ネクオロでした
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ネギ団子大盛り。二皿目。
2011-03-13 Sun 21:44
ネギ団子大盛り。二皿目。

旧友との再会。そして……。
「……お久しぶりです」
 ―――?
 誰だろう、この渋いおじさんは。
 向こうは俺の事を知っているらしいが……ん?
 いや、待て。待て待て待て!?
 このおじさん、もしかしたら詠春さんじゃないのか?
 ちょっとくたびれた感が漂ってきているけど、この張り詰めた空気とあの眼鏡には見覚えがある。
「ああ……。老けたな、詠春……」
「ええ、まったく。歳は取りたくないものです。いつまでも若い貴方が羨ましいですよ」
 カマをかけてみたが、どうやらビンゴだったようだ。
 歳を取る事で温和になったのか、若い頃だったらあからさまに不機嫌顔になるだろう台詞も笑って応じている。
 しかし、よりによって未来に出てしまうとは思わなかった。
 でも、ワープ事故で違う時間軸に跳ばされるって展開はよくあるから、思っていたよりも驚きは少ない。
 2000年後とかだったらさすがにシャレにならなかっただろうけど。
「リョウメンスクナの件、ありがとうございました。貴方のおかげで一人の犠牲者もなく事件を解決する事ができました」
 詠春さんが俺に向かって頭を下げている。
 それにしても、リョウメンスクナって何だろう? ~の件とか言われても、気付いたら十数年後(だろう多分)の未来に跳ばされた俺としては、話の流れがまるで理解できなかった。
「気にするな……。俺はただ……居合わせただけだ。頑張ったのは……彼らの方だ」
 過去の俺がなにをしたのか知らないけど、少なくとも一人ではなにもできないだろう。
 そうあたりを付け、可もなく不可もなくといった言葉を口にする。
 自慢にならないが、こういう曖昧な表現でその場を凌ぐスキルだけはドイツでカンスト済みだった。
「それでもです。皆、貴方に感謝の言葉を伝えたかったようですよ。特にネギ君は貴方に深い恩義を感じているようでした」
「ネギがか……? ……そうか」
 ネギ君の名前が出てくるとは予想外だった。
 でも、これで話の流れを掴む事ができたぞ。
 詠春さんが言っているのは、燃える村の中でバイオ生物の群れと戦った時の事に違いない。
 もうだいぶ昔の事なので忘れてしまった部分も多々あるが、ネギ君が登場するのはあれが最初だった筈だ。
 少し成長したネギ君にも会ってはいるけど、あの時に彼を助けようと頑張っていたのは……あーっと誰だっけ? 
 ほわっとした感じの女の子と凛々しい女の子がいて、アスナちゃんがいや違う、こっちじゃなくてそっちのアスナちゃんが―――と、とりあえず、俺でない事だけは確かだ。
 参ったな。ヨーロッパ生活が予想以上に長かった為か、あの時の記憶が擦り切れてひどい事になっている。
 無駄に頭を使ったせいか耳鳴りまでし始めた。顔を顰め、苦痛を堪える。
 そういえば、ナギさんに注意されていたっけ。お前と詠春は頭を使いすぎだ。もっと気楽にいこうぜ、と。
 当時、どうすれば川で効率良く短時間で洗濯を終えられるかを悩んでいた俺は、その言葉に深く感動したものだ。
 うん、俺は少し悩みすぎていたのかもしれないな。
 どうせここで悩んでいても答えは出ないのだし、後の事はあとの俺にでも任せるとしよう。
 そうそう、ちなみに、洗濯の件は似非波紋と“ハーミット・パープル”を使う事で解決しました。
「重いものを……背負わせてしまったな」
 無数のバイオ生物に襲われる故郷。トラウマ確定だろう、あれは。
 だいぶ昔の事で記憶が薄れているとはいってもあの光景を思い出すと今でもブルーになり、背中が疼く。
 暴走した試作体が大暴れして逃げ出すという話はゲームやアニメでよく見かける光景だが、まさかそれが現実で起きようとは。
 まあ、俺は人語を解すドラゴン(養殖)や火を吹くオオトカゲ、人間よりも大きなモグラを知っているからまだマシだったけど、小さな子にあれはきついだろ。自分の村が被害に遭ったのなら尚更だ。
「……はい。あの歳の子が背負う荷にしてはあまりに重い。ですが、彼女は真っ直ぐ心の優しい子に育ってくれました。正直なところ、彼の娘とは思えないくらいに」
 この口ぶりからすると、詠春さんはネギ君の両親を知っているようだ。
 安否が気になるところだが、あえて口は挟まない。
 ただでさえ未来に来て困惑しているのだ。これ以上要らぬ情報を脳に放り込めば、パンクしてしまう恐れもあった。
 あ、でも、一つだけ訊いておかなきゃダメな事があるんだった。
「……そうか。詠春……あの子の村を襲った奴等について、何か知っているか?」
「ネギ君の村を襲撃した魔族の事ですね。いえ……情けない話ですが」
 悔しそうな顔で詠春さんが首を横に振る。
 あれだけの被害を出した事件の主犯が未だに捕まっていないとなると、やっぱり。
 胸中で自分の出した結論に納得して、同時にどよーんと落ち込む。
 あの規模の事件をうやむやにできるという事は、それだけ潤沢な資金を持つ企業がバックに付いていると見てまず間違いない。
 ナギさん達と一緒に旅していた間に組織の恐ろしさは身を以って実感していたから、できる事ならあの事件は幕引きしていてほしかった。
 ま、まあ、俺には関係ない……よね? 確かにあそこにいたバイオ生物を何匹か倒しちゃったけど、マークされるような行動はしていない筈だ。
 『紅き翼』にお邪魔していた時だって、目立たないよう極力人目を避けて動くようにしていたし。
 もっとも、後者の場合は俺以外の人が目立ちまくっていたからあまり心配はしていないんだけども。
「ダンケ、貴方は何か知っているようですが?」
「知っているも何も……俺はあの場にいたからな。あの幼かった子が……まさかああも立派に育つとは、感慨深い」
 すごく勇敢な子だったよな、ネギ君。
 年齢は訊いていないけど、あの見た目からして十歳かそこらだろう。
 まだ小学生なのにも関わらず、体を石にされながらもバイオ鬼と戦っていたわけだ彼は。
 もうなんというかね、頭が上がらない。心の底から賞賛に値する。
「……あの場にいた? ど、どういう事です、それは!? い、いえ、ちょっと待ってください! それでは、貴方はあの馬鹿と―――ナギと会っているのですか!?」
 胸中でネギ君賛歌を考えていると、詠春さんが唐突にナギさんの名前を出してきた。
 あの村とナギさんにどういう関わりがあるのか知らないが、嘘を吐く理由もないので正直に話しておこう。
「……いや。その時は……会っていない。だが奴となら以前に……。すまん、忘れてくれ」
 ―――っと、やばかった!
 この時間軸が未来だという事を忘れ、余計な言葉を口にしてしまうところだった。
 俺と詠春さんの間にはそれこそ数十年もの時間の開きがあるんだ。
 俺がさっきまで会っていたナギさんは、詠春さんからすればずっと昔のナギさんだよな、ややこしいけど。
 前髪の隙間から窺えば、詠春さんは眉間に皺を寄せて唸っていた。
 やばい。警戒されている。
 怒らせなくても怖いのがラカンさんで、怒らせると怖いのが詠春さん。それが俺の中の常識だった。
 彼に詰問されてしまうと、意思の弱い俺は即行でゲロってしまうに違いない。
「あれはそう……別人だ。お前達の知っている……ナギじゃない」
 慌てて否定してみるが、この程度で詠春さんは満足してはくれないだろう。
 だからこそ、俺は自分が切れる最大の持ち札をここで見せる事にした。
「それよりも、だ。詠春……奴が復活したぞ」
 できるだけ重い口調で淡々と告げる。
 無論、奴とはあの神具を使って封印した巨大バイオ鬼の事だ。
 あの時はバイオ鬼の再起動が不完全だったのと、協力者がいたおかげで辛うじて封じる事ができたんだっけ。
 科学者が何を思ってあれを作ったのか知らないが、甚だ迷惑な代物だった。冗談抜きで二度と見たくない。
「奴? 奴とはいったい?」
「……最強最悪の敵だ」
 いまいち通じなかったようなので、今度はもっとはっきりとした表現を使う。
 口にしている最中、バイオ鬼のビームを思い出してビクッとしてしまったのは秘密だ。
 あいつの名前を知っていればこんな苦労はしなくても良かったんだが……まあ、長い名前だったらどの道俺じゃうまく言えなかった気がするけど。
 これで通じなかったらどうしようと胸中で頭を抱えるが、どうやらその心配は杞憂で終わってくれたらしい。
「ダンケ、奴とは……『造物主』の事でしょうか?」
「……ああ。ここでは……そう呼ばれているのか。詠春、あれとは……関わるなよ」
 ―――造物主。
 なるほど、やはりあれだけのバイオ鬼になると大層な名前が付けられているようだ。
 さしもの詠春さんもあれには敵わない……と思う。
 その名を口にした途端、あからさまに顔色が悪くなった点からも予想が付いた。
 ところが、ここで思わぬ情報を俺は得る事になる。
 詠春さん曰く、あのバイオ鬼はナギさんに倒されてしまったらしいのだ。
 さすがはナギさん。自分でサウザンド・マスターなんて恥ずかしい名を自称していただけの事はある。
「ナギが……そうか。ならば、俺が封じたのはいったい……いや、そういう事か」
 ややこしいけど、少しずつ判ってきたぞ。
 俺が皆と力を合わせてバイオ鬼を封印する前に、ナギさんが一度あいつをとっちめていたわけだな。
 あいつが全力を出し切れていなかたったのは、ナギさんとの戦いで一度力を使い果たしてしまったからだろう。
 あの「きーりぷる☆あすとらぺー」とかいう愛らしい名前のくせして、えげつい衛星砲の直撃を貰ったんだろうな、きっと。
 俺が封印したあとにナギさんが鬼と戦ったという可能性もゼロじゃあないけど、いくらなんでもあれから十数年も経ったあの人にそれだけの力はないだろう、多分。
 でも、欧州の医学の進歩はすごいからなぁ。100すぎても十代の外見でいられるとかできそうな気がしないでもない。
 そうなると、詠春さんの実年齢がますます判らなくなってしまうわけだが……この人、昔からそういうの苦手だったから、うーん。
 あとでさりげなく今の年代を聞いておいた方がいいな、こりゃ。それと詠春さんの年齢も、だ。
「封じたとは? ダンケ、もしや貴方は造物主と戦ったのですか!?」
「ああ……まあな。強かったぞ。正直なところ……死ぬかと思った」
 詠春さんの問いに頷き、口の端を歪める。
 別に面白がっているわけじゃない。あの時の恐怖が蘇り、変な力が入ってしまっただけだ。
 バス一つ容易く飲み込めるほどに太いレーザー攻撃。その真っ只中にいて尚こうして生きていられるのだから、デルフとる~ん、スタンドにはホント頭が上がらない。
 そして、どういうわけか詠春さんは仏頂面で俺の顔を見詰めていた。
 この居心地悪い雰囲気。懐かしい感覚だ。
 そういえば、ナギさんが起こす厄介事に巻き込まれた時、詠春さんはよくこんな感じの空気をまとっていた気がする。
 大抵、この空気のあとに詠春さんがブチ切れるんだよな。うん。
「……すまなかった、詠春。俺の力では奴を……封じる事しかできなかった。倒そうとはしたんだが……及ばなかった」
 怒られるような事をした覚えもないけど、謝っておく。
 頭を下げる事になんら抵抗のない俺は、至極当然な流れで土下座していた。
 ついでに、対バイオ鬼戦で出来る限り頑張ったというアピールも忘れない。
 あわよくばこの屋敷で保護してもらおうとか考えているわけじゃないが―――いや、少しは考えているが、せめて一拍くらいはさせてほしかった。
 この歳で野宿はそれなりに堪えるのだ。野良バイオ生物も怖いし。
「な―――っ!? あ、頭を上げてください、ダンケ! 貴方が責を感じる必要など一切ありません。むしろ、よくやってくれたと褒め称えられるだけの偉業を貴方は成し遂げたのです!」
 え―――そうだったの!?
 あのバイオ鬼は確かに強くて怖くて大きくて最悪だったが、まさかそれほどまでに恐れられる代物だったとは。
 魔法世界(欧州)にいた頃はもっとやばげな奴等と命のやり取りをしていたような気がしないでもない。
 体長40メートル近い光の巨人とか、クジラみたいななりしているくせに口からビーム出せる戦艦とか、それらをまとめて吹き飛ばすナギさん達も大概だったが。
「いや……俺は結局、面倒をあとの者に……押し付けただけだ。奴は遠からず……復活するだろう。そして……同じ手は通用しない。今度は……正攻法で倒すしかないんだ」
 あの神具は俺が使用した時点で限界ギリギリだった。
 る~んの情報では、そう遠くない日に神具は壊れ、バイオ鬼の縛は解けてしまう―――筈だ。
 あれだけの力を持った古代の秘宝だ。その価値は計り知れない。
 それを非常時とはいえ、無許可で使ってしまった。あまつさえ、回収できなくさせてしまった。
 この事に俺は密かに負い目を感じていた。もっとも、思い出したのはつい先程だけれども。
「……造物主が復活するまでの時間がどれだけあるか判りますか? ダンケ」
「そう、だな」
 良かった。どうやら詠春さんは神具に関しては目を瞑ってくれるようだ。
 自他共に厳しい人だから、最悪の場合このまま警察に連れて行かれるかと思ったが……はぁ、本当に良かった。
 胸中でほっとしつつ、記憶が確かならという前提のもと一年という期日を告げる。
「一年、ですか。猶予はほとんどないわけですね。これは……厳しい」
 さしもの詠春さんでもあれクラスの神具を一年で見付けるのは難しいか。
 そりゃそうだよな。本来ならば国宝に指定されてもおかしくない代物なんだし。
「ああ。俺も……それぐらいの期間、ここに留まる事になりそうだ」
 思案に暮れる詠春に、こそっと俺の現状も伝えておく。
 この屋敷に向かっている途中に判ったのだが、今回のワープ失敗は前回のもの以上に厄介な代物らしい。
 十年以上の歳月を跳ばしてしまった影響か、もとの世界に戻るには最低でも一年間はかかるとデルフが言っていた。
 パスポートもない俺が異国の地でバイトできる筈もなく、ましてやここは未来である。
 仮に強制送還されてドイツに戻ったとしても、そこにいるのは未来の御主人様であって俺の知る彼女とは別人だ。
 優しい彼女は保護してくれるかもしれないけど、問題はそこにこの時代の俺がいるかもしれない事だった。
 ―――“タイム・パラドックス”。
 俺のせいで次元や宇宙が消滅とかはさすがに勘弁願いたかった。
「残ってくれると?」
「……いや。力を……使い果たしてしまってな。取り残されただけ、だ」
 力を使い果たしたのはどこかの誰かだが、嘘は吐いていない。
 詠春さんは恩人だし、変に期待されても困るので情けない真実を語っておいた。
「力を……そうですか。申し訳ない、ダンケ。これは本来、こちらの世界の住人で解決すべき問題です。しかし実際は貴方を巻き込み、尚且つこの地に縛り付けてしまっている。この地の一角を治める者として、そしてかつての戦友として、私は貴方になんと謝罪すればよいのか」
 そういって、詠春さんが俺に向かって深々と頭を下げた。
 知り合いなのを良い事に泊まらせてもらおうとか考えていたこちらとしては、そんな事されちゃ大いに困る。
 慌てて座布団から立ち上がり……立ち上がり……どうしよう?
 立ってしまったあとに、座ったまま声を掛ければ良かったと気付いてしまった。
 このまま何事もなく座すのもおかしいと思い直し、詠春さんの肩を軽く叩く。
 それから、立っている間に考えておいた妥当な言葉を口にした。
「水臭いぞ……詠春。共に戦った……仲じゃないか。俺の力で良ければいくらでも……貸そう」
 姿勢を正して、できるだけ真摯な気持ちが伝わるようゆっくりと声に出す。
 彼ならば、俺が基本的に洗濯しかやっていなかった事を知っているだろう。
 以前の召喚と違って、前の召喚ではる~んの力が使えたので一応は戦えたんだけど……がむしゃらに剣を振っていたら空から雷やら大量の武器やらが降ってきて気付いたら終わっていた、という事がしょっちゅうだったから役立っていたという自信がまるでなかった。
「ダンケ―――ありがとう」
 再度頭を下げる真面目な詠春さんに申し訳ない気持ちを抱きつつ、席に戻る。
 元々は俺が生き残る為にその場にあるもの全部使った結果なので、すごく居心地が悪かった。
 だからだろう。
 気付けば、自分でも驚くような台詞が口を突いて飛び出していた。
「早速だが……俺は何をすればいい?」
「はい。『造物主』が関わっている以上、奴等―――『完全なる世界』もまた動き出している筈です。奴等の狙いが判りさえすれば、こちらも対策を立て易いのですが……」
 顎に手をあてて、詠春さんが考え込んでいる。
 その顔をぼーっと眺めながら、俺もまた思案に暮れていた。
 ここにきてまた新しい、それでいて厄介そうな単語が出てきた件について、である。
 詠春さんは確かに言った―――『完全なる世界』と。
 その名は過去で何度も耳にした記憶がある。
 詳しい事は知らないが、要するに悪の組織の名前だ。
 なるほど。あのバイオ鬼の製造に奴等が関わっていてもなんら違和感はなかった。最悪だ。
「狙いか……そうだな。ネギが……一番危ないかもな」
 少なくとも、俺の知っている事例ではその全てにおいてネギ君の姿があった。
 あの村然り、バイオ鬼然り。
 確認してみたところ二度しかないが……二度ある事は三度あるっていうし、確率はそれなりに高いだろう。
「ネギ君ですか……ふむ。たしかに奴等の企みを潰したのがナギならば、その恨みが娘である彼女に向かってもおかしくはない」
「…………ああ」
 辛うじて声は出せたものの、口の端が強張った。
 ―――むすめ?
 彼が―――いや、彼女がナギさんの娘!?
 名前が一文字違いで似ているとは思っていたけど、よもや彼に娘さんがいたとは驚いた。
 てっきりナギさんに憧れた親御さんが付けたのかとばかり思っていた。
 もう十数年の歳月が流れているわけだから、その可能性は大いに予想できていたわけだが……ナギさんに娘さんか。
 なんというか、ひしひしと時代の流れを感じる。取り残されちゃってるなぁ、俺。
 で、俺は恩人の娘さんの性別を間違え続けていたわけか。
 おかしいなぁと胸中で首を捻る。
 今でこそネギ君を女の子と認識できてはいるが、実際に顔を合わせている間はその選択肢を端から削除してしまっていたようなのだ。
 確かにあの年代の子供に性差などあってないようなものなのかもしれないけど、もしかしてそういう流れにいくように思考誘導されていた、とか?
 まあ、そんなバカな事あるわけないかと再度胸中で自己完結していると、詠春さんが慰めるように言った。
「ダンケ、悔やむのはあとにしましょう。明朝、貴方には麻帆良学園都市に向かってもらいたい。そして、その地を治める近衛近右衛門に密書を渡してください」
「密書か。……了解した」
 さすがは詠春さんだ。読み難い俺の表情を看破し、尚且つ励ましの言葉を掛けてくれるとは。
 その近衛さんが誰なのかは知らないが、手紙を渡すくらいなら俺にだってできそうだ。
 聞けば、旅費を始めとするもろもろの費用は全て詠春さんが出してくれるらしい。まさに至れり尽くせりである。
 その後、詠春さんが用意してくれたご馳走に舌鼓を打ち、杯を傾けながら他愛のない話をして過ごした。
 何気なく現在地を訊いたら笑いながら、「私の故郷で日本の京都という地です。あちらではもっぱら旧世界と呼ばれているようですが」と応えられ、大いに動揺したのはここだけの秘密である。
 時間の壁すら越えるのだ。場所の変更などワープ装置にはお手の物だったという事だろう。
 そして、歓待された次の日。
 俺は詠春さんを始めとした多くの人に見送られ、彼の所属する組織「関西呪術協会」をあとにした。
 着の身着のままでやってきてしまったので、手持ちは認識阻害魔法(電磁迷彩の類と推測している)とやらの掛かった布で包まれたデルフと密書、学園都市までの簡単な地図、諭吉さんの沢山入っている封筒だけである。
 詠春さんの用意した車の後部座席で揺られながら、俺は心許ない頭を必死に使って思考をまとめていた。
 まず、俺の行動指針について。
 折角日本に戻ってきたものの、ここは未来で俺は過去の人間だ。
 例え故郷に戻ってもそこにいるのは未来の自分だったり身内だったりするわけで、タイム・パラドックスを警戒する俺にはデメリットしかない。
 涙を呑んで帰郷を諦めるのは当然として、迂闊に本名を名乗るのも避けた方がいいだろう。
 奇しくも俺はいつの間にやら偽名になっていた「ダンケ」としかここでは名乗っていないので、俺がミスをしなければ身元バレする事はない筈だ。というか、そう信じたい。
 悩んでいる間にも車は進み、気付けば京都駅に到着していた。
 運転手さんに礼を言ってから車を降り、弁当と飲み物を買い、あらかじめ用意してもらっていた切符を使って電車に乗り込む。
 小声で「すげー」やら「おでれーた」を連呼しているデルフを天井の収納スペースに押し込み、買ったばかりの駅弁をぱくついた。
 平日という事もあり、座席にはそこそこ余裕があるようだ。
 長らく欧州にいたせいか、普通のこの光景に少し感動してしまう。
 ドラゴンの乗り心地も慣れてしまえばそこまで悪くないが、やはり電車には敵わない。科学の発達万歳である。
 バイオとAI装備の武器に秀でたドイツ、属性と天候操作の欧州(ドイツ以外?)、巨大兵器と医療技術に特化した米国。
 うーん。日本の未来が不安になってきた。いや、すでに俺は未来に来ちゃっているわけだけど。
 食べ終えた弁当の容器を片付け、お茶で喉を潤す。
 欧州では滅多に口にする事のできなかった懐かしい風味が俺を癒してくれた。
「……麻帆良か」
 耳にした事のない地名だ。
 昨晩の飲み会で得た情報によると、どうやら学園都市というだけあってやたらめったら広いらしい。
 そこで俺は密書を渡し、学園長から新たな仕事を貰わなければいけない、と。
 少しだけ残っていた茶を飲み干し、後ろを確認してからシートを倒す。
 寝心地は魔法学院の広場の方が上だなぁとか考えつつ、俺はゆっくりと意識を手放した。

(◕‿‿◕)<拍手して魔法少女になってよ!

別窓 | ネギ団子 | コメント:6 | トラックバック:1
<<明日勘。第九話。 | 後悔すべき毎日 | ネギ団子大盛り。一皿目。>>
この記事のコメント
No title
安心しろダンケ、これからお前が向かう先には
ドイツにも居ないメイドロボが居るぞ(笑)
日本の未来も安心だな。
2011-03-14 Mon 21:53 | URL | AS #-[ 内容変更]
感想~。
さぁて、麻帆良に着いたダンケに待ち受けているのはどんな事件なのやら……。 次回も非常に楽しみです。
後、誤字を見つけたので時間の有る時にでも修正を。
「まさかああも立派なに育つとは」は『まさかああも立派に育つとは』
2011-03-15 Tue 10:02 | URL | ベリウス #VSnRaRv6[ 内容変更]
No title
ダンケはそろそろ自分の思考の中での矛盾ぐらいには気付くべきだw
でも無理だろうなあ。
特に麻帆良では認識阻害のせいでさらに曲解していくんだろうしなあ。
2011-03-16 Wed 07:38 | URL | MIst #/9hBKkrU[ 内容変更]
No title
 すげえ、食い違いが激しすぎてて…。会話が成立してしまっているのが、どこかの神様とかが運命でも操って協力しているとしか思えない。

 しかしネギ子は会えてよかったなあ。
2011-03-17 Thu 21:28 | URL | 凡士 #-[ 内容変更]
No title
 ヲイっっww 造物主と間違えるかw!? いや、まぁ、知らないんならしょうがないんだけど……あの世界をドイツ勘違いして止まない彼の事だからそれもまぁ……アリか?
 お陰でどこに行っても相変わらずのダンケに胸をなでおろしている私がいたりw

 次はネギ子ちゃんと刹那との再会ww すっげーwktkが止まらないっっ
 御更新をお待ちしておりますっ


 
2011-03-18 Fri 08:18 | URL | クレイ #aYDccP8M[ 内容変更]
麻帆良とは
田舎者という設定のダンケにとってあの学園は、文字通り未来都市的な…w ていうか、新しい仕事って用務員かなにかですか? 文明から離れて久しい彼に武器の扱い以外の複雑な作業は不可能ですw 会話機能もバグってるしww

それはさておき、彼が仮契約というか多重契約というか一時契約的なものを行うと、あのブラックさんはRXとか世紀王になっちゃうくらいの武装とか特殊能力とか身につけちゃうんでしょうか?
個人的には「力の盾」的なのがいいですね。「神の盾」とか呼ばれてるくらいだし。
ていうか、事前に用意ができるなら、対ボス戦にデンドロビウム的な武装コンテナも…w
2011-03-27 Sun 04:47 | URL | なるかみ #-[ 内容変更]
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2011-04-10 Sun 16:54
| 後悔すべき毎日 |
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