到底思えないのだが。
 と、兎に角、変身は完了した。
 このBJがどれほどの性能を有しているかは知らないが、少なくとも弱くはないだろう。
 紅い強化服に銀の装甲、頭を覆うヘルメットには鍬形虫を模した二本の角。
 右腰のホルスターに収められているのは、俺が夢にまで見たゴツ目の銃。
 ようやくこれで特攻人生からオサラバ出来る!
 少し先で、強化兵士が銃を俺目掛けて構えているのが見えた。
 慌てて数箇所にクローバーの意匠が施されたそれを引き抜き……引き抜き……ぬ、抜けない!?
 留め具とかあんの!? ど、どれ!? どうしたらロック外れんのこれ!?
「ァアアアア!」
 ―――衝撃。
 隙だらけな俺に向かって強化兵士の機関砲が牙を剥く。
 バラバラと音を立てて吐き出される薬莢を視界の片隅に映しつつ、俺は後方に弾き飛ばされた。
 遠くでシグナムさんが何か言っているような気もするが、今の俺にそれに応える余裕などない。
 防御魔法が働いたのか、それとも耐久力だけは一丁前に高いのか、弾丸の直撃を受けた胸の装甲は黒く焼け焦げているものの貫通することはなかったようだ。
 よろよろと立ち上がる。何とかして逃げなければ、確実に殺されてしまう。
 胸が痛い。息苦しい。体に力が入らない。
 いくら痛みに耐性があると云っても限度があるって。
 霞む視界に、再度銃撃を浴びせようと狙いを定める敵の姿が映った。
 この距離―――避けれるか!? 中らなければどうということは―――。
「―――竹中大樹っ! 何をしている!」
「が……はぁ……っ」
 ……いや無理だって。
 放たれた銃弾を見切るなんて真似、俺に出来るわけがない。
 こんな時でもフルネームで呼ぶシグナムさんに、仮面の奥で涙交じりの苦笑を浮かべる。
 後生ですから援護を……。
 防御することも出来ず、またしても後ろに向かって吹っ飛ぶ。
 地面に大の字になって寝転がる。辛うじて動く首を使って体を見れば、胸の装甲が完全に砕けていた。
 ばらけた銃弾は体中に命中していたらしく、その他の箇所も傷だらけだ。
「あ……」
 胸の亀裂を縫うようにして流れる赤い液体を目にした途端、一気に意識が遠退いていく。
 俺……だから血はダメなんだって。
 ―――手を出すな。決着は俺が着ける!
 頭の中でやっと響いた第三者の声にほんの少し安堵しつつ、俺はあっさりと意識を手放した。




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