ネクオロでした
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零の使い魔。 ~聖十字の騎士 第二十七話~
2011-01-23 Sun 02:56

さあ、ここからが本当の地獄だ。

                                               <ダンケ>
 

 コルベールと共に学院の中庭に戻ったルイズは、そこで彼が運んでくれていた大剣を受け取った。
 デルフリンガーを両手で抱えるようにして持ち、重さに揺さ振られながら千鳥足で少しずつ前進していく少女の姿にコルベールが難しそうな顔をしていたのは秘密である。
 なお、始祖の祈祷書は部屋から一緒に持ち出した鞄の中に仕舞われて肩に掛けられていた。
「ダンケ!」
 ヨロヨロとした足取りで竜の羽衣まで歩み寄る。
 翼をよじ登り、そのまま彼の乗っている場所に滑り込んだ。
 着地場所が青年の膝の上というのは少々誤算だったが……これは非常事態だから仕方ないのだ。うん。
「主……どうかしたか?」
 その声音はいつもと同じように抑揚を感じさせないもの。
 だが、青年と付き合いの長いルイズには判っていた。彼が自分の登場に僅かながら動揺している事が。
 大方、タルブ村へは一人でこっそりと行くつもりだったんだろう。
 ところが、いざ出発という時に主の自分が現れたのだ。これで驚かない筈がなかった。
「わたしも行くわ」
 説得に応じるつもりはないと、最初からはっきりとした口調でルイズはそう告げる。
 ダンケをこのまま行かせてしまえば、間違いなく無茶をしてしまう。
 友人の為に体を張れる。それがこの青年の美点だという事は理解しているが、それとこれとは話が別だ。
 本当なら止めたい。行くなと、自分と一緒に学園に残れと声を大にして言いたい。
 でも、青年は絶対に首を縦には振らないだろう。
 だから自分が一緒に行くのだ。彼が無茶を出来なくする為に。
「ぜ、絶対について行くから!」
 案の定渋っている青年に対し、もう一度はっきりと宣言する。
 もう乗り込んでしまっているのだ。後戻りをするつもりは更々ない。
 不退転の決意を胸に、ルイズは更なる口上を述べようと息を吸い込む。
 そんな少女の決意を余所に、青年はポツリとこう呟いた。
「いや、それは構わないのだが……」
「わたしはアンタのご主人様だから―――って、いいの?」
 予想していた以上に交渉がうまくいった事に拍子抜けするルイズ。何だか肩透かしを食らった気分である。
 いつものように淡々とした口調で反対してくると思っていたが、よもやいきなり肯定するとは。
 ダンケが渋い顔をしていたのは、どうやら竜の羽衣が原因らしい。だがそれもデルフの助言によって解決したようだ。
「コルベール先生が教えてくれたのよ。アンタが……戦争に行くって」
「…………」
 青年は沈黙を保っている。
 否定しないのはルイズの指摘が正鵠を得ているからだろう。
 ―――戦争に行く。
 そう考えただけで怖くて堪らない筈なのに、不思議と体の震えはなかった。これもダンケと共に居るからだろうか。
「……やっぱり。放っておけないんでしょ、あのメイドの事」
「シエスタの事か。ああ―――そうだな」
 まるで今思い出したといわんばかりのその口調の裏に、いったいどれだけの想いがこめられているのだろう。
 チクリと胸に奔る痛みを押し留め、ルイズはわざと呆れるように笑顔を見せた。
「最初はね、そんな馬鹿な真似、絶対にやめさせるつもりだったのよ? でも、アンタの顔見たら、そんなのどうでもよくなっちゃったわ」
 それは嘘だ。
 どうでもいいわけがない。止める事が出来ないから、じっとここで待っているのが嫌だったから、自分はここに居る。
 向かう先に待っているのは限りなく絶望に近い未来だろう。
 だが何故だろうか?
 この青年と一緒に居るとそれだけでどうにかなってしまいそうな気がするのは。
 思い出すのは竜の羽衣に跨っている時の彼の横顔。その表情は今まで見たどの顔よりも精悍で……。
 かーっと頬が熱を帯びていくのが自分でも判った。
 それをいつものように首を振って誤魔化そうとして、思い止まる。
 これから自分は戦地へ赴くのだ。考えたくもないが、これが彼と共に過ごせる最後の機会になるかもしれない。
 覚悟は一瞬で―――とは言えないが、それなりの早さで決まった。
 体内にこもった熱を吐き出すように短く息を吐く。それから青年の肩に手を掛け、軽く自分の体を持ち上げた。
 何事かとこちらを見やるダンケ。
 思わず目を逸らしたくなる衝動を懸命に抑え、早鐘の如く鳴る鼓動を他人事のように感じつつ、ルイズは精一杯の勇気を振り絞る。
 そして青年の耳元に顔を寄せ、囁いた。
「この“ひこーき”に乗っている時のアンタ、すごく……その……カッコ良かったわよ?」
「そうなのか?」
 返って来た言葉は相変わらず愛想の欠片も感じられないもので……。
 だからこそ、それが返って彼らしくて―――ルイズはムッとするのも忘れて苦笑気味に口の端を持ち上げた。
 そんな少女の表情に恥ずかしさでも感じたのだろうか。ダンケは短く「行こう」とだけ告げると、竜の羽衣の蓋(のようなもの)を閉じた。
 その姿を微笑ましそうに見詰めながら、ルイズは閉鎖された竜の羽衣の中でこう力強く宣言するのだった。
「ん。あ、わたしも乗っているんだから無茶したらダメだからね! アンタにはわたしを守る義務があるんだから―――ずっと。そう、これからもずっとよ! だから―――」
 必ず生きて戻って来るんだ、ここに! 皆で!


 彼が飛んだ日。


 空は怖い。空を飛びながらそんな事を考えるのもどうかと思うけど、これが今の俺の抱いた率直な感想だ。
 さて、唐突で申し訳ないが俺は大きな問題と戦っている。
 デルフの指示に従う事で迷わずタルブ村に辿り着く事は出来たわけだが、どういうわけかどれだけ近付こうと軍の人の誘導がないのである。
 こんな骨董品がよりによって戦場を飛んでいるというのに誰一人文句を言わないとか、いったいこの国の軍人は何を考えているのだろうか?
 こうしている間にも刻々と燃料―――そして何より俺の気力が減っている。早く地に足を着けないとおかしくなってしまうかもしれない。
「ひどい……」
 後部座席の風防から顔を出して村を見下ろしているルイズが泣きそうな声音で呟いた。
 彼女の気持ちは痛いほど判る。
 俺達はこの村に一日だけとは言え滞在し、歓待を受けているのだ。そんな場所がここまで無残に荒らされて怒りを覚えない人間はいないだろう。
 操縦に手一杯の俺でさえイライラしているのだ。見る事しか出来ないルイズは尚更だろう。
 風防の向こう側には、我が物顔で村に炎を吹き掛けるドラゴン(だろう、多分)の姿が見える。
 その更に奥に堂々と浮いている多数の船。
 なんという絶望的な光景。胃がキリキリと痛み出した。
 無論、彼らに対する怒りがないわけでもないのだが―――。
 ま、まあ、いくら相手がどうしようもない連中だからといっても民間人が戦争に介入するわけにはいかないよな。
 零戦にはルイズも乗っているのだ。無茶はするなと言われたばかりだし、ここは大人しく従っておこう。
 ……はぁ。どれだけ根性がないんだ、俺は。恩人の故郷が荒らされているっていうのに……。
 あまりの自分の情けなさに泣きたくなってくる。例えチートなる~んの加護があろうと、人の性格はそう簡単には変わらないという事か。
 だが、ここで泣いて視界を歪ませるわけにはいかない。操縦桿を強く握り締め、奥歯を痛くなるほど噛み締めて我慢する。涙で前が見えなくて墜落とか、笑い話にもなりゃしないのだから。
 兎に角、急いで出来るだけ安全で広くて安全な―――要するに安全な場所に零戦を着地させてシエスタを探しに行こう。
 彼女の事だ。家族と一緒に近くの森の中にでも避難しているに違いない。俺も恐らくそうするだろうから。
 機体を僅かに傾け、心の中で「安全な場所、安全な場所」と呟きながら見下ろしていると、不意に操縦桿を握る俺の手の甲が温かくなった。
「主……?」
 そちらに視線をやれば、ルイズが身を乗り出して自分の手を俺のそれに重ねているのが映った。
 なるほど。急に温かくなったのは彼女の体温が伝わったからか。
 ―――って、納得している場合じゃないって!?
「ルイズ、その体勢は危ない。席に戻れ」
 全然慌てているように聞こえないかもしれないが、内心ではアタフタしまくりの俺である。
 今の彼女は急旋回でもしようものなら体が風防に叩き付けられ、下手をすれば外へ飛び出して行ってもおかしくない状態なのだから。
 短く「判った」とだけ告げた少女は、俺の言葉をどう解釈したのかその小柄な体を前―――再び俺の膝の上へと滑り込ませた。
 あれ、ひょっとしなくても言葉通じてないよね……?
 零戦の駆動音に掻き消されないよう、出来る限り声量を出して言ったつもりだったんだけど、聞こえなかったのだろうか。
「ダンケ、前言を撤回するわ」
「…………」
 い、いや、それは困る。すごく困る。
 ルイズが小柄だからまだ視界を確保出来てはいるが、彼女が依然として不安定な体勢で居る事に変わりはないのだ。
「ルイズ、それは―――」
 困るから席に戻ってくれ。
 という俺の本心が最後まで発せれる事はなかった。何故なら、言い終わるより早くルイズが口を開いたからである。
 俺の可愛らしくて優しい御主人様はキリッと前を見据え、人差し指を立てた拳を前方へと突き出しながらエンジン音に負けないくらい大きな声で言った。
「ダンケ! アンタの主として命令するわ! あいつらをシエスタの村から―――そして、私達の国から追い出してやりなさい!」
 やる気ですね、ルイズさん。
 もうこうなってしまったら腹を括るしかないだろう。
 この聡明な少女がこうまではっきりと言い切ったのだ。きっと何か勝算があるに違いない。
 あの爆発技術の応用とか……うん、ありそうだ。
 そうなると、俄然とやる気が沸いてくるから現金なものである。
 心なしかる~んも「頑張れ! お前ならやれる! 絶対にやれるって!」とばかりに光って励ましてくれているような気がした。
「了解した、主」
 ルイズは意地でも膝の上から退くつもりはないようだ。
 彼女の策には視界確保が最低条件なのかもしれない。そうならば仕方ないとベルトで体を固定して、零戦を操作する。命に関わる事柄に関しては寛大な俺だった。
 とりあえず、タルブ村を襲っている連中の側に機体を寄せればいいんだろうか?
 近くに行けばルイズが魔法(科学)でどうにかしてくれるだろうから、俺は運転に専念していればいいわけだ。楽でいいな、楽で。
 操縦桿を握りながら、意識を機体の操作だけに集中させる。
 こうしている間にも、る~んが発動しているらしく体力の減りがやたらと早い。出来る事ならHPが尽きる前に一網打尽にして欲しいところだがはてさて。
 見付からないよう高度を取っていた零戦を急降下させ、上空からタルブ村に接近する。
 刹那、決して広いとは言えない機内にデルフリンガーの警告が響いた。
「相棒、気付かれたみてぇだ! ブレスが来る前に派手なのをかましてやんな!」
 窺い見れば、確かにデルフの言葉通り、前方に居る竜が慌てた様子で体勢を整えようとしている。
 さあ、お嬢様やっちゃってください!
 そういう意味合いの視線を膝元の少女に送ろうとして、何故かそこでルイズの鳶色の瞳とばっちり目が合った。
 あ、あれ、おかしいな。どうして彼女は杖を持っていないのだろう? 何だか無性に嫌な予感がする。
 視線がぶつかり、一拍置いてルイズが俺に向かってコクンと首を縦に振る。
 その意味をこちらが尋ねるより早く、彼女は俺の体にしがみ付きながら勇ましくこう言うのだった。
「ダンケ、やっちゃいなさい!」
「了解した、主。ここからが本当の……地獄だ……!」
 当然、俺にとっての、である。
 まさか、この言葉をリアルで使う羽目になろうとは思いもしなかった。
 お願いだから耐弾鱗とか防弾フィールド装置とか搭載していないでくれ。
 胸中で神に祈りを捧げながら、スロットルレバーの発射柄を握りこむ。
 刹那、ゼロ戦の両翼に装備されている二十ミリ機関砲が雄叫びをあげるのだった。
 衝撃と音にビビったのは俺だけの秘密である。



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この記事のコメント
No title
一番乗り!!…かな?
次かその次辺りで知ってる領域から外れるので原作を買わないと。><
SSを楽しむために原作を買う、これぞ本末転倒。
2011-01-23 Sun 03:28 | URL | #Wc/DBtGk[ 内容変更]
No title
次は「人は撃てないからキメラを撃とう」とか言って、
火竜撃ったら火袋引火で大惨事フラグかな?

ルイズ、掃除やデルフや祈祷書で焦って忘れてる事ないよね!?
まぁ。懐に入れてるだろうけど何か心配だ・・・。
2011-01-23 Sun 11:32 | URL | 猫目石 #-[ 内容変更]
待ってました!!
 来た!!タルブ戦!!
相変わらずの勘違いさすがです!
もうダンケとルイズの温度差に爆笑。
でも今回は珍しくダンケもやる気ののようで。
 さあここからどうなるのか!?続き楽しみに待ってます!!
2011-01-23 Sun 17:12 | URL | グルタミン #-[ 内容変更]
No title
ふむ。もう、ダンケ君の心内描写だけでルイズがどんな勘違いしてるのか判る気がして、期待と爆笑のうちに今回も終了…

どんだけ次回を待ち遠しくさせやがりますか!貴方は!!
2011-01-23 Sun 19:58 | URL | omoro #JalddpaA[ 内容変更]
ダンケが珍しく口数多いwwwつまり過去最高のテンパりってことか!!

とりあえず祈ることは、ダンケの体力が尽きないことだな。
2011-01-23 Sun 20:40 | URL | ミッキー #OekWInOo[ 内容変更]
No title
 あああ~、いったいどうなるんだ!!
ダンケは?ルイズは?シエスタは?そしてワルドは!?
続きが気になる!!
 原作では零戦は壊れますが、ネクオロさんの話ではどうなるのでしょうか?
 続きを楽しみに待ってます!!
2011-02-05 Sat 11:27 | URL | グルタミン #-[ 内容変更]
トンビを追って鷹に遇った気分
別の検索してたら何故かここに辿り着きました。
一気読みしてたら、時間がとんでもないことにww

今回の空中戦はできること少ないですからね。敵との会話もないので、勘違いをどう料理されるのか楽しみです。
旗艦に乗り込んで、激昂したジョンストンに「知って欲しくば名を名乗るものだ」とか短く渋く決めて欲しいですが…w

「引火で大惨事」というなら、敵艦の大砲の砲口に機銃弾が飛び込み、火薬庫に誘爆・轟沈…くらいの神業を見せてほしいですね!…勘違い物語的に。
2011-03-07 Mon 03:42 | URL | なるかみ #-[ 内容変更]
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