ネクオロでした
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零の使い魔。 ~聖十字の騎士 第二十五話~
2010-12-19 Sun 21:33
死亡フラグ成立……。

                                            <ダンケ>

「す、素晴らしい! これがこの村に伝わるとされる秘宝“竜の羽衣”なんだね!?」
「ああ」
 翌日。
 零戦が安置されている神社には、いつものメンバー+αが集っていた。
 現在進行形で翼やプロペラを喜色満面の笑みを浮かべて撫で回しているのは、魔法学院の教師・コルベール先生である。
 久しぶりに長期休暇を取ることが出来たらしく、以前から気になっていたこの村の秘宝を見る為だけに、寝る間を惜しんで馬車を飛ばしてここまでやって来たのだとか。
「ほう、これが翼か! 珍しい形状だな。鳥や虫とも違う。ダンケ君、これが本当に空を飛ぶと言うんだね! いやいや、君を疑うつもりはないぞ? わたしはただ、滾る知的探究心を堪え切れんだけなのだ。ほれ、その証拠に嬉しさのあまり手が震えておる!」
「……ああ」
 なんという典型的なオタク。絡み辛いことこの上ない。
 その場で飛んだり跳ねたりしている中年のおっさん先生は、水揚げ直後の魚みたいに生き生きとしていた。
 振り返れば、ルイズ達が揃ってげんなりとした表情を浮かべているのが見える。
 なるほど。確かに、このテンションはちょっとうざったらしい。
「あ、あのミスタ・コルベール。わたし達はもう魔法学院に戻ろうと思うんですけど」
 申し訳なさそうに口を挟むルイズ。
 優しい少女は、彼の世界を一時とはいえ壊すことに罪悪感を覚えているらしい。
「む、そうなのかね?」
 コルベール先生は零戦から目を離そうとしなかった。
 しゃがみ込み、機体の底面を覗き込みながらルイズの言に応えている。
 本当に機械が好きなんだな、この人は。生粋の技術者ってわけだ。
 ただ、感触を楽しむように叩くのはやめて欲しい。凹むかもしれないから。
「はい。いつまでも授業をサボ―――やむを得ない事情で休むわけにもいきませんし」
「そうか。確かに学生の本分は勉学にあるからな。ミス・ヴァリエール、わたしは君のその何事にも真摯に取り組む姿勢は素晴らしいと思いますぞ」
「ミスタ・コルベールはこのままここに?」
 零戦
「無論ですな。この“竜の羽衣”は実に興味深い! なんでもダンケ君の国では、これを更に発展させた物が自在に空を飛び交っているというじゃないか!」
 そうだろう? と視線で問われてしまったので、頷いておく。
 あのあと、コルベール先生に見付かってしまった俺とシエスタは彼が零戦を見る為にタルブ村を訪れたことを知った。
 その時、うっかり零戦が日本の戦闘機だと漏らしてしまったせいでこうなったのである。
 ちなみに、彼は零戦を学校に持ち帰る気満々らしく、ギーシュに頼んで竜騎士隊まで呼んだという。
 竜騎士隊というのは……まあ、判り易く云えば運送会社のようなものなのだろう。
 というか、この国に居るとエコ減税とかで必死になっていた日本人が哀れに見えてくる。
「ほう。これがダンケ君の言っていた“ガソリン”ですかな? この臭いは……ふむ、この油は常温でも気化するのか。実に興味深い。この“ガソリン”さえあれば“竜の羽衣”は飛べるとそういうわけだね?」
「ああ。かなりの量が……必要だが」
 残っていた燃料は雀の涙ほどの量だった。
 まあ、この零戦はガス欠で不時着していたわけだし、燃料がないのは初めから分かってはいたがまさかガソリン自体をドイツの人が知らないとは思わなかった。
 いや。もしかしたら、この国では別の名前が付いているのかもしれない。
 零戦を“竜の羽衣”だなんてメルヘンチックな名前に変える人達の国なのだから。
 こういう時に限って翻訳機はまともに稼動してくれないらしい。
 仕方なく、俺はコルベール先生に丸投げすることにした。
「頼めるか?」
 せめてこういう時くらい、丁寧語を話すことが出来ればいいのに。
 言葉で意思を伝えることが出来ない分、態度で表すしかないということか。
 よし、頭をしっかりと下げておこう。
 彼ならば……彼ならばきっとなんとかしてくれるに違いない。
 そんな俺の切ない願いをブリミルさんが聞き届けてくれたのだろうか。
 コルベール先生は力強く首を縦に振ると、輝かんばかりの笑顔を浮かべこう言った。
「宜しい! 調合は難しそうだがやってみようじゃないか!」
「宜しく……頼む」
 予想以上に事がうまく進んだことに胸中で驚きつつも、もう一度頭を下げる。
 これでガソリンの件はなんとかなった。
 あとは―――どうやって、こいつを日本に持って帰るか、である。
 ……いやいや、無理だろ。流石に。


 学校に戻った俺はルイズ達と別れ、コルベール先生の研究室を訪れていた。
 貴族でしかも教職なのだから良い暮らしをしているのだとばかり思っていたが、この部屋を見る限りそうではなさそうである。
 棟の外に案内された時から嫌な予感はしていたけど、これは酷い。
 外面がどこからどう見てもボロい掘っ立て小屋だったので期待はしていなかったが、中の様子も外同様酷い有様である。
 小学生の頃、トラウマルームの一つにランクインしていた理科実験室を十数倍悪くすればこの部屋になるだろうか。
 鼻をつく悪臭の原因は机の上に乱雑に置かれた試験管の中身か、はたまた檻の中に入った蛇やらトカゲやら一つ目の蝙蝠もどきか。
 背の高い本棚には、ドイツ語で書かれているだろう本が隙間なく詰め込まれている。
 壁には無数の紙片が貼られ、書き掛けの設計図らしきものが筆ペンと一緒に投げ出されていた。
「…………」
 鼻を摘もうかと考え、ぎりぎりのところで踏み止まる。
 人の部屋にお招きされて、臭いに顔を顰めるのは誰がどう見ても失礼だろう。
 こんな時ぐらいしか無表情スキルは役に立たないから、有効活用しておかないと。
 コルベール先生の手には掌サイズの壷が握られている。
 その中に入っているのは零戦のタンク内に残っていたガソリンだ。
 蓋を開けた途端、どこか懐かしい臭いが室内に立ち込める。
「ふむ。今までに嗅いだことのない臭いだ。温めなくてもこのような臭いを発するとは、随分と気化し易いのだな。これは、爆発した時の力は相当なものだろう」
「……ああ。だが……それの更に上もあるが」
「そ、それは本当かね!?」
「ああ」
 驚いた拍子に壷を落としそうになる先生に苦笑しつつ、頭の中で言葉を整理する。
 知らないのではなく、単純に別の言葉で浸透しているだけだろう。
 得意気に語れるだけの知識が俺にある筈もないので、出来る限り感情が表に出ないよう注意して首を縦に一度だけ振っておく。
 普段の俺が無表情レベル3だとしたら、今の俺は5くらいには上がっている筈だ。
 かつて、数少ない友人に「世界で初めて作られた手伝い用ロボと一緒に居る気分」と云わしめた俺の実力、存分に味わうといい。
「……なあ、ダンケ君。私はな、魔法は無限の可能性を秘めていると信じておるのだ。貴族の大半は魔法の使い道を自ら狭めてしまっておる。魔法は貴族の象徴であり、戦う為の便利な道具。なるほど、確かにそういった一面もあるだろう」
「…………」
 何故か先生が唐突に語り始めた。
 さっきまで子供のようにはしゃいでいたのに、今は別人のように落ち着いている。
 話の内容もすごく真面目なものに変化しているし、俺としては非常に居心地が悪い。
 要するに、コルベール先生は魔法=科学の力を己の誇示や戦争に使っているばかりじゃダメだと云いたいわけだな。
 アニメや漫画、映画の中でもよくある台詞の一つに、道具は使い方次第で良くも悪くもなる。大事なのは使い手だ―――的なものがあるが、先生が言いたいのはそういうことなんだろう。
 ただ、銃を渡されたら俺は間違いなく武器としか使えない。そもそも、それしか使い方が判らない。
「だが、それではあまりに寂し過ぎる。そうは思わないかね?」
「そう……かもな」
 そうなのか?


 なにやら辺りが騒がしい。
 いつもと同じように洗濯板と共闘している俺を他所に、魔法学院は大きな喧騒に包まれていた。
 なんでも、アルビオン艦隊とかいう連中がこっちの国に戦争を仕掛けて来たらしい。
 どこぞの地域に降下して占領活動を始めたという噂で学院は持ち切りだったが、土地勘がまるでない俺には話の内容がさっぱり理解出来ない。
 まあ……戦争は軍人の仕事だから、使い魔の俺には関係ないからいいか。
 日本人ならではの発想というかなんというか、危機意識がここまでないのも問題だとは思うけど。
 でもなぁ、相手が個人なら兎も角、国対国になってしまった以上、俺に出来る事なんて節制ぐらいだし。
 あ。そう云えば、コルベール先生がガソリンの開発にとうとう成功しました。
 いや、開発というのは少しばかり語弊があるか。
 正確には、日本で云うところのガソリンに該当する何かを見付けてきてくれた、だな。
 この国は環境保護にやたらと力を入れているようで、ガソリンや灯油を始めとする石油燃料は市場で殆ど流通はしてはいないらしい。
 二日前に先生が少量のガソリンを持って来てくれたけど、あの量ではせいぜいプロペラを回すのが精一杯だった。
 まだ樽五本分は必要だと我ながら厳しい言葉を投げ付けてしまったが、あれ以来音沙汰ないのが非常に気に掛かる。
 リッター3000円とかだったらどうしよう? 
 そのせいで先生が途方に暮れていたりしたらどうしよう?
 今更だが、そのことばかりが気に掛かって仕方ない。
 洗濯に夢中になっていれば忘れられるかと思ったけど、今は量が少ないからなぁ。
 ルイズが自分で洗濯してくれるようになったのは嬉しいが―――いや、俺の仕事が減るからあまり嬉しくないのか―――まあ、兎に角、今の俺にとっては戦争よりも先生の方が心配なわけだ。
「ダンケ君! そこに居たのか!」
「……先生か」
 噂をすれば影がさすとはよく云ったもので。
 洗濯物を干し終えて帰る途中、何気なく立ち寄った広場で先生に声を掛けられた。
 見れば、零戦の側に木の樽が五本しっかりと並べられている。
「……恩に着る。この礼はいつか……必ず」
 樽の中に入れておいて蒸発しましたじゃ先生に申し訳ない。
 そう考え、早速零戦に燃料を積み込むことにした。
 一人で樽を持ち上げるのは正直無理があるが、俺にはチートの加護が付いている。
 武器の柄を握ってる~んを発動させた状態ならば、樽の一つや二つ楽に持ち上げることが出来るに違いない。
 多少時間は掛かるだろうが、今日は別にやることないしな。無問題だろう。
 給油を始めようと一本目の樽に近付けば、それが不意にふわりと浮かんでみせた。
 ……そうか。一見、ただの樽にしか見えないコレにも、反重力発生装置が搭載されていたのか。
 胸中で一人感心していると、長い杖を手にしたコルベール先生に肩を叩かれた。
「わたしにも手伝わせてくれないか?」
「……頼む」
 目の前で重い荷物運んでいる人が居たら、そりゃあ放っておけないよな。
 なんだか助力を催促していたようで非常に心苦しい。
 こういう時、断ってしまうと逆に相手に悪いのを思い出したのが唯一の救いだろうか。
 相変わらず重力に反逆している樽を二人で押し、燃料コックを開いてどこか懐かしい臭いのする液体を流し込んでいく。
 樽自体が浮かんでいるので作業自体はとても楽だ。楽なのだが……何故か空気がやたら重い。
 口下手な俺は基本的に相手から話を振られないと対応出来ない為、必然の流れで場を沈黙が支配する。
 妙な圧迫感を覚えつつ、場の空気を耐え忍んでいると、ポツリと先生が零すように言った。
「君ならこうすると思っていた。止めようかとも考えたが……何故だろうか。君なら、この国に広がる暗雲すら切り裂いてくれそうでな。気付けば、時間を忘れて作業に没頭していたよ」
「先生には……世話を掛けた。今度……一杯奢らせてくれ」
 俺は下戸だけど、付き合うよ。
 よく観察すれば、先生の目の下には大きな隈が出来ていた。
 彼がこれだけ頑張ってくれたのだ。
 酒の一杯でも振舞わないと罰が当たってしまう。
 リッター何円だったか訊けない自分が情けないが、酒代くらいならばなんとかなる筈だ。
 一応、手元には姫様から頂いたお小遣いがほぼ全額残っているし。
 お金……使い道ないんだよなぁ、使い魔やっていると。
 文字が読めないから買い物に抵抗があるのも、それに拍車を掛けているんだろう。
「ああ。楽しみにしているよ。だから……必ず帰って来なさい。君の帰りを待っている者がここには大勢居るのだから」
「……そうだな」
 あれ?
 これってもしかしなくとも死亡フラグじゃなかろうか。

別窓 | 零の使い魔。 ~聖十字の騎士~ | コメント:8 | トラックバック:0
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この記事のコメント
あぁ、コルベール先生だったんですか。

原作未読ゾーンに突入してるから、一次を読むような気分で楽しめます(笑)


ってかダンケよ、そりゃこのタイミングで黙々と給油始めたら勘違いもするわwww
2010-12-20 Mon 00:19 | URL | ミッキー #OekWInOo[ 内容変更]
No title
ひゃっほう!
気付いたら更新していたでござる!ルイズたちが完全に空気な回でしたねww哀れww。
2010-12-20 Mon 00:32 | URL | #Wc/DBtGk[ 内容変更]
作者がこの物語を後100話くらい黙々と書けるように、軍資金をあげたい


そう思えるほどハマっています。
お体に気をつけて
2010-12-20 Mon 00:37 | URL | ゆゆ #-[ 内容変更]
No title
コルベール先生ええおひとや
2010-12-20 Mon 01:11 | URL | 眼寝 #-[ 内容変更]
No title
今回はヤバいフラグに気付いたようですねw

次はコルベール先生視点かな?
2010-12-20 Mon 19:11 | URL | #-[ 内容変更]
No title
忙しくてじっくりSS読む暇も無い。
師走なのに、なぜ下っ端の自分がこんなに忙しいのかと小一時間。。。

今回はダンケ控えめでしたかね。その分次回、彼は羽ばたくわけですがw

君なら、この国に広がる暗雲すら切り裂いてそうでな。
切り裂いてくれそうでなor切り裂けそうでな。の方が意味が通るかも。
そのままでも良いわけですが。状況的になんとなく。

ともあれ、更新お疲れ様でした。
2010-12-20 Mon 20:13 | URL | kt #-[ 内容変更]
はじめまして
いつも楽しく拝見してます
次回の更新が待ち遠しいですね……

追伸

「〇〇〇〇」とお呼びしてもよろしいですか?
2010-12-21 Tue 03:25 | URL | イオノア #-[ 内容変更]
感想+誤字報告。
久々の更新キタ、これで勝つる(何に?) コルベール先生の視点からだとどんな風に思われてるのか気になるなぁ~。 さあ、次回はどんな話になるのか楽しみだな~。
後、「わたしにも手伝わせてないか?」は「わたしにも手伝わせてくれないか?」だと思うので時間の有る時にでも修正をしておいた方が宜しいかと。
2010-12-21 Tue 08:46 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
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