ネクオロでした
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零の使い魔。 ~聖十字の騎士 第二十四話~
2010-11-21 Sun 19:53

今回は出番がないみたいだ。良かった。安心した。

                                            <ダンケ>
 

 村を挙げての歓迎会は夜更けまで続いた。
 上等のワインをたらふく御馳走になり、“ヨシェナヴェ”や他の珍しい郷土料理を堪能し、ギーシュに至っては調子に乗って村の若い娘達に自分の武勇伝を得意げに語っていた始末。
 十数匹のオーク鬼を単身で打ち倒したなどと口にした時は後頭部を叩いてやろうとも思ったが、そういう自分も結局は彼と同じように何もしていないのである。
 シエスタと一緒にシルフィードの背に乗り、ダンケ達がオーク鬼と戦っている姿をハラハラしながら見守っていただけ。これでは同じ穴の狢だ。
 なにもしない。それがあの場で自分の取れた最善の行動だと分かっているからこそ、ルイズは悶々としているのだった。
 用意された部屋には、ルイズ以外にキュルケとタバサも泊まっていた。
 村の密かな名物という温泉に浸かって汚れと疲れを落とし、現在の貴族様御一行はシエスタの生家で世話になっている。
 タルブ村に宿屋などという上等なものはない。
 必然的に彼女達は民家に泊まることになるのだが、すすんで貴族の子息を家に招く豪胆な者は居なかった。
 シエスタ曰く、泊めるのが嫌なのではなく、貴族相手にどう接したらいいのか分からないというのがその理由なのだとか。
彼等にとっては最上級のベッドを用意したつもりでも、貴族にとってはそれがそこらの安宿のベッドと同じように映るかもしれない。
 貴族の機嫌を損ねてしまえば、どんな罰が下るか分からない。一族を皆殺しにされてもおかしくはないのだ―――ということらしい。
 その結果、常日頃から貴族と接しているシエスタの家がルイズ達の寝床として提供されることになったわけである。
 メイド少女の言葉を、そんな馬鹿なことするわけないじゃないと一笑に付そうとして、しかしルイズは押し黙った。
 在り得ないから安心して。
 そうとだけ告げ、不機嫌そうに眉を顰める。
 認めたくないが、そういう暴挙に出た貴族が居るという話を聞いたことがあった。
 飽くまで噂なので詳しいことは分からない。
 つい最近まで若い村娘を買い入れ、その娘が言う事を聞かなければ、娘だけでなく家族すら罰するという愚行を犯したどうしようもない貴族がよりによってこのトリステインに居たらしい。
 過去形になっているのは、最近になってその貴族の話をさっぱり耳にしなくなったからである。
 噂では強盗に押し入られ、手酷い目に遭わされたらしいが真実は闇の中だ。
 仄かなランプの明かりに照らされた室内で、少女達はそれぞれ自由な一時を過ごしていた。
 その時、ちびちびとワインを楽しんでいたキュルケが思い出したように口を開いた。
「結局、“竜の羽衣”って何だったのかしら?」
 バスローブに身を包んだキュルケが首と共に、グラスに入ったワインを傾ける。
 タルブ村の名産と言われているだけあって、そのレベルは舌の肥えた少女達を満足させるに足るものだった。
 タルブ村以外で有名なのはアルビオン産のワインだろう。
だが、白の国がレコン・キスタに乗っ取られてしまった今となっては、既に流通している物以外に入手出来る術はない。最近になって魔法学院にタルブ村のワインが多く並ぶようになったのも、それが原因だった。
「ダーリンは“ゼロセン”って呼んでたわよね。自分の国の兵器だって。ルイズ、彼は貴女の使い魔でしょ。なにか知らないの?」
「……知らないわよ」
 不機嫌さを押し隠そうともせずに、ルイズは乱暴な手付きで湿ったままの髪をタオルで拭く。
 桃色のネグリジェを身に着けた少女が部屋の隅に置かれた籠にタオルを放り投げる―――も失敗。
 僅かに届かず床に落ちたそれは、次の瞬間生じた一陣の風によってフワリと舞い上がり籠の中に収まった。
 チラリと視線を隣に向けると、持参した本から目を離さないままタバサが杖を壁に立て掛けている。
「ありがと」
「いい」
 雪風の少女はアルビオンの時と同じパジャマを着ていた。あのナイトキャップも健在である。
 体を投げ出すようにしてベッドに横になり、学園長の言葉通り肌身離さず持っていた古書をパラパラと捲る。
 白紙だ。物の見事に真っ白である。
 古書を受け取ったあとに一度、中身に目を通しているので驚きはない。ぶつけようのない怒りはあるが。
 ページを片手で捲りながら溜め息を吐く。
 式の詔を考えなければいけないというプレッシャーもあるにはあるが、それ以上にルイズの頭を満たしているのは自分の使い魔―――ダンケの素性についてだった。
 キュルケが言った通り、自分はあまりに彼のことについて無知過ぎる。
 一番手っ取り早い解決法は本人に直接尋ねることだろう。
 彼のことだ。主として話すように命じれば、どれだけ辛い過去があろうと語ってくれる。
 だが、それをするのは躊躇われた。
 ―――いつか話してくれる日が来るまで待とう。
 一度そう決めた筈だ。今更それを覆すのは、彼に対する裏切り以外の何者でもない。
 モヤモヤとした気持ちは依然として胸の中に残っているが、“信じ続ける”と一度そう決めた以上、それを曲げることはしたくなかった。
 袋小路に入りかけた思考を打ち切り、今までとは別の意味で眉を顰める。
 彼女の右手の薬指には先の褒賞として賜った水のルビーがはめられていた。
この指輪を見ていると、モヤモヤした感情が胸の奥から湧き出てしまう。
 だが、アンリエッタの結婚式までそれほど時間に余裕があるわけではない。
 アルビオンの新政府は不可侵条約を持ちかけて来たらしいが、それを鵜呑みにするほどルイズは馬鹿じゃなかった。恐らくは、アンリエッタもその提案に懐疑の目を向けている筈だ。
 仕えていた主人を裏切り、名誉ある魔法衛士隊の隊長すら内に取り込むような連中なのだ、レコン・キスタは。条約の一つや二つ、平気な顔をして破るに決まっている。
 その時に備えて、トリステインとゲルマニアは同盟を結ばなければいけない。その為には出来るだけ早くアンリエッタ姫とゲルマニア皇帝の婚姻の儀を執り行う必要があった。
 親友の姫君のことを思うと哀しくなるが、自分が彼女の為に出来ることと言えば立派な詔を考えることぐらい。ならば、せめて最高の詔を作って送り出そう。
 決意を固め、むむむと唸りながら頭を捻る。
 詔は四大系統に対する感謝の言葉を連ね、尚且つ詩的な韻を踏んでいなければいけない。
 詩など今まで考えたことのないルイズにとっては、魔法の修行並みに辛い御役目なのであった。
「火……火は……」
 呪詛のように繰り返しつつ、懸命に火に関する言葉を頭の中で積み上げていく。
 要らぬ横槍が入ったのはその直後のことだった。
「燃え上がる恋の象徴に決まってるじゃない。障害があればあるほど恋の炎は燃え上がるのよ!」
「障害があればあるほど燃え上がる……と」
「えーっと、次は水ね。水……水は……」
「冷たい。時々ぬるい」
「時々ぬるい―――って、タバサ! 余計なこと言わないでちょうだい! だいたい、ぬるいってそれただの感想じゃないの! キュルケも! これ、姫様の結婚式で読み上げる詔なのよ!? 障害があればあるほど燃え上がるとか、不純な背景滲み出すぎじゃない!」
「あら、ごめんあそばせ。知らなかったものだから」
 おほほほほ。
 わざとらしく笑声を響かせるキュルケ。
 知らないなんて嘘っぱちだ。何故なら、学院を出発したその日に彼女等にはこのことを話しているのだから。
 正確には聞きだされてしまった、が正しいのだが。
「風が吹けば樽屋が儲かる」
「それは諺(ことわざ)! どこの世界に結婚式でまったく関係ない諺読み上げる馬鹿が居んのよ」
「そうなると、地は“雨降って地固まる”ってとこかしらね」
「あ、それならまだいいかも―――って、誰も諺なんて募集してないわよ! 人が必死になって詔考えているっていうのに……」
 結局のところ、頼れるのは自分だけということか。
 ニヤニヤとした笑みを口元に貼り付けているキュルケを威嚇し、再び白紙の“始祖の祈祷書”に視線を戻す。
 少女はそこで、白の中に在り得ない筈の黒を見た。
「あれ……?」
 首を傾げ、目をこしこしと擦る。
 一瞬、その紙面に文字のようなものが浮かび上がった気がしたのだが……。
 長風呂をしたつもりはなかったが、実はのぼせていたのかもしれない。
 頭を振り、もう一度祈祷書に目を向ける。
 そこには、相変わらず真っ白いままのページが広がっていた。文字どころか、相当な年代物の筈なのに紙面には黄ばみ一つ浮かんでいない。
「どうしたの、ルイズ。素直に負けを認めて、ダーリンをわたしに譲る気になった?」
 谷間を強調するように胸の前で腕を組み、キュルケが妖艶に微笑む。
 同性すら惹き付けるその魔性の魅力に、ルイズは横になったまま器用に体を仰け反らせた。彼女の有する圧倒的物量を前にしてダメージを受けない女性など、この世にはほとんど居ない……と思いたかった。
 あれが世界最大クラスだ。そうだ。そうに決まっている。その上など存在しない。見慣れてしまえば、こちらの勝ちは揺るがない。
 胸中で何度も頷き、自己暗示を施した上で体と意識を引き戻す。
「い、一生ないわよ、そんなこと」
 憮然とした表情で応え、本を閉じる。表情とは裏腹に、声は微かに上擦っていた。
それもこれも疲労が原因なのだ。だから、今日はここまでにしておこう。
 始祖の祈祷書をベッドの横に備えてある机に置いて、毛布を被る。
 視界の端に映る赤髪の女がクスクスと笑っている気がするが、これも疲労からくる幻覚と幻聴に違いない。
 毛布を顔の高さまで引っ張り、強制的に視覚を遮断する。聞こえて来るノイズは完全に無視だ。
 さあ、長いようで短かった宝探しの旅も今日で終わり。明日には魔法学院に帰り、いつも通りの生活に戻ることになる。
 ついて来てなにか得る物があったかと訊かれれば返答に窮するが、少なくとも無駄ではなかったと思う。経験すること全てが初めてで新鮮だったし、より一層謎は深まってしまったものの青年の新たな一面を垣間見ることが出来たのだから。
 アンリエッタ姫の詔を考えるという最重要課題は丸ごと残ってしまっているが、学院に戻ってから熟考するとしよう。
 自分一人でどうにか出来るとは思えないが、やるだけのことはやっておきたいのだ。学院長に助力を求めるのはそれからでも遅くはない。
 考えがある程度まとまってくると共に、ゆっくりと眠気の波が押し寄せて来た。
 穏やかなその波に身を任せ、ルイズは意識を手放していく。
「すー、すー」
「ほんと、呆れちゃうくらい寝付きがいいわね、ルイズは。これだからいつまで経ってもお子様扱いされるのよ」
 憎まれ口を叩きながら苦笑し、ずり落ちた毛布を体にかけてやる。
 その様を横目で見ていたタバサは、微かに口元に弧を描くとぽつりと呟いた。
「いいお姉さん」
 青髪の少女が表情豊かであったならば、きっと「してやったり」といった顔をしているだろう。
 キュルケは僅かに頬を朱色に染めると、そっぽを向いた。なにも見たくないとばかりに瞳を閉じ、不貞腐れたように告げる。
「……それを言うなら、“いい女”でしょ」
「照れ隠し」
 キュルケの赤くなった耳に、タバサの小さな笑い声が届いた。



別窓 | 零の使い魔。 | コメント:7 | トラックバック:0
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この記事のコメント
ほのぼの回だなー、て思って読んで、こういうのも良いなって思った後、前回のラストが誰かわかんないまんまだった……


ああ~焦らされる!(笑)
2010-11-21 Sun 20:28 | URL | ミッキー #OekWInOo[ 内容変更]
No title
ワイン・・ご馳走・・・
戦士の給食ですね
2010-11-22 Mon 00:56 | URL | 眼寝 #-[ 内容変更]
更新待ってました~

ルイズ可愛いよルイズ
2010-11-23 Tue 17:41 | URL | ゆゆ #-[ 内容変更]
No title
フラグだな!!
胸フラ・・・ティファニアフラグに違いない!!
今から楽しくなってきた~
2010-11-24 Wed 09:26 | URL | DDD #pYrWfDco[ 内容変更]
No title
うぐぐ……待つさ!待つともさ!もう何かに目覚めるほど待ってやるさ!!
2010-11-26 Fri 10:05 | URL | #GONF.jlE[ 内容変更]
コメント
>あれが世界最大クラスだ。そうだ。そうに決まっている。その上など存在しない。見慣れてしまえば、こちらの勝ちは揺るがない。
 胸中で何度も頷き、自己暗示を施した上で体と意識を引き戻す。

ところがギッチョン!まだまだ上がいるんだニャー
2010-12-16 Thu 17:32 | URL | #aAuxo48E[ 内容変更]
No title
いつのまにか拍手が増えてる?
2010-12-19 Sun 16:10 | URL | 眼寝 #cRy4jAvc[ 内容変更]
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