ネクオロでした
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明日勘。第四話。
2010-09-11 Sat 22:31

あの場で何が起こったのか。それを紐解く一つの視点の物語。



「…………は?」
 なのはちゃんの胸から……腕が生えてる。
 呆然とした様子で自分の胸を見下ろすなのはちゃん。
 白くほっそりとした―――恐らくは女性のものだろう腕が少女の胸から生えているその光景は、異様を通り越して不気味だった。
「え……か、貫通? 貫通してんの、あれ!? きゅ、救急車! 救急車呼ばないと―――あ、いや、その前に止血を―――い、いやいや、無理に引き抜いたら出血が激しくて!? そ、それってナイフの場合だっけ!? と、兎に角、急がないと! 急がないと! ブースト!? ブースト発動遅いよ、何やってんの!?」
『―――ready, spiral burst!!』
 世界から音が消失し、次いで右肩に硬い何かが激突する。
 チカチカと点滅する視界を懸命に動かせば、胸から腕が生えた状態でRHを構えるなのはちゃんの姿が映った。
 う、動いちゃダメだって!? 止めないと、何としてでも止めないと!?
 色々と情けない発言が目立つ俺でも、今だけはヘタレているわけにはいかなかった。
「スパイラル・ブースト!」
『―――ready, spiral burst!!』
 背中のシリンダーが回転し、カートリッジが轟音と共に撃ち込まれる。
 加速する視界。吹き飛ぶ意識。
 また何かとぶつかったらしいが、この時ばかりはそれに感謝した。
 意識をすぐに回復する方法としては、それがもっとも優れているからだ。
「―――って、離れてるじゃないか!? もう一発行くぞ。ブースト―――い、いや、その前にアンカーだ! アンカーで足場を固定、その勢いで突っ込むぞ!」
 首を後ろに向けていたのが仇となってしまったらしい。
 ブースターを背中に背負っているという構造上、ブースト魔法は一つの魔法を除いて前に進む事しか出来ない。
 俺は後方のなのはちゃんの元へ行きたかったのに、体はそれとは真逆を向いていた。
 結果、発動したブーストによって彼女と距離を離す羽目になってしまったのだ。
『マスター、装甲の破損率が87%を突破しました。これ以上は―――』
「人命優先! 人命優先だよ、判るだろ!?」
『……了解しました。―――Bind anchor!!』
 肩から射出された四本の錨が虚空を駆け抜けていく。
 その着弾点を見ている余裕などあるわけもなく、俺は矢継ぎ早に次の命令を下していた。
「弾丸装填っ! フォーカス・ブースト発動っ!」
『―――Ready, Focus Boost!!』
 再度、背中で激突音が鳴り響く。
 それと同時に何かが潰れるような音が聞こえた気もしたが、幻聴という事にしておいた。
 加速―――激突。
 今度は壁に突撃したのか、モニターは灰色一色に染まっていた。僅かに青い何かも紛れ込んでいるが、今はそんな事はどうでも良かった。
 だいぶ減り込んでしまっているらしく、抜け出そうともがいても細かな破片が降る以外の変化は見られない。
 霞む視界。
 単にモニターの調子が悪くなっただけじゃない事は明白だった。
 これは使いたくない。使いたくないけど―――我が儘云っている場合じゃない。
「カウンター・ブースト!」
『Ready―――Counter Burst!!』
背負ったタービンが二つに割れ、周囲の障害物を砕きながら両肩に装着される。
 今日何発目になるかも判らない弾丸が装填され、俺の魔力光である灰色の炎が肩の筒から吐き出される。
 人面樹と綱引きをしても負けなかったスペルは遺憾なくその力を発揮し、埋まっていたビルのフロアと俺の体を吹き飛ばした。
 一気に遠くなる意識。加速度的に狭くなる視界。
 最後の力を振り絞ってブースト魔法を発動させる。
 三度目の正直とは云ったもので、今度は狙い通りなのはちゃんの側に着地する事が出来た。
 但し、彼女の居るビルの屋上、その床面を大きく抉ってではあるが。
 体力が低下しているからだろう。普段以上に重い体を引き摺って、なのはちゃんの元へ歩み寄る。
 ゆっくりとしか動けない自分に苛立ちを覚えつつ、重傷を負っている彼女を刺激しないよう努めて冷静に声を掛けた。
「判っているとは思うけど、動かないでくれ」
 冷静を通り越して棒読み口調になってしまったが、今はこっちの方がいいだろう。
「……大樹、さん……?」
「動くなって言ってるんだ。今の俺は色々と限界なんだ。自分でもどうなるか判らない」
 動こうとしたなのはちゃんを制止させる。
 少しきつい口調になってしまったけど、これも彼女を思っての事。
 口にしている通り、俺自身いつ気絶してもおかしくない状況なのだ。形振り構っていられない。
 依然としてあの腕はなのはちゃんの胸を貫いている。
 出血が見当たらないのは十中八九、腕が傷口を圧迫しているからだろう。
 誰がどう見ても最悪の状況だった。
 痛みで意識が朦朧としているのか、なのはちゃんの表情は青ざめている。
 仮面で見えないだろうけど、俺もきっと似たような顔をしているに違いない。
 いかん。本格的に危なくなってきたのか、耳元で鎖を引き摺るような幻聴まで聞こえ始めた。
 倒れない内になのはちゃんを介抱しようと足を踏み出すものの、紐のようなモノに足を取られて前のめりに倒れそうになる。
 ガルウイングも限界が近付いているんだろう。
 ヴァイザーに投影される映像にはノイズが走り、今となっては一メートルほど先に居るなのはちゃんの姿すらまともに写す事が出来ない有様だった。
 聴覚センサーの感度を引き上げる事で何とか対応しているけど、所詮は付け焼刃。そう長くは持たないだろう。
 瞬間、突風でも吹いたのか、はたまたこれも幻聴なのか。一際強い風切り音が耳朶を打った。
 支えになるモノを掴もうと闇雲に手を伸ばし、何か硬い紐のようなモノが指に引っ掛かる。
 何の考えも無しにそれを引っ張った直後、なのはちゃんの悲痛な叫びが俺の胸と耳を貫いた。
「大樹さん、ダメ―――っ!」
「―――っ!? な、なのはちゃん―――おあ―――っ!?」
 突如響いた大音声に体が硬直してしまう。
 聴覚のレベルを上げていたのが完全に仇となってしまったらしい。
 耳元で鐘を鳴らされたかの如く、脳が少女特有の甲高い声量で揺さ振られる。
 間髪容れずにやたらと硬い何かが背にぶつかり、その勢いで俺は大きく吹っ飛ばされた……ようだ。
 推測になっているのはここで完全に意識を失ってしまったから。
 次に目を覚ました時、俺は緑色の柔らかな光に包まれていた。
「あ、まだ動かないでください。素人目で見ても重傷なんですから」
「ゆ、ユーノ君……?」
 緑色の膜の向こう側に、両手を翳したユーノ君の姿が見て取れる。
 どうやら俺は床に寝かされていて、囲むように展開されている緑の膜は彼が施してくれた治療魔法のようだ。
 意識を失う前は傷みのあまり絶叫していた俺の体が、今はせいぜい悲鳴レベルにまで回復している。
 ちょっとした怪我を治すので精一杯な俺からしてみれば、これはすごく羨ましい技術である。
「なのはなら大丈夫です。命に別状はありませんでした」
「あー。そっか。良かった。本当に良かった」
 訊いてもいないのに教えてくれたユーノ君に感謝である。
 まずは一安心と云ったところか。
 でも、まだ気掛かりはいくつか残っているんだよな。
「やっぱり……さ、後遺症とか残るのかな、なのはちゃん」
 あれだけの傷を負ったんだ。
 後遺症の一つや二つ残ってしまってもおかしくはない。
「それは検査してみなければまだ……。ただ、完全に魔力を奪われたわけじゃないので、断言は出来ませんけど、時間を掛ければ回復すると思います。これも……大樹さんが彼等を牽制してくれておかげですよ」
「……え? 俺って何かしたっけ?」
 ユーノ君の言葉に安心すると同時に、首を傾げる。
 ギリギリまで意識を保てるよう努力はしていたつもりだが、あの後、俺の身に何か起きたのだろうか。
 焦ったままブーストして壁にぶつかって―――ぐらいの記憶しかない俺としては、その空白期間が怖くて仕方が無い。
「え。もしかして……覚えてないんですか?」
「う、うん。な、何か俺、変な事とかしてなかった? 皆に迷惑掛けてなきゃいいけど」
 ブーストの誤作動で味方に体当たりとかだったら最悪だ。
 あれ、「ブースト」って口走っただけで発動する代物だから、誤爆とか普通に有り得る。
 俺の問い掛けに、ユーノ君は焦るように首を左右に振った。
「い、いえ、何もおかしいところはありませんでしたよ!? 覚えていないのなら、それはそれでいいんです。そ、それでは、僕はなのはを診て来ますので! あ、この結界の外には出ないでくださいね!」
 ぎこちない笑みを浮かべ、矢継ぎ早に言葉を捲くし立ててユーノ君は去って行く。
 ……なのはちゃんやフェイトちゃんと同じで、嘘が吐けない性格なんだね、君も。
 やっちまった。何をしたのか判らないけど、今の彼の反応を見る限り、とんでもない事を仕出かしてしまったようだ。
 誤爆で体当たりか。もしくは、それの更に上を行く酷い事か。
 思い返せば何時だってそうだった。
 俺の意識が無い時に限って、事態は良くも悪くも急展開を迎える。
 ああ―――ダメだ。何をしたのか気になって仕方が無い。
 なのはちゃんが大丈夫だと聞いてほっとしたのも束の間、新たに飛来した不安という隕石が俺の胸に降り注ぐ。
 泣きそうだ。いや、もう泣いているのか。目尻がひりひりする。
 物理的な痛みならまだ耐性はあるものの、こういう精神ダメージはダメだ。
 いつもは無骨な仮面が隠してくれているが、今はBJを纏っていない素の状態。
 ユーノ君達にばっちり目撃されている事も知らず、俺はこの世の無情さを嘆きながら、そして迷惑を掛けただろう人達に謝りながら咽び泣くのだった。




別窓 | 明日勘 | コメント:15 | トラックバック:0
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この記事のコメント
待ってました!!! そして相変わらずの無自覚っぷりw
2010-09-11 Sat 23:09 | URL | 3T #JalddpaA[ 内容変更]
No title
この涙がどんな勘違いをさせてるのかが楽しみデスね
2010-09-12 Sun 02:01 | URL | #-[ 内容変更]
No title
きたきた!!
この大樹の行動がどのような勘違いを生みだすか!!
楽しみです!!
2010-09-12 Sun 13:58 | URL | #L1x6umnE[ 内容変更]
No title
前回は遅れを取ったが…間に合ったか!?

今回の『四話』にはどれだけの勘違いが含まれているのか!!!

感想が短いですが…次回作を期待しておりますm(_ _)m
2010-09-12 Sun 15:07 | URL | asakura #-[ 内容変更]
今回の大樹君――。
なのはの下へ行こうと、ブースト連発。
その都度、何か(シグナム達)が接触。
ガルウイングに人命優先と、自分は二の次。
気絶と覚醒を繰り返し、所々の記憶無し。
辿り着くも、魔力切れと衝撃で気絶。
そして、精神的ダメージで泣く。

これが、どのように勘違いされてるか、非常に楽しみです。

ああ、次回が待ち遠しい。

それでは、気長にお待ちしてます。
2010-09-12 Sun 19:04 | URL | 通りす蟹の人 #-[ 内容変更]
 待ってました明日勘第四話!大樹は相変わらずの勘違い体質ですね!!
 今回ね行動と言動がどう勘違いされているのか楽しみです!
 次も期待しています!!
2010-09-13 Mon 01:38 | URL | グルタミン #-[ 内容変更]
轢き逃げ駄目絶対
ちょw 大樹、当て逃げ戦法かよw ピンボールかw
しかもアンカー打ち込んでアホみたいな速度でビルに叩きつけるとかエグすぎるw
2010-09-13 Mon 15:37 | URL | 甘党な抹茶 #W6545ECQ[ 内容変更]
きてたー!
待ちわびた…っ!!
次はなのはサイドかな?
今度の大樹の行動はどんな勘違いを起こしてるのか…。
超気になる!!
2010-09-13 Mon 17:32 | URL | キリマン #-[ 内容変更]
大樹……お前、今回だけで何人轢き逃げしたんだよwwwしかも市中引き回しの刑みたいにアンカーぶっ刺して振り回すとか、慣れてる自分でも気絶すんのにwww

まぁ、なんだかんだで他人のために頑張れる大樹はメチャクチャカッコいいんですけどね(笑)
2010-09-13 Mon 20:49 | URL | ミッキー #OekWInOo[ 内容変更]
No title
歴戦の傭兵
人造魔導師
アルハザード製
組織に解剖とかされた事がある
死にたくても死ねない
人助けのためなら平気で死地に赴く
普段は抑制しているが実は高ランク
暴走を抑えられない←New
どこまで勘違いが加速するんだこの人は
2010-09-15 Wed 00:10 | URL | AS #-[ 内容変更]
No title
おおう、また一つ勘違いが KA☆SO☆KU したね♪

………どんだけ次回が待ち遠しい引きなんだよこれwww
2010-09-15 Wed 22:09 | URL | omoro #JalddpaA[ 内容変更]
待ってました!
ついに明日勘続編…!!

とても主人公がかっこよすぎて見入ってました(笑)

このまま焦らず頑張ってください!

次回も期待してます!
2010-09-15 Wed 22:20 | URL | 蒼海 #-[ 内容変更]
No title
やべー、これはなのはサイドがすごく気になるぞ・・・・。

次に期待w
2010-09-17 Fri 10:04 | URL | Fat #mQop/nM.[ 内容変更]
感想
なんという猪突猛進w 果てさてなのは達からはどんな風に勘違いされてるのやら。
ブーストの被害に遭ったシグナム達からもどの様に思われるのやら……。
次回が楽しみです。
2010-09-20 Mon 13:00 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
No title
お久しぶりです!
まさかザフィーラ吹っ飛ばすより先にアンカー射出していたとは
そしてこれはユーノ視点が気になる内容だ
まあなのはには勘違いしてる余裕がないからですが
あ、そう言えばアルフも居たっけ
次回も楽しみにしてます
2010-09-23 Thu 10:10 | URL | MIst #/9hBKkrU[ 内容変更]
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